第17話

「とりあえず、凍結の『漫画』を百枚。ノルマは熟したな」


 数日後に、ジャンヌさんを探して、『漫画』を渡した。いや、スクロールもどきだな。


「魔法のスクロールを、こんな短時間で作り出すなんてね……」


「ドラゴン討伐、頑張ってくださいね」


「ああ……。倒せないかもしれないけど、仕掛けてはみるよ」


 まだ、不安要素はあるんだな。


 それと、ギルド長から、ゴブリンの話を聞いた。

 十日間で、討伐は一匹なんだそうだ。遠くまで逃げたと判断されたらしい。

 殲滅は、無理と判断されて、近隣の街との共同戦線を敷くことになったらしい。

 ゴブリンの繁殖力は、それほど脅威なんだな。


 それと、鷲は放してあげた。鳥の目線でもゴブリンが見つからなかったからだ。

 頑張ってくれたので、肉を多めに食べさせてからテイムを解除するために、『漫画』の描かれた紙を剥がした。

 鷲が飛んで行く。





 喫茶店シーナに戻って、竈に火を付ける。

 それはいいんだけど。


「どうしたんですか? この食材……」


「昨日のユージの一言が余計だったね。冒険者だけでなく、町民も食材を持って来たよ」


「無駄になりませんか?」


「調理した物を全て料理にするのが、ユージの特技だろう? 今日は、200人分と考えてくれ」


 また数が増えたよ……。体力持つかな。

 それ以前に、メニューを早々に決めないとな。


 山の様な食材を前に、考えを纏める。


「煮込み料理で行こう……。水炊き……、は手抜きし過ぎだな。う~ん。トマトとかコンソメが欲しいな……。まあ、人気あるし、また出汁は椎茸でいいか……」


 調味料の充実も考えたいな。

 昆布とか、かつお節が欲しくなって来た。たしか、焼いた魚でもいいんだよな……。





「シーナさん! オーダーストップで!!」


「あ~もう!」


 今日も今日とて、客が多い。

 簡易椅子まで持って来て、私の漫画を読んでいる客までいる。

 そいつは、アルコールを瓶飲みしてるし。

 まあ、持ち込みではなく、店から買ってるのだから文句も言えないんだけど。

 でも、店の外の道を半分占拠しているのは、問題だよな。

 近々、衛兵とか来そうだ。


「ふ~。後は会計だけだね」


 シーナさんが来た。会計は、アルバイトに任せている。


「シーナさんは、休んでてください。私は、洗い物して掃除します」


「……すまないね。少し座らせて貰うよ」


 あれだけ走り回ってたんだ。文句などある筈もない。


『私より、重労働だよな……。食器だけでも増やしたいところだ』


 それと、アルバイトを増やすことも考えたいな。

 正直、給仕が追い付ていない。


 私は、考えながら洗い物に手を付けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る