第15話

 ゴブリンの襲撃から数日が経過した。

 その後、街に被害もない。

 私は、特別戦功とかで、金一封を貰った。

 要らないんだけどな。


 それと、本業を再開したい。

 鷲に、肉の餌を与えた。こいつを手放すのは惜しい。大きめの鳥籠というか、納屋を改造して、飼っている。でも……、街周辺の地図を描けたら開放してやろうとも思っている。

 そして、何時もの朝のルーチンを開始する。

 でも、シーナさんは、掃除をしていた。


「買い出しには、行かないのですか?」


「まだ市場に食料は少ないんだよ? まあ、明日行ってみるよ」


 そんなもんなのかな?


「今日も休みでいいですか?」


「それしかないだろう?」


 まあ、資金はある筈だ。数日の休業は問題にならないと思う。

 だけど、冒険者はなにを食べるんだ?


 思案の結果、私は冒険者ギルドに行く事にした。





 ギルドは、ゴブリン退治の依頼がなくなっていた。

 私を信用し過ぎだと思うんだけど、ここはあえて言わない。

 ギルド長に、鳥をテイムした探索方法の詳細を記載した漫画を渡した。


「迎撃後の対応になります。良かったら使ってください」


 ギルド長は、喜んでくれた。


「それで、ジャンヌさんを今日は見かけていないのですが……」


「ジャンヌか……。本来の仕事に戻ったよ?」


「本来?」


「ドラゴン退治さ。それで、A級冒険者を目指すんだそうだ」


 ……ドラゴン? あのドラゴン? 幻想の生物?





 ジャンヌさんは、ウォータードラゴン退治を目指しているんだそうだ。

 かなり危険な魔物だけど、十分な調査と準備をしているらしい。

 それを再開したのだとか。

 あと、ドラゴンに助力を求めるゴブリンがいる可能性があるのだとか。

 この辺は、わからないな。


「なんで、ドラゴンがゴブリンを助けるんだ?」


 その後、スクロールという物を見せて貰った。冒険者が使っていた魔法の道具だ。

 スキルなり、魔法なりが封印されているらしい。魔方陣が描かれている紙が近い表現かな。

 即座に発動出来る魔法……、戦闘では生死を分けると思った。

 それを写し取っていると、日暮れとなった。



 ここで、ジャンヌさんが戻って来た。

 視線が合う……。


「ドラゴン退治は、どうでしたか?」


「……近づけもしないさ。少なくとも沼地から引っ張り出さないとね。今は観察を行っている段階だね」


 まだ、調査段階なんだな。


「引っ張り出すアイディアは、ありますか?」


 驚くジャンヌさん。


「……採算度外視なら、方法もないんだけど」


 ほう?


「魔法のスクロールで、沼を凍らせれば、出てくるらしいけど、沼が大きすぎてね。現実的じゃない」


 スクロール……。スクロールか。

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