三日目
目が覚める。何も変わっていない。
不安だった。何日もこのままなのだろうか?
昨日と同じように過ごしていたら、白衣の男性が、道の真ん中で何か大声で話していた。人だかりができている。遠くてよく聞き取れなかった。
その人が一人になるのを待って話しかけてみた。
自己紹介をしたら、彼は僕が会ったことのある人だった。何日か前に話した小さな少年が彼だった。
彼は前と同じようによく分からないことをまくし立てた。
君達は救われたのだ、とか、××××(機械の名前らしい。難しくて聞いた瞬間に忘れた)を停止させた、とか、オカルトの時代が終わるのだとか。
何を言っているのか全然分からなかったけれど、一つだけ理解できることがあった。どうやら、僕らはもう今の体に閉じ込められて出られないらしい。
僕は茫然とした心地で彼と別れた。
どうすればいいのか分からなくて、とりあえず昨日と同じに過ごす。
夜になって、隣の家の女の子と話をした。彼女も白衣の人の話を知っていた。あの時の人だかりの中にいたのだろう。
彼女はもう子作りをしたくないと言っていた。
当然だ。だって、妊娠したら自分で産まなければいけない。
それが始めから分かっていたら、誰も子どもを作ろうとなんてしないだろう。
彼女の体が子どもを孕んだとして、その子を出産するのは彼女かもしれないけれど、僕かもしれない。あるいは他の誰かかもしれなくて、その確率の方がずっと高かった。
新しい子どもの産まれることは、僕らの過ごす器の数を維持する為に必要だったから、皆進んで子作りをした。魅力的な異性と出会っても、一日が過ぎたら別れて永遠に会えないことがほとんどだったから、ほんの少し互いに好感がもてたら、僕らは簡単に体を重ねた。
産みの苦しみはなるべくなら避けたいものだったけれど、事故や病気と同じに平等な確率で皆に巡って来るものだから仕方のないことだと割り切れた。
今まではそうだった。
これからは違う。
百年後には、僕らは皆裸の魂になっているかもしれない。
新しい器の産まれることはもうないかもしれない。
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