第28話
これから、魔王城へ向かう事になった。
魔王城は、山頂に建てられており、水害の被害は受けていないのだそうだ。
山道を進んで行く。
本当は、山の稜線に沿って進むのが効率的だが、リッカと私のパーティーなら、山道も苦にならない。
そういえば、リッカはスタミナが致命的になかったな。
それが、今や屈強な
兵士聖女……。色々な仇名が付けられるな。
「何を考えているのですか?」
「いや、リッカの成長が頼もしくてな。昔を思い出していた」
「そうですね。ヘーキチさんに精神を壊される前だったら、可愛い女の子だったのにね」
「精神を壊す? 今だに正常だろうに。それに今は可愛いから綺麗になっているぞ?」
――ゴリ
「ぐおぉ……」
凄い突っ込みが来た。殺意が籠っていないか?
態度はデレているのだが、人を殺しそうな突っ込みを入れて来るな。
「ついて来たことを後悔しているのか?」
「……少しだけ」
「そこは、『まったく』と言うべきところだろうに。たく……、最近の若い奴は」
――ザク
危ない! かろうじてナイフを躱す。
それが、地面に刺さった。
「あの~リッカさん? それは、死んでしまいますが?」
「うふふ……。大丈夫ですよ~。私の回復魔法を信じてください」
異形に改造されてしまいそうだ。あれを治ったとは言わない。まるで、クレイジーダ〇ヤモンドだな。常時キレている〇助じゃぁ~ないか。
もしくは、センスの悪い錬金術師だ。聖女の錬金術師?
ふぅ~。危ない仲間を持ったものだぜ。
「そうだ」
マジックバッグより、折れた聖剣を取り出す。
「リッカさん。これ直せませんかねぇ~」
リッカが持つと、聖剣が光り出した。聖剣も諦めてリッカを勇者と認めたのか……。ついでに刃先の方も渡す。
「しょうがないわね~」
――グニョグニョ……
「直剣が、禍々しい曲剣になっていますが?」
「あれ? なんでだろう?」
もはや、聖剣じゃないな。魔剣だ。黒い光を放っている。ちなみに私が持っても光らないので、リッカが装備することになった。
ふぅ~。本当に危ない仲間を持ったものだぜ。
◇
「あれが、魔王城になります」
歩きで1日ほどで辿り着いた。
魔族領が狭いのではない。リッカの歩くスピードが速すぎるのだ。
「さて、どうやって攻める? 潜入による奇襲か? 砲撃からと行くか?」
「……いえ。精霊達と話したのですが、少し待ちましょう」
先制攻撃をとらない?
防御態勢も見られない。
そして、魔王軍からの攻撃も見て取れなかった。
それと精霊達? 元四天王か?
そう思っていると、魔王城の扉が開かれた。
軍が出て来る。その数一万匹……。
まあ、リッカなら一瞬か。多くて3発だな。
ここで、一人前に出て来た。
スラッとした、美しい女性だ。
「魔王のソフィアと申します。降伏しに参りました……」
スカートを少し持ち上げて、挨拶をする。
うむ、淑女だ。貴族令嬢だな。見惚れるほどの笑顔だ。
「うふふ……。降伏を受理します」
こっちは、悪魔だ。悪役……、いや極悪令嬢だな。とても、悪どい顔で笑っている。
「大魔王リッカ様に敬礼!」
魔王がそう言うと、後方の一万の軍勢が、敬礼した?
「何だ? 大魔王って?」
◇
魔族領は、リッカの手に落ちた。
魔王が統治して、大魔王は人間が攻めて来たら迎撃を行うのだとか。
そもそも、戦力が乏しかったところを、リッカがさらに減らしたので、何処の砦も人手不足なのだとか。
あの勇者は、そんな魔族領にも攻め込めていなかったのか。レベルが知れる。
魔王と大魔王が、お茶会をしている。
そんな、キャキャウフフな会話をしないで欲しい。周囲は、その禍々しいオーラでドン引きしているぞ?
それと、元四天王が敬礼しているが、震えている。精霊界に帰してやれよ。
「討伐しないのであれば、私は不要だな。リッカとはここまでとさせて貰う」
「そうね~。それがいいかもしれないわね~。いままで、ありがとう~」
こうして、別れの挨拶を済ませた。
私は、一人寂しく、魔王城を後にすることになった……。
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