ジーニの旅。

「そろそろ、この街ともおさらばやな」


 ジーニは大型ショッピングモールを見上げる。


「しっかし、ショッピングモールって、ええよなぁ。幸せな人、不幸な人、いろんな人をいっぱい見られるもんなぁ。ありがとうな、ショッピングモール」


 ショッピングモールに背を向けて、彼女は歩き出す。


「いやぁ、今回もたくさんの人を幸せにすることができた、ホンマによかった」


 ジーニは両腕の金色のバングルを見る。

 バングルの中に一つ、黒い石があった。

 その石が、まわりの石をまきこんで黒くなりつつあった。


「あー……、しまった。せや、一つよくないこと、したんやった」


 『かわいさを吸い取る本』。あの持ち主は、一体どうなったのか。

 ジーニは見ようと思えば見れる。けれど、その気は今のところないようだ。


「多分、この黒い感じを見るに、いい人生にはなってへんな」


 大きなため息をつく。


「一個悪いことすると、いいこと五つ分くらい持っていかれるからなぁ、ホンマ、かなわんわ」


 ジーニは、バングルを指ではじいた。


「ウチら魔人は、いいことをし続けて、ゆくゆくは人間にのが目的。ああ、早く人間になりたいなぁ……」


 そう呟きつつ、ジーニの姿は夜の闇へと消えていった。

 彼女の次の行方は、彼女以外誰も知らない。


《完》


 

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ジーニのマジック★ブック! 工藤 流優空 @ruku_sousaku

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