あたたかい雪

友川創希

プロローグ

 ――ハープの優しい音色が作り出したかのような君に、僕は恋をしている。


  僕の斜め前には蛍の光のように輝いているところが1つだけある。それを少し眺めていると、爽やかな、森の匂いでも運んできたかのような風が吹き、カーテンを棚引たなびかせた。思わずここが高校の教室だということを忘れてしまいそうだ。


 先生がチョークで文字を書き始めた。『カキカキ』という音がここが音楽室であるかのように響く。生徒たちは当たり前かのようにそれをノートに板書し始める。僕もそれを書き始めた。


 先生は書き終えたのか、何かを話しだした。でも、僕は先生の声が僕の目の前に厚い壁でもあるかのように、かき消されてしまう。耳が聴こえないとかそういうんではない。なぜか今日はやけに彼女のことが気になってしまう。僕の心がもってかれてしまうかのように。


 彼女のことを好きになってしまったのは、今から2ヶ月ほど前の2月中旬の話。その日、彼女の優しさにすぐに僕の心が奪われてしまったのだ。彼女はそれが当たり前かのように僕に……。でも、僕にとっては到底出来ないであろうことだった。


 その日は――。

 

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