第20話

「いい勝負だったと伝えてくれ。また会おう」


 今は、勇者の回復をパーティーメンバーが必死に行っている。


「嫌です。二度と私達の目の前に現れないでください!」


 あれは……、剣聖の娘だったな。彼女も勇者のバフに参加していたのか。せめて、剣を抜け。剣聖の名が泣くぞ?

 まあ、突っ込まないが。

 私は、ため息を吐いて、その場を離れようとした。

 その時だった。

 一人の娘が、前に出て来た。


「ヘーキチさんですよね? お噂はかねがねお聞きしております。お願いです、わたしを連れて行ってください」


 娘を見る。黒目黒髪……。どう見ても、日本人だ。


「名は? そして、何故私について来る?」


「聖女の称号を受けた立花と申します。異世界転移者になります。その……、王家に無理やりに勇者パーティーに加入させれられて……」


 この娘も被害者か。断る理由はないな。

 そして、あの勇者について行けないのか。


「私のパーティーは、きついぞ? 覚悟はあるか?」


「こんな勇者について行くよりは、同郷であるヘーキチさんにかけたいです」


 これ以上ない理由だな。私もこんな勇者には、従えない。

 こうして、新しいパーティーメンバーを得て、旅路を歩むことになった。





「魔王の前に、四天王がいるのか?」


「はい。倒しておかないと、魔王に逃げられる可能性があります。それに……、戦力を集中させて来るかもしれないので、各個撃破が望ましいかと」


 この娘は、軍事の専門家なのか?


「リッカは……、軍事学を何処で学んだのだ?」


「ゲームですけど? シナリオの基本ですよ?」


 ふむ……。私とは住んでいた世界が違うのだな。

 スマホでのゲームなんだろうな……。

 私も頑張ったのだが、結局はスマホを使えず、二つ折りガラゲーで止まっていた。

 唯一できたのは、反射神経系だ。テ〇リス、ゼビ〇ス、それとリバーシくらいだったな。説明書が必要なRPGとかは、初日で諦めた。

 ガラゲーは使いやすかったというのに……。時代について行けなかった。

 まあいい。終わったことだ。元の世界に戻れる可能性もないし。


「脅威となる魔物の討伐。そのために歩みは止めていられない。さて……、行くか。道案内を頼むぞ」


「はい、勇者ヘーキチ様」


「……私を勇者とは呼ぶな。私は、猟師だ。いや、今は狩人なのかもしれない。喰える獣、人に仇なす獣を狩り続ける。ただそれだけの人間だ」


 二人で、魔王城に向けて歩を進めた。新しいパーティーだ。

 それと、私は聖女を鍛えるという新しい目的ができた。最初期から、称号持ちなのだ。ミルキー以上に追い込んでみよう。一年後、いや……、数ヵ月後には、国中にその名を轟かす人材になっているだろう。あの勇者など、足元にも及ばない人材にまで鍛え上げる! リッカが魔族を倒す主導者となるのだ。

 私の目に狂いなどない。決意を新たにした。


 正直、楽しい。この世界は仕事が多いからだ。孤独に生きた前の世界とは、大違いだ。


「ふっ、仕事がある。なんて素晴らしい世界なんだ」


 私は、遠い未来を想像しながら、心を躍らせた。





 リッカ……新しい被害者です。何人目かな?

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