第21話 先生も個性がお強いみたいですね


「みんな盛り上がってるかーい?」


 教壇に立つ身長150センチほどの小学生にしか見えない顔と背をしたポニーテールの先生は叫ぶ。そして…それに答えるように。


「いぇーーーーい!!!」


 と叫ぶクラスメイト。何故か澪までノリノリだ。どうしてこうなった? 話は数十分ほど前に遡る。


 地獄の月曜日になり登校をした俺たちがいつものように教室で担任の一部でロリ教諭と有名な美幼女の灰塚 薫先生を待っていると扉が荒々しく開けられた。


 ドンッという音に何人かの生徒は身をすくませる。俺は変だなと思った。薫先生はとても大人しく少し怯えているような先生である。

(そういうところが可愛らしく好きというロリ評論家(変態)の意見もあるが)


 そんな先生がこんなにも荒々しく扉を開けるだろうか? しかし、次の瞬間入ってきたのはいつも通りの薫先生であった。あ、相変わらずちっちゃいなぁ。


 偶々か? しかし、何かいつもと雰囲気が違うような? そんな疑問は、次の瞬間には吹き飛んでいた。文字通り吹き飛んでいた。


「てめぇらぁぁあ、今日から体育祭の練習が始まっぞ!! 気合い入れてくぞウジ虫ども」

『……』


 教室中が静かになる。いつも騒いでいるような奴らまで開いた口が閉まらないようでポカーンとしている。勿論、俺も例外なく驚いている。えっ、誰? この人? 最早、偽物なんじゃない?


「あ、あの先生?」


 澪も泡を食らったような顔をしているが何とか立ち直ったようでみんなを代表して尋ねる。うん。正直、どうしたんだ?


「おぉ、澪じゃないか。我がクラスの最大の期待を背負いし女ぁぁ」

「えぇっと先生?」


 あの澪がペースをつかめていないだと? 本当にどうしたんだよ。しかし、そんな俺たちの戸惑いなどどこか吹く風の薫先生は続ける。


「分かってると思うがてめぇらぁぁあ。ウチの体育祭は他の学校のようなのほほんとした馴れ合いの元で行われるようなものとは訳が違う!」

「いや、先生。それ他の高校を馬鹿しすぎです。みんな普通に真剣にやってると思いますよ? 流石にのほほんとした体育祭を行なっている高校なんて…」


 澪が常識的な対応をするが先生は止まらない。いや、止まってくれよ。


「では、澪。時に聞くが…他の高校では先生に裏で賄賂を渡し結果を左右させたり、負けたらクラスメイトに半殺しになるまで殴られるなどということがあるか?」

「いえ、ないと思います。ってか、あったらそれは世紀末かと」


 そんなことする学校はモヒカンだらけの学校かな?


「それが甘いんだよ!!」

「えっ!?」


 突如として薫先生が怒鳴る。…本当に今日はどうしたんだよ。


「死人どころか怪我人すらださず全力だぁ?

 そんなわけねぇだろ! 全力でやってりゃ重症の生徒が1人や2人でるのが普通なんだよ」

「いや、でたら困ると思います。怪我をしない範囲で全力でやるのか普通かと」

「だがウチはそんな甘ちゃんみたいな高校ではない」

「だとしたら、ウチが異常なだけなんですが!?」

「あらゆる手段を用いて勝利を掴みとる。それが我が校の体育祭だ!」

「みんな、今から転校の準備をした方がいいよ?」


 確かに転校案件だった。ウチの学校そんなに終わってたのか。しかし、薫先生暴走トラックは止まらない。もう、とっくに事故起こしてるんで止まってください。


「てめぇらぁぁあはそれでいいのか?」

「?」

「普通にのほほんとした中で気を遣いあいながらやった体育祭が青春って言えるのか?」

「「「「「「「「はっ!?」」」」」」」」


 えっ!? なんかクラスメイトの奴らが雰囲気に呑まれ始めちゃってるんだけど大丈夫?


「てめぇらの人生を歩むなかでの短いこの3年間の体育祭をそんなことに使っていいのか?」

「「「「「「「確かに」」」」」」」


 ヤバくない? なんか呑まれはじめてるんだけど?


「賄賂して…リアルに血反吐吐くまで練習して…負けたら殺されるくらい全力で挑む!

 それが…青春だろうが!!!!!」


 いや、先生。それは青春ではなく最早戦争です。とツッコミたかったがクラスの様子が変なのでつっこめない。誰かつっこんでくれよ。そして、教室中が異様な熱気を帯びてくる。


 更にだめ押しとでも言わんばかりに薫先生は続ける。


「全部出せ。てめぇらの中にある熱いもん。みんな持ってんだろ? それを恥ずかしがって隠すなよ。全部だせ。人生で1番熱を帯びている時間…それが青春なんだよ!! 恥ずかしがってねぇで全部出せ! それこそが、てめぇらの青春だろうが!!!」

「「「「「「「「薫先生」」」」」」」」


 いや、先生。今までの話を聞いてるとドス黒いものしか出てこなくて青春どころかカ◯ジくらい真っ黒な学校になりそうなんですが?


 しかし、そんな俺の気持ちとは裏腹にクラスメイトの熱気は上がっていく。恐らく、薫先生の熱いオーラにやられてしまったのだろう。正常な判断ができていない。


「やるぞ! ウジ虫どもぉぉぉぉ」

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぁ」」」」」

「もっと腹から声出せえ!!!!」

「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉおおおお」」」」」」」」

「最高だぜ、てめぇらぁぁあ」


 すみません。俺の学校いつから軍隊にでもなったの? 前の兵隊のコスプレとかやってたらガチ軍隊だよ?


 とりあえず、俺のいた元の学校を返してくれないかな? 異様な熱気を帯びる今日の中、俺は絶望感から目を背けるのだった。


 誰かたすてけ。




 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 書いてたらヤバすぎる学校に(笑)


 まあ、流石にこのテンションは落ち着きますが…それなりに熱く盛り上がる体育祭なので楽しんでもらえたらと思います。この学校…ヤベェww


 最後にもし少しでも面白いと思ってくださったら星をお願いします。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る