第20話 太陽の余命

  太陽の余命を知れば人の世のなんと短く切なくもあり(医師脳)


 宇宙の年齢は138億歳。

 太陽の余命は50億年、と聞く。

 その最期の瞬間に向けて膨張し続ける太陽は、いずれ地球をも飲み込んでしまうらしい。

 わざわざ戦争で殺しあったり環境汚染で破壊したりせずとも、人類を含めて地球は丸ごと消滅する運命なのである。

 数十億年後の話だろうが……。


 もしそんな(全てが終わった)状態に立てるなら、何が見えてくるだろうか?

 つまり50億年後の天の川銀河あたりまで遠くへ視座を移し、そこから現在の自分の回りを眺めるのだ。

 多くの人の関心事である「来週のこと」とか「家族や職場のこと」なども、如何に些細な問題か分かるはず。

「百年後の世界のこと」でさへ、身近な問題として当事者意識を持てるのではないだろうか。


 テレビのマラソン中継などで耳にする「縦一列に……」という表現。

 たしかに画面では、大勢の選手が前後にぴったりと続いている。

 すぐ追い抜けそうなのにと思うが、バイクカメラに切り替わると数十メートルもの間隔がある。

 レンズのマジックだ。

 アナウンサーの乗る中継車には望遠レンズのカメラが搭載されており、これで先頭から後続の選手を撮影するから距離感がおかしくなるのだろう。


 時の感覚はどうだろう。

 二十歳の頃の1年間と、古希過ぎてから思い出す青春の1年間を、同じ長さに感じるだろうか?

 超望遠レンズで現在から70年間を振り返れば(1年間など誤差範囲、と言うか)前後が入れ替わっても不思議はなかろう。

 冒頭の「太陽の余命が50億年」という科学的知見で思い浮かぶのが「56億7千万年後に阿弥陀如来が顕現する」という仏教の教えだ。

 なにか不思議に符合するような気もする。


(20221201)

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