一日一首(令和三年十二月)

気がかりな事がつぎつぎ際限なし短歌を詠みて気分転換す


木曜はフレイル予防に肉を食ひマシン漕ぎつつ『養生訓』繰る


玄関は妻がシンビジウムの鉢など置き師走初旬からクリスマス・モード


朝の陽の七色アーチが突き刺さる山の端さして津軽路を行く


雪かきもアスレティックと頑張りて一汗かけば風呂ここちよし


月曜の朝は雪曇にて重苦し車中でせめて楽しき作歌を


大雪(たいせつ)の日に雲を裂き陽のさして冠雪(かむりゆき)とけ垂雪(しずりゆき)ひびく


夜明け前に朝食すませて出勤し日暮れて戻る冬至の近く


朝刊に後輩医師の訃報載る。心沈みて朝陽のまぶし


好天に雪の岩木山は青く照るも週末の朝陽にじんわり溶けて


息子より岡山転勤の電話うけ「遠くなるね」と妻はポツリと


今夜から降雪との予報に満を持し玄関前のロードヒーティング


地吹雪に尾灯を追へるタクシーも内は温くて吾は舟こぐ


突然のオイルヒーターの不具合にエアコンでしのぐ大雪(たいせつ)の候


しとどに降る師走の雨に二日(ふつか)前の地吹雪のあとの田は水びたし


山口仲美著『日本語の歴史』を音読し言文一致の妙を味はふ


小雨ふる師走の暗き朝なれど土日を前に今日は頑張る


朝陽あび庭木の雪の輝けりこれぞ津軽の冬の詩情なり


真冬日のベランダの雪を眺めつつ珈琲すすりて週明けに備ふ


一面の銀世界を行くタクシーのまひあぐる雪煙に朝陽のかすむ


公表の〈健康寿命〉はさておきて吾は唱へむ「一病息災!」


冬至の朝、吹雪きて道はホワイトアウト。古人に倣へば今日が年明け


もさもさと積もりゆく雪ながめつつ「春よ来い」などのメロディうかぶ


〈えんじゅの里〉の食堂にハンドベル鳴るに老いたちはひたすら和菓子を食すに夢中


寒波つれサンタクロースの来たるらし。冠雪の松の滑稽なるさま


冬至すぎ朝陽の輝き増したるらし。思ひは既に雪消(ゆきげ)の庭へ


車庫前まで雪が山なし積まれゐて除雪車の有難さも迷惑に変はる


大雪警報!ガタガタ道の通勤に難行苦行の往復二時間


寒波去り陽のさす老健えんじゅの里、今日が御用納めか、岩木山あふぐ


娘から煮しめの味付け法を尋ねられ受話器を握る妻はたちまち母に


神棚の煤払ひをし御幣替へ短歌(うた)を詠むなり大晦日の朝


晴れたれば凍て庭に出て枝や葉の冠雪はらふ大晦日の昼

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