クラスメイト 🏫

上月くるを

クラスメイト 🏫





 絵が描けたらいいな。(*ノωノ)

 文では表わせない絵。(*'ω'*)


 いわゆる心象風景ってえやつ? そんな大げさなものでなくていい。

 いまの気持ちを画用紙にぶちまける、いや、ぶちまけさせてもらう。


 水色の水彩ペンに背中を撫でてもらう、緑色にはふわふわの毛布になってもらう。

 かたちなんて、なくていいんだ、さっと色を塗って、終わりのほうは少し滲んで。



 

      🎨




 二学期が始まったら、みんなからいっそう遠ざけられた、または遠ざかった感じ。

 学校だけがきみの居場所じゃないって、テレビでよく言っているよな、大人たち。


 だけど、じゃあ、おれが居ていい場所ってどこだよ、市立中学校二年三組以外の。

 ここにすらポジションを見つけられなかったら、どこでもさがせないよ、きっと。


 だから、このヒリヒリした気持ちを画用紙に吸い取ってもらいたいんだ。

 あの少し凸凹のある、いかにも絵の具の居心地のよさそうな画用紙にさ。




      👯‍♂️




 窓ぎわの席のあいつみたいに、筆が指の延長みたいに、絵が描けたらいいのにな。

 美術の先生は褒めないけど、おれはあいつの描く無骨な人や動物や風景が好きだ。


 ヘタウマなどという陳腐なことばでは片づけられない、ふしぎな力を持っている。

 ずっと見ていたい絵を描くあいつは、友だちがいなくても孤独じゃない、きっと。


 校庭を見るフリをして窓のほうを見たら、うつむいていた、あいつが顔を上げた。

 切れ長の目がピカッと光り、ふっとゆるんだ、ぼくの目もゆるんだにちがいない。



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