一日一首(令和五年一月)

令和五年かきぞめせむと庭に出てストレッチのあと雪ベラをふるふ


吹雪く津軽で箱根駅伝中継を見つつ晴れ間待つ雪掻きせむと


正月の纏振り来れば欲張りて火の用心にコロナ禍収束


雪道を妻とふたりの初詣。滑つて転ばぬやうに手をしかと取り


冬陽さす窓辺にならぶ鉢植えのカランコエは早や花芽をのばす


寒なれど出窓で陽浴ぶるバジルを摘みトマトと食めば鼻腔には春


七草の今日も汁には具沢山、十種をかぞへ煮干しまで食ふ


新聞の下段にならぶ訃報欄。ふたりの媼は百五歳なり


成人の日の女性らコロナ禍のマスクの色は振袖に合はせて


寒なれど雪掻きし道に陽のさせば黒きアスファルトに束の間の春


庭先の雪の山ほれば蹲(つくばい)に凍てし山茱萸と南天の小枝


冠雪除(よ)け鶫(つぐみ)ついばむは雪に映ゆる紫式部の実なりこぼして


コロナ感染死亡者数は増えつづけ日に五百こゆ。第八波こはし


訃報欄見つつそれぞれの人生思ふ。なかに百六歳の媼もおられて


『みちのく春秋』のオーナー且つ発行者急死にうろたふ続刊渇望す


何ごとぞ嶽温泉の湯温が低下、まさか岩木山に異変は起こるまい


静岡の義姉の採りたるプチマルとふ種なし金柑をがぶりがぶりと


凍てし屋根に朝陽さしきて垂(しづ)るれば「三寒四温」の宜なるべしと


大寒の津軽に雨とふ不順には地球規模での温暖化あり


日々一首と四年の錘の歌集なる『時をただよふ』縦書きブログで


寒中なれど二階の書斎の暖房止め陽を背に浴びて読書してをり


おもしろし『整形内科』とふ手当て。いつか役立てむとひそかに学ぶ


音もなく降り積もる雪に除雪車の回転灯の力強さよ


ゴミ出しに雪道歩めば「キュッキュッ」とさながら〈鳴き雪〉大寒の朝に


予報では最高気温が零下五度!温き居間にて妻と巣ごもり


朝刊の掲載投稿を切り取りて仏壇にそなへ健筆ちかふ


礼文島生まれの漁師九十二歳(くじふにさい)、語る津軽弁にルーツを晒す


新旧の健康保険証を入れ替へて明日から後期高齢者とぞ


この度の誕生日は後期高齢者への入口にしてある意味好機ぞ


誕生日祝ひに出でし赤飯が晦日正月のけふもあらはる


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