一日一首(令和元年十二月)

怖いもの見たさで思ふ近未来 百寿の吾とシンギュラリティ


人生は歳の二乗で過ぐとふがテクノロジーはエクスポネンシャルでと


師走となり年越しできるを願ひつつ大正生まれの脈をとるなり


認知症予防にも効くゆゑ歯磨きすマウス実験の結果を信じて


歯周病は万病の元」と唱へたし アルツハイマー型認知症予防にも


初雪にタイヤとられて大渋滞 あきらめ顔の連なりてをり


ストーブの炎こひしき雪の夜は温き床(とこ)にて歌よむもよし


陽をあびて妻は自転車で朝市へ鼻かぜの吾はやむなく自重す


月曜の日の出を待ちて旅立ちし老女の笑みに阿弥陀が宿る


冬晴れの夕日に引かれ旅立ちし老女はクール、看取りし息子も


入所者の穏やかな死を見しよりは生くると死ぬとの境界うすらぐ


平成と令和が混じる年報のこの一年は長く感じる


マイカー通勤あと七日でやめタクシーに。無事乗りきれさうなり幸ひと言はむ


末娘の婚姻届けに保証人の署名捺印し幸せを祈る


リビングの陽だまりで語る母と娘(こ)に割り込めずただうちながめをり


かいなでの歌詠みなればいとうれし添削不要と判じらるる時


年賀状の受付開始のニュース聞き妻はせかされ吾はお手伝ひ


年内はキャンセル待ちとの電話うけ抜歯がのびてホッとはしたが


此の年の集計しつつ思ひ出づ逝きし人らの安らかな顔を


雪ふりて交通渋滞の朝なれば老婆の命をしばし延ばしぬ


抜歯のこと予定早まり明後日(あさつて)となりしはありがたしされど怖しも


冬至の朝盛岡の道はアイスバーン 転倒おそれて妻と手つなぐ


八十歳で歯二十本は少なからう。われは二十五本にて死ぬまで噛まむ


歯を抜かれイブもうどんでがまん我慢。否否、ありがたく飲み込むとしよう


爺医として社会に尽くしし証なる給料なればありがたく受く


ハンドルを握りて半世紀、無事故に過ぐ。感謝をしつつ愛車と決別


もさもさと降り続く雪の朝なれば迎へ車のありがたきかな


雪道も新しき靴にて心地よし つひ遠回り汗ばみながら


三日前に車の運転やめたれば新しき靴にて今日は本屋へ


スキー場を温き書斎より眺むればかつて描きしシュプールさへ視ゆ


かいなでの歌超えむ意思あればありがたし一日一首にコメントいただき

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