一日一首(令和元年八月)

駄々こねし冷房嫌ひの婆たふる「ほらごらんなさい」は言はず点滴をなす


真夏日の日本列島きなくさし周辺諸国の熱波をあびて


夏の宵 〈ビギン…〉ながるるベランダに「時よとまれ」と祈る二つ影


厚き〈史記〉枕にこそははべらめとふ才媛が機知いみじうをかし


大気さへ歪めてしまふ夏の陽に地球は蕩(とろ)くる吾は汗滂沱(ぼうだ)たり


〈人望〉は人間評価の尺度なり〈人気〉に非ずと七平は看破す


おほらかに…と思へど難き令和にて徒然草を読みかへす宵


この夏を乗り切らせむと慈愛こめ点滴つづけるナースぞ尊き


例により♪Happy Birthday~と斉唱し「水分補給!」と念押す猛暑ぞ


〈人望〉は人の評価の規矩なれど〈人気〉で選ぶが人の世の常


〈老健〉に土日祝日などはなし御盆どきこそ油断すまいぞ


涼風よ老いらが食欲もどらしめよ されば爺医が憂ひも消えむ


日に三たび「春まだ浅く」とメロディが。盛岡の〈時〉はかくもゆったり


「やぶいり」の「やぶ」さへ気にする爺医なり 医学書めくりお盆を遣らはむ


戦争を知らざる〈団塊世代〉の人ら 不戦の誓ひをしつかと継がむ


ひさびさに老いらが笑顔もどりけり帰宅を早め御盆を遣らはむ


「定跡を学べ」と茂吉が言ふなれば〈万葉秀歌〉を読み返すなり


三つ四つも同時に流るる連呼なり 熱き地方選の街に涼風


〈慶〉が減り〈弔〉の増えたる慶弔欄 人も「絶滅危惧種」にならむか憂ふ


取上げも看取りもやりし爺医なれば「命の関守石」とも言ふべし


酒をやめSNSも消しさりて真夏なれども夜長を満喫す


酒をやめ〈SNS〉も消しさりて夜長をあじはふ。真夏なれども


朝市でブルーベルリーを求めきて台所に立つ妻は笑顔で


老いてなほ「承認欲求」さめやらず、一日一首がはや7ヶ月


古希すぎて『自助論』を読む奥手(おくて)にてわが青春は漂ふごとし


あつぱれなり 婆は酷暑をのりきりて涼風に乗り旅立ちにけり


今朝は雨 設定を「冷房」から「除湿」にす 続きし酷暑を今やさびしむ


カーエアコン二十六度の設定で温風に替はる八月の朝


妻つれて飯坂温泉へ〈いい電〉にて仕事がてらに命の洗濯を


「ちゃんこちゃんこ」は石段のことリハビリによろしと飯坂温泉めぐる

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