第1話

今日、この春から僕の社会人生活は4年目に入った。

いつもは残業で少し遅くなるのだが、

今日は特別に予定があった。

久しぶりに大学の時のサークル仲間と集まろうと

1か月ほど前から予定を立てていた。


その当時、

想いを寄せていた彼女も参加すると聞いて

少しだけ胸が躍っていた。

そんな自分に驚いた。

あぁ、こんな気持ち、しばらく忘れてたな。

恋愛なんてする暇もなく、

日々の仕事に追われていた。




いや、

よくよく考えてみれば

自分への言い訳だったのかもしれない。

というか、

言い訳だった。

恋愛することに腰が引けていたのだ。

自分の想いを伝えられないのなら

こんな気持ち、

ならない方がいい。

どうせ実らない想いならば、

そんなもの持たない方がいい。


社会人になってからというものの、

コンパに参加してもその場を楽しむだけの時間を過ごしてた。

誰かに没頭するなんて、

それはそれはとても危険なことだと

自分に言い聞かせてきた。


仕事を終えて

同僚に声をかけられる。


「あれ、黒江さん、今日帰るんですか?」


「あー、うん。予定入れたんだ、うらやましいだろ。」

少し笑って、後輩をからかってみた。


「おー!やっとこさ彼女できたんです?それとも、片思いですかね?」

にやにやと返す後輩。


「ちがうよ。んじゃ、申し訳ないけど、先帰るわ。お疲れ様。」

僕はくるりと体を出口に向けた。


「はーい、お楽しみに!明日感想聞かせてくださいねっ!」


後輩の声を背中に受けながら

右手を上げてひらひらと振った。


会社から出て、

街へと向かう電車に乗って、

窓に映る自分の姿を見ながら髪型を少し直す。

久々に会う皆との時間に

心が弾んでいる。

そして、

久々に会う彼女が

どんなに綺麗になっているのかと

想像して

口元が緩んでいる自分がやはり窓に映っている。

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