一日一首(令和元年五月)

  

令和なる新しき世のためしとてテレビのごとく五行に詠まむ


見わたせば夜半の嵐に花散りて俯瞰する景に桜見分けられず


エイジング・パラドックスぞありがたき老いて幸福感ずる仕組み


〈チュージング・ワイズリー〉にて駆逐せむ 医者みずからがムダな医療を


こどもの日に児童公園で酒盛りとは!老害と言はれても仕方あるまい


自転車にて父の供養に来しお寺に御衣黄桜が七分咲きなりき


Eスポのいたずらならむ春の宵ハングル聞こゆ机上のハンディ機より


令和五年五月六日は金婚式そして現役医師たるを夫婦で祝はむ


〈趣味の王〉と呼ばれしアマチュア無線なり ベランダに今も小さきアンテナ


新居での暮らしもひと月と気づきたり 今朝マンションの駐車場にも慣れて


車庫入れが大儀とならば返納せむ免許証われにはマジカルパワー


〈RESPONSIBILTY〉なる50ドル札〈I〉が不足の〈責任〉や何処


早朝の運動公園はにぎやかなり声も歩調もかつての若人にて


旧聖火台が盛岡へ運ばれ来るといふ それに向かひて走りたらばいかに


'64東京五輪は記憶あれど十六歳の吾の像おぼろ


〈東洋の魔女〉の回転レシ-ブも懐かしきかな '64東京五輪


くるくると回転する〈東洋の魔女〉たちのパンツに目が行く日の丸ならずとも


「スライドを使う」と言へばプレゼンの会場に鎮座すPCプロジェクター


「スライド」は旧名への郷愁 デジタルの今もそのままの名にてプレゼンす


「い・う・つ・ん」とふ音便まなびて思へるはリエゾン頻発のパリジャンが声


カルモナに〈滝沢中央〉IC開通し東北道にて弘前も近し


目覚めたる大樹の若葉しげるなり紅色のツツジややに慎まし


春すぎて夏きたるらし盛岡にながるる調べや「春まだ浅く」


意外なほど聖火台小さく寂しくも 〈昭和東京五輪〉のイメージ潰ゆ


老いてなほ物欲あるは卑しかり付与されし範囲に余生を送らむ


新幹線〈はやて〉東京の夏を運びきて一瞬にして岩手も「夏日」


あさぼらけ急患ありて走るなり郭公の声聞こゆるなべに


「さっこら」とふ娘(こ)らの掛け声にほひ立つ「幸よ来い」との願ひなりけり


今年もまた〈チャグチャグ馬っこ〉が慰問に来て老いら喜ぶ中に百寿も


九十二歳(くじふに)の恩師が訃音に四十余年前のご講話が一気に還る


恩師作レモン汁たっぷりのハイボール 弟子らはレモンジュースと揶揄したるかな

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