第5話 あの人達は今?

◆クライアス国立セントオーディン学園ジーナス皇太子私室

ジーナス皇太子視点


「どうなっている!すでに二ヶ月ではないか。レブンの行方は未だに判らんのか!?」


私の名は、ジーナス▪フォン▪クライアス。

このクライアス皇国の皇太子だ。私は今、逃げ出した最愛、レブンの行方を追っている。すでに学園の二ヶ月の長期休暇が終わり、今日から後期授業が始まるのに、未だレブンが見つからない。


その為、今後のレブン捜索について話し合うべく、捜索を依頼した者達を集めていた。

ここ学園の私の私室には、ケスラー▪フォン▪ファストマン公爵令息、次期騎士団長で私の護衛役、ハーベル▪フォン▪ブライト侯爵令息がいる。二人とも私の、学園卒業後の側近候補だ。


「落ち着けジーナス。隣国ザナドウの国境方面に向かったのは判っているんだ。今、近隣の村や町の宿泊施設、あのレブンが立ち寄りそうなところを当たらせている」

「ケスラー、遅いと言っているんだ!」


「殿下、あまり焦られても良い事はありません。今は部下を信じて待ちましょう」

「ハーベル、やけに落ち着いているな?何か掴んでいるのではあるまいな!?」


「は?」

「ハーベル!貴様、抜け駆けは無しだぞ!」

「ケスラー、お前もだ!その落ち着きはなんだ!?」

くそ、コイツら、私の次期側近候補でありながら、主人を立てる事を知らないのか!?こと、レブンの事に関しては、コイツらは絶対信じられない!


「あらあらあら、何をそんな言い争っておいでですの?」

「「「?!」」」


公爵令嬢エレノア▪フォン▪マデリア。

先日マデリア公爵家が、皇太子派からの離脱をしない事を条件に、婚約破棄を双方同意の上で認めた女だ。いまさら何の用だ?

「エレノアか、何の用だ?」


「あら、随分と裏で動かれている癖に、わたくしが何も知らないと思ってらっしゃるのかしら?」

「?!」


「裏で?、おい、ジーナス!何の事だ!?」

「殿下!!」

「し、知らん!何の事だか、私にはサッパリ……」

ケスラーとハーベルが私に詰め寄ってくる。おい、私はお前達の未来のあるじの筈だぞ!?

くそ、それよりエレノアだ。あの件は極秘で動いていた筈だ。何故知っている!?


「クロホード伯爵家に、レブンとの婚約の書面を送ったそうですね?既成事実を作るおつもりとは、抜け目のないこと」

エレノアは扇で口元を隠しながら、婚約の書面の事をこの二人の前で言い放った。くそ、コイツらにバレたじゃないか!!


「くっ!」

「ジーナス、貴様?!」

「殿下!あんまりです!」

ぐっ、ケスラーに胸ぐらを掴まれ、ハーベルがさらに詰め寄る。エレノアめ!


「それではわたくしは、これで失礼致しますわ」

「ま、待て、エレノア!貴様、レブンの行き先を知っているのか?」


エレノアは、ドアから出て行こうとしていたが、私の問いに立ち止まって、此方を振り向いた。

「さあ、どうでしょう。私も捜しておりますが、まだ見つけられておりませんの。それでは殿下、失礼しますわ」


エレノアはそう言うと、ドアを開けて出て行った。

振り向いたエレノアは、口の端が上がっていた。エレノアは何か、知っている?!



「俺も直ぐに婚約の書面を出すぞ!」

「殿下、私も急ぎますので、これで失礼します!」


「待て、お前ら!」

エレノアめ、コイツらが暴走したじゃないか!

くそ、レブンは私の物だ!誰にも渡してなるものか!あの流れるような美しい銀髪、どこまでも白く透き通るシミ一つない肌、青い海のような碧眼、完璧な女神のような容姿。そして、そして、あり得ないくらいの豊満な胸。その全ては私、このジーナスの為にあるのだ。

レブン、待っているがいい。必ず、必ず捜し出す。そして、私の未来の皇太子妃となり、次代の皇子を授かるのだ。



◆◆◆



◆隣国ザナドウ国境近くの魔森

とある猟師小屋

レブン視点


「う、くしゅん?!」


「お姉さん、風邪?」

「あれ?おかしいなぁ、風邪、かな?」

ゴシゴシッ鼻を拭いたけど、鼻は出て無いし、くしゃみなんて久しぶりなんだけど、やっぱり風邪か?


「駄目だよ、女の子は夜更かしなんかしちゃ、お肌に悪いし、風邪も気をつけないと」

「はい、判りましっ………マイリちゃん?」


「はーい、マイリでーす。直ぐに帰りまーす」

パタパタパタ………



「……はぁ、マイリちゃんには困ったなぁ」

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