第2話  知歩の好きな人

「私の好きな人は1組の、菜歩のクラスの翔君

 です。」

残念なことに知歩は4組、一番遠いクラスだ。

「あー、翔君と言ったらスポーツが出来て、

サッカー部のエースで、

顔がいいって言われてて、

誰にでも優しくて、まわりにいつも

誰かしらいるような人気者……って

ハードル高くない?」

でも、私の隣の席に座っている。

少しでも時間があると

周りに男女問わず人が集まってくる。

「好きになったからしょうがないです。」

「そういうものなのかー。じゃあ、エピ教えて〜」

次にエピ、エピソードが知りたくなった。

「体育の時自分の授業に遅れるのも構わずペンを

 届けてくれたです。けど、予備のペンをすでに

 使っていて問題はなかったです。

 そのことにに気づいた翔君が

『僕の努力は⁉︎』、と

 叫んだです。それから、

『でも、届けられてよかった。』と

 笑顔を向けてきたです。

 その時なんです。恋に落ちたです。

 この悔し顔からの、

 “笑顔”がそれはもう輝いてたです。

 もうそれから他の女子に埋もれてでも

 会いたくなってしまったです。」

私の下からバタバタと足をばたつかせる音がする。照れてるんだ!そして、その姿は絶対にカワイイ、

想像すると顔が緩んでしまう。

「恋のその気持ちを言葉で表すと?」

この質問は、恋が分からない私にとって難問だ。

だから、恋の経験者と聞くとその人にこの質問を

いつもしていた。

「見るだけで幸せな気持ちになれるです。

が、会えない日があるとすごく落ち込むです。話せたら舞い上がります。

しかし、離れるともっと一緒に居たいと欲張りになるです。

そして、なにがあっても手に入れたいと思うです。」

すごい、今まで帰ってきた答えの中で

一番具体的で長い。

ん? 最後のヤバくない?私協力するって

誓っちゃったし、何かしなくちゃいけなくなる!?

知歩って頭がいいから策士なところあるし。

小さい頃、かけっこ勝負を2人でした。

私の方が速いと分かっていたから

近道を知歩がして私が負けたことがあった。

そのことを指摘したら、

「コース決まってなかったもんっです。」

って言いくるめられた記憶がある……。


まぁカワイイ妹だしいっか。

他のエピも聞いてるうちにいつのまにか眠りに

落ちていた。

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