第3話 魔法族マリナ・ウィンテールと歴史の授業

名称:マリナ・ウィンテール

体格:160cm、おっぱいは普通、やせ型、濃いブラウンの内巻き髪

種族:魔法族

年齢:17歳

備考:【星座】持ちの凄腕魔女、むっつりすけべ


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「…大戦による被害とそこから和平が結ばれたところまでは前回の授業で話したね。

 今日はこの国の歴史を学んでいこうか」


ラインバッハ家の邸宅内の一室。

派手さはないが上品で落ち着いた雰囲気の勉強用に設けられた部屋だ。

ヘンリー君の為に講義と自習用の為に部屋を一つ用意するとは、さすがはラインバッハ家の財力だ。

生徒一人の教室だと声がよく通って楽で良い。

とはいえ、この程度は当然の措置というものだろう。


机を挟んで座るヘンリー君をちらりと見る。

たしか東方の血筋だったか、特徴的な黒髪黒目は人目を惹く。

ラインバッハ家という血統というだけでも価値があるというのに、

その上、ともなれば警戒してしすぎるということはない。


「我らがラ・ヴィンセルの建国は和平締結直後、竜人族を筆頭に各種族の有力者が主導で成立した。

 国是は知っての通り多種族共栄だ。

 建国初期は種族間の文化の違いでかなりごたついたそうだ。

 このあたりは興味があれば長命種の年寄り連中にでも聞いてみると良い。

 今からは考えられないような混沌具合だったと聴く」


特に男を巡っての刃傷沙汰が。

有名なもので獣人族のマーキング関係か。

今でさえ獣人族の唾つけ《ref》自分のつがいだと周知するマーキング行為、個人によってマーキング部位は異なる《/ref》でいざこざが起きるんだ、公正決闘委員会のなかった当時はさぞ混乱したことだろう。

このあたりはいずれ詳しく説明しないといけない。

彼の人生に深く係ることで、むしろもっとも重要なことだと言っても過言ではないだろう。

こういうのはその種族から直接教わるのが一番なんだろうけど。


獣人族の唾つけ順守ref複数の獣人族の伴侶を持つ場合、マーキングの部位が被ると血みどろの争いが起きる《/ref》なんかはタチアナから説明してもらう方が良いか?

知らないうちにされたりなんかでよく決闘沙汰になると聞く。

まあ成人するまでにそういった教育を受けるものだし

知識がないことに託けて未成年の男児に唾つけする恥知らずはそういないだろうが。


というか普人族の歴史をどう説明しようか迷う。

ヘンリー君は聡い子だ。

私が口を濁したとしても、その内自分で気付いてしまうかもしれない。


「………。」


迷う。

これってかなりの貧乏くじだ。

嫌だよ私、ヘンリー君に嫌われるの。

でもそれ込みだからこその高待遇なんだよな。

覚悟を決めろ私。

心に鉄を纏え。

お前は出来る女だ。


そう意気込んだ私はヘンリー君の澄んだ瞳と目が合ってしまった。

咄嗟に目を逸らしたが、目の奥に熱を感じる。

【星】が光っていたのを見られてはいないだろうか。

恥ずかしい。


「マリナ先生、どうかしましたか?」

「いや…、いや大したことじゃないさ。続きを話そう。

 この国は議会制度を敷いていて、特に竜人族の議員が…」


私は問題を先送りにすることに決めた。

未来の私がなんとかしてくれることを期待しよう。

無垢な視線に晒されながらセクハラまがいの講義をする勇気が今の私には足りなかった。

というか言えるわけなかろうが。


他種族間で子をなせる唯一の種族だとか、

元は他種族にとって子を増やすための奴隷で、生きた資産扱いだったとか、

奴隷待遇から生殖能力だけで今の待遇を勝ち取ったセックスモンスターだとか!

過去の大戦は普人族の男の取り合いで起きたとか!

大戦終結も結局普人族のアレコレで解決したとか!

神が作りたもうた奇跡、歩くポルノ種族だとか!

言える!訳が!ないだろうが!


そりゃあヘンリー君も将来は多数の伴侶を持つだろうし、知っておくべき知識だよ。

そして私はそういった教育をすることを期待されて雇われているのも自覚してるよ。

でも嫌なもんは嫌なんだよ。

男の子とワンチャンあるかと思って、頑張ってこの職を勝ち取ったんだよ。

曲がりなりにも【星座】に至ったのだってモテたい一心からなんだよ。

嫌われたくないんだよ。


二人だけの教室で、私の声と書き込むペンの音、たまに飛んでくるヘンリー君の質問に答えながら、

被った三角帽子でバレないように彼の顔をチラ見しつつ思うのだ。

尊敬される先生と生徒の関係を壊さない、そして普人族のあれこれを説明しきる。

そんな素晴らしい解決策を未来の私が考え付くことを期待して。

まずは視線がぶつかっても目を光らせないように気を付けようか。


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≪TIPS≫魔法族

魔法族は瞳に概念的な【星】を宿した一種の魔眼を持つ

目を合わせ続けることは求愛行動か威嚇のどちらかを意味する

【星】の輝きは性的な興奮とも直結している

それを隠すためにつばの広いとんがり帽子や眼鏡等を着用しているが、魔法族の伝統衣装であると強く主張して譲らない

キスするときは絶対に目を閉じない

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