一日一首(令和四年九月)

妻と対(む)きベランダにて飲む珈琲よろし昔語りに虫の音(ね)添ひて


〈ユンボ〉とふ重機の動きおもしろく解体現場を離れ得ざりき


『カクヨム』の我が拙文をも読みたまふ広き心の友ありがたし


処暑の候に予期せぬ西瓜の五個生れり。縞みごとなれど径は五センチ


処暑といふ候名に反し気温三十度超、熱風が部屋へ吹き込みてくる


台風十一号のラオス語名に漢字あて賓南無納(ヒンナムノー)と忘れぬように


目に余る「問題行動!」と切り捨てし専門家気取りの言動をうれふ


長寿化し「めでたい」と言ふしかすがに「ボケたくはない、老いたくもない」


英国のエリザベス二世は在位70年、九十六歳にて身罷り給ふ


「国葬」を文字解きすれば国税を使う葬儀か弔意はなしに


眼鏡さがしパソコンで書きお互ひに読み褒めあふが老いの楽しみ


この先はボケの心配するよりも楽しさ創りて日々すごしたし


「ハピィバースデイ」のメールに添へむと秋桜の構図に悩みスマホを回す


周辺が更地になりて書斎から八甲田山のロープウェイさへ見ゆ


このたびの東京五輪騒動に角川源義の無念や如何に


八甲田の山並よりのぼる日輪が書斎より見え思はず手あはす


秋分を間近にひかへて三十度C! 夏の残欠をじつと耐へをり


献血の検診医不足の記事を見て役に立てぬかと問ひ合はせをり


敬老の日、スマホに向かひ短歌よめば勝手に難字で表示したまふ


「祝・慶老」と町会の配りし茶の小袋を仏壇へ供ふ何とはなしに


秋分にあはせしごとく気温さがり大学ポテトの温さありがたし


秋田からいちじくの甘露煮が届けられ妻は幼時の思ひ出を語る


なつかしき釜石の味とどきけり〈三陸おのや〉の冷凍パックで


秋雨に黄ばみしゴーヤーぱつくりと赤き種見す歯をむくやうに


防衛費五年で四十兆円とふ見出しにうれふ『一触即発』


大相撲の賜杯をいだくはモンゴルの三十七歳玉鷲あつぱれ


雨あがり草取りせむとして茗荷みつけ十四五本ぬきて妻に自慢す


国会も司法も民も何かはせむと内閣一強『国葬』遂行す


五十年で『一衣帯水』ひろがりてパンダの寄贈は貸与になりぬ


物価高に食事メニューが変更さる九月尽にして介護施設は

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