第4話 四足の草鞋

 被災地で暮らしていた頃、支援つながりで多くの方々と会った。


 この出会いを大切にと持ち歩いたのが〈ARHメディカル・アドバイザー〉など四種類の名刺だ。


 ARHは医療用多目的ヘリコプターを運用するNPO法人。

 そこでは、高所嫌いなのに患者搬送に同乗したり、見様見真似でマーシャリング(誘導手信号)を手伝ったり…と、楽しさもあった。


 もともと医療サービスの不十分な沿岸地域が、震災により更に不自由さを増した。


 特に高齢者の場合、公共交通機関の被災により医療機関へのアクセスが悪化。

 女性や子どもの場合も、沿岸地域の医療機関が激減したため、内陸都市部との医療格差が更に進んだ。

 そこで、老人内科医で(元)産婦人科医の私は、医療弱者の老人と女性を応援し続けた。

「医療で震災復興を!」と。


 それが、〈老健ハイムメアーズ・特養あらと〉であり仮設の〈南三陸診療所レディス外来〉だ。

 さらに休日を利用して、医療相談〈クィーンズ倶楽部〉で南三陸町内外の仮設住宅をまわる。

 スケジュール調整や会場設営などは、牧師さんたちボランティアのお世話になった。


 四種類の名刺を持って…四足の草鞋を履いて…被災地で若者たちと活動しているうちに、気持ちだけは若返ったのかも知れない。


 サミュエル・ウルマンは曰く「青春とは、人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ」と。


 とかく後ろ向きに捉えられるエイジング(加齢)だが、〈アクティブ・エイジング〉を「超高齢社会を積極的に生き続ける努力の営み」と考えたい。


 さらに注目すべきは〈エイジング・パラドックス〉…。

「加齢に伴い負の状況は増すが、高齢者の幸福感は下がらない」と言われる現象。

 これを使わない手はない!

○エイジング・パラドックスこそ有り難けれ。老いて幸福感ずる仕組み


(20200201)

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