第6話

 次の日の朝、ミルキーと待ち合わせをする場所についた。

 冒険者の朝は早い。

 冒険者達は、私に一礼するか遠回りして街の外へ出て行く。好き嫌いが分かれているな。いや……、自意識過剰か。

 ここで目についた物があった。


「ライフル銃を買った奴がいるんだな。誰かが発明したのか? だが、スコープも付いていない、発明初期の銃など当たるのだろうか……。弾丸代の方が、高くつきそうだな」


 銃の重要性は、誰よりも理解しているつもりだ。

 だが火縄銃を見て、私は銛を選んだ。それと、ナイフだな。

 せめて、サブマシンガンやアサルトライフルが欲しい。そうでなければ、私の経験は生かせない。真っすぐ飛ばない銃の場合は、数が必要だ。

 私は、その歴史を知っている。

 飛び道具は、一撃必中か、数による面制圧のどちらかでないと、意味をなさない。


 ここで、ミルキーが来た。

 覚悟を決めた顔だが、恐れもあるといった表情だ。自分に自信がないんだろうな。

 こんな表情の者は、成功体験を積み上げて行けば、一番成長することを知っている。

 私はそうやって、数人育て上げた。彼等は今頃、隊長格だろう。

 とことんまで、追い込んでやろう。そうしよう。

 私は、決意を固めた。


「おはよう。行こうか」


「おはようございますニャ。でも食料はどうされるのですかニャ?」


 昨日は大量の水と、武器防具を揃えただけだった。

 そうか……、ミルキーは街の外での狩りを知らないんだな。


「現地調達で行く。狩れなければ、餓死もありうると思てくれ。ビタミンの補充は野草で行う。採集の知識はあるか?」


 常識を学んでも貰いたいな。こんなのは、狩人の基礎中の基礎だ。冷蔵庫もない世界で、肉の長期保管方法は限られている。

 まあマジックバッグという、オーバーテクノロジーもあるが。


「ゴフ……? ニャニャ、ニャんですと?」


 涎じゃないな。吐血? 胃潰瘍? それほど意外だったのか?


「ふっ……」


 また狩人の基礎を教えられたな。確かな一歩だ。





 火山に向かって、私達は歩き出した。馬車や馬は、まだ乗る気がない。道中で、魔物に襲われるだろうからだ。せめて、戦える馬が欲しい。ユニコーンやバイコーン、ペガサス等であれば、購入も考えたいな。まあ、大人しく従ってくれるという前提付きだが。

 もしくは、バイクかトラックだな。誰かが発明してくれるのを待とう。


「む……。そこの茂みに蛇」


「ひっ!?」


 ミルキーが、短剣を投擲する。

 命中しているんだが? こんなスキルも持っているのか。将来有望だな。

 私は、地面に縫い付けられている蛇を左手で固定し、右手で胴を切り裂いた。


「今日の昼食だな。いいぞ、ミルキー!」


 ミルキーが、青くなっている。毛色は、プラチナブロンドなんだが、今だけは、白色に変わったと思えるほど青ざめている。

 もしかして、スキルか?

 体毛の色を変えられる?

 将来有望と思ったが……、逸材だったかもしれない。


「凄いスキルを持っているんだな」


 賞賛を送ったつもりだったんだが、ミルキーが倒れた。

 心臓をおさえている。どうしたのだろうか?

 蛇が苦手だった? 過呼吸?

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