第18話

 私でも雷の直撃を受ければ、ただでは済まない。

 それも何発も続けてだ……。

 私は魔力を使い、回復魔法を発動させる。

 数秒で火傷が、癒えた。

 だが、次の落雷が来る。この繰り返しだ。


「こうなると、私の魔力量とドラゴンとの我慢比べとなるな」


 回復魔法は、まだ数百回は唱えられる。

 ドラゴンを観察する……。


「ダメージは……、受けているみたいだな」


 鱗が剥がれ落ちているし、火傷も負っている。

 私は、ライフルを構えた。

 鱗が剥がれ落ちた部分に照準を合わせる……。だが、止めた。


「先ほどの、山への衝突でバレルが曲がっているな。それと予備の弾薬を落としてしまったか」


 武器がない……。

 戦槌も失っている。

 素手でしか、ダメージを与える方法がなかった。

 いや……待てよ。

 私は、銃のバレルに短剣を取り付けた。

 ここで、また雷が落ちる。


「面倒だな」


 イメージする。魔法は発想力だ。

 雷撃を避ける方法……。私は、魔力を使い体の電気抵抗を限りなく0オームにした。

 次の雷撃を受けるが、ノーダメージとなる。


「ふっ。科学の勝利だな。もう私に雷撃は効かない」


 もう数発なら、ドラゴンは気が付かないだろう。私は、ドラゴンの背にいるのだから。

 こそこそと登って行く。

 そして、鱗がはがれている部分に辿り着いた。

 魔力でライフルと短剣を強化する。硬度を増すイメージだ。

 そして、ドラゴンの肉となる部分に突き刺した。


 ――ザクッ


「……行けるな。本来は硬いのだろうが、バターのように切れる。ふぅおぉ~~!」


 切る! 切る! 切る!

 連続して、同じ個所にダメージを与えて行く。

 そうすると、皮膚と肉が削がれて、骨が見えた。

 頚椎の筈だ。

 骨と骨の間に短剣を突き刺す。

 ここで再度の雷だ。

 頚椎の中の、神経の束に、電撃が流れ込んで行く。


 ドラゴンは高度を落とし始め……、墜落した。





「街の脅威なのだ、排除させて貰う」


 ドラゴンと目が合う。驚愕の表情を浮かべていた。

 全力を尽くしたのだろう。私に討たれるに不満はないといった表情だ。

 手前勝手だが、ドラゴンの表情から理解し合えたと判断した。


「いい勝負だった。来世で会おう!」


 私は、ドラゴンの首を短剣で刎ねた。刃渡りはなかったが、魔力で薙刀状にして一撃で切り落とした。


「さてマジックバッグに仕舞うか……。しかし、どうやって入れるんだ、これ?」





 結局私は、担いでドラゴンを運んだ。尻尾や翼は引きずってしまったが、ドラゴンの鱗なのだ、傷はつかないと思う。しかし、何十トンあったのか……。腰が痛くなった。明日は休もう。


 街に戻り、素材の買取りをお願いする。

 ギルドは、大騒ぎとなった。


 「金貨一万枚だな。依頼書にハンコを頼む。それと、素材の確認を頼む」


 「なんですって~!?」「なんじゃと~う!?」


 受付嬢とギルドマスターの声が、木霊する。他の冒険者がいたらクレームが来ていたぞ? 無人の冒険者ギルドでよかった。

 そして、金貨一万枚は用意できないとのことなので、預金として貰いたいと頼まれた。

 大体百兆円の討伐報酬など、なにを考えていたのか。

 国家予算を超える資金なので、後から王族が相談に来るのだそうだ。

 それと素材はこの街では買い取れないので、王都からの返事待ちになるとの連絡を受ける。素材の代金は……、まあ待つか。


「百兆円あれば、バイクくらい作れるかもしれないな……。それと、アサルトライフル……。いや、いっその事、戦闘ヘリコプターが欲しいな」


 少し希望が見えたかもしれない。この世界で、私の本領が発揮できるかもしれない。今度、王族に相談してみるか。

 それと、聞いてみる。


「他に困っている街はないか?」


「えーと、魔族に脅かされている街があるそうです。勇者が向かっていますが、成果が出ていないそうです……」


 次の行き先が決まったな。

 あんな勇者達には、任せられない。

 魔王討伐も、金貨一万枚だった。

 依頼書を作って貰い、受け取る。

 それと武器だ。ギルドで最高級品を買うことができた。まあ、安い事、安い事。

 今の私は、兆万長者なんだ。


「戦槌と戦斧。そして、弾丸の補充。今はこれでいいだろう」


 それを背中に装備する。


「行かれますのか? もう、七代まで遊んで暮らせるでしょうに」


 ギルド長が訪ねて来た。


「困っている人がいる。十分だ。行かない理由はない」


 私は修理したライフルを担いで街を出た。


「次は魔王か……。どれほどの猛者なのか楽しみだな」


 私は独り歩を進めた。


「ふっ……。この世界の脅威。それを全て排除するのが、私の役目なのかもしれない。面白い! やってやろうじゃないか!」

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