第12話 最初の読み手

 読み手を想定せずに文章を書くことはあるまい。


 この〈繰言〉を書く際には、昼下がりの蕎麦屋さんにいる(スマホを見ない)一人客を想定してきた。

 蕎麦前のアテにと、月刊『弘前』を読み始めた……そう、アナタのことですよ。


 半年の連載予定が更に半年過ぎた。

「原稿をありがとうございました。毎回楽しみにしております」と(書き手の意欲を刺激する)編集者の気遣いが嬉しい。

 〈最初の読み手〉である編集者に改めて感謝したい。

○月刊『弘前』の〈医者様の繰言〉に投稿し吾も文士の端くれとなる


 令和二年七月一日、インターネット上に『三人の卓子で一言』を始めた。

 雑誌『文藝春秋』の投稿欄〈三人の卓子〉にオマージュをささげたつもり。

 ちなみに〈三人〉とは、卓子(テーブル)を囲む読者と筆者と編集者のことらしい。


 投稿規定「六百字以内」なら楽勝だ。

「読者から筆者への反論、編集者への注文など、小誌記事についての自由な意見をお寄せください」とある。

 十日発売で「締め切りは二十日」と慌ただしいが、何本でも書けそうだ。

○行間にも思ひを籠めてつづるなり筆力衰へぬ間にと急ぎて


 しかし、文士の端くれは悩む。

「大量の没原稿が哀れだ。せっかく書いたものだし〈没書供養〉になれば……」と考えついたのがネット公開。

 それも、(誌面の雰囲気を出そうと)探し当てたのが縦書きのブログ(yukion109-md. goat. me)である。

〇縦書きの『三人の卓子で一言』のブログを読むは妻と子らなり


 菅原道真公が夢枕に立った。

「何やらたくさん投稿しておるようだが、謝礼(図書券)目当てではなかろうな」

「図書券はいりませんので、何とか掲載してください!」……ここで目が覚めた。


(20201001)

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