14話 情報
「おう、その左側のキノコは食えるぞい。ただし気を付けろい姉ちゃん右側にある赤と白のぶち模様のキノコは無毒だが
(ビリー殿、それは有毒なのでは?)
「……ははは、そうなの。じゃあ捨ててくるわね」
(これは……危険ね)
私はその毒キノコをそっと掴み、窓から庭裏に向けて力いっぱい放り投げた。
……まぁ結局この毒キノコは後にとある事件を起こしたりしたのだが、それは忘れた方がいい記憶だ。
とまぁ、こんな感じで私達はでビリーの仕事の手伝いを通じ、水の確保に必要な川の位置や森で見かける食べられる食料の見分け方などを学びながら三日の時を過ごした。
途中何度か鎧で武装したオークの集団がビリーの家を訪れているのを目撃したがそのオーク達が私達の使わせてもらっていた離れまでやってくる事は無かった。
恐らくオーク達はビリーが一人で暮らしているのを把握しているのだろう。
それにしても奴らはビリーの育てた作物や家の中の物品を納税と称して収奪していく噂通りの荒くれ達だった。
しかしここで手を出してしまったら却って事態を悪化させてしまう。
突発的な正義感に駆られ、勇気と無謀を履き違えるのは己だけでなく周りすらも滅ぼすものだ。
「……さて、そろそろね」
予定では今日、隠密のエルフであるアヤメが枯れ森を支配する灰の王国の情報を持ち帰り、再度ビリーの家を訪れる筈だ。
私達はアヤメと別れた三日前と同じぐらいの時刻にビリーの家へと集合した。
………………
……ビリーの家の中で静かにアヤメを待つ事約三時間が経過した。
アヤメが帰ってくる気配は今の所ない。
「アヤメさん、いつ頃帰ってくるッスかね……もう夕暮れッスよ」
先程から辺りを忙しなくチョロチョロ動き回っていたアリサが不満げに呟く。
(アリサは待つのが大嫌いなのよね……自分は平気で大遅刻をかますんだけども)
「さぁどうかしら?時間の指定はされてないし気長に待ちましょう」
こちらがそわそわした所でアヤメが早く帰ってくる訳でもない。
私はもう少し大人しく待つようにアリサに促した。
アリサが「へーい」というやる気のない返事と共にしぶしぶ着席したその時、家の外からコンコンとドアを叩く音が聞こえてきた。
「……ちょいと隠れておれ、兵士が訪ねてきたかもしれん」
ビリーの言葉で皆に緊張が走る。
各々が物陰に隠れ、武器を構えていつでも敵を迎え撃てる態勢を取る。
それを確認したビリーが来客に警戒しながらゆっくりとドアを開くと……そこにはアヤメが立っていた。
「……すまない。遅くなった」
「なんだお前さんかい」
「ご苦労様……しかしまぁ敵地に乗り込んで怪我一つないとは流石はアヤメね」
部屋の奥から声をかけたフーリの指摘通り、アヤメが三日前から変わっている所は何一つ見受けられない。
それは裏を返せば戦闘に巻き込まれていないという事だ。
つまり彼女はそれだけ高い潜入能力を持っているという事になる、これは情報に期待が持てる。
「そんな事はどうでもいいわ……三日も待たせたのよ。それなりの事を話しなさいな」
終始椅子にもたれ掛かっていたナナはじとっとした目でアヤメを睨みながら不機嫌そうに口を開く。
どうやら彼女も待つのは嫌いらしい。
「ああ、勿論それなりの情報だ。それでは皆席についてくれ……すぐに話そう」
アヤメは周囲の空気を察して手短にそう告げた。
私達はそれぞれ近場にあった椅子に座る。
一同が席に着いたのを確認したアヤメは15年前に精霊の森を支配した謎の国。
灰の王国について自身が集めた情報を語り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます