現代最強の洗脳系呪術師は、異世界最強な奴らに無双する。~呪術って、物凄く使い勝手が良いんですよ。例えば、あなたの肉体を自由に操れたりします。~

Rough ranch

第一話 『例えば、お前の肉体を自由に操れたりする』


 目を開けると、そこはまさに地獄絵図といった有様だった。

 場所は多分、泊まる先であるホテルへと俺達を運んでくれていたバスの中だろう。

 多分というのは、このバスらしきものの形が原型を留めない程に壊されていたからだ。

 車席は全て折れ曲がり、所々には付着した血も見える。

 一体、何があればこんな光景になるのだろうか。

 まあ、常識的に考えて事故だろうか。


「他に何かないかな、って、関本さん!?」


 他に、確認できる事は無いかと立ち上がろうとすると、何故か俺に体を預けるようにぐったりとしていた関本さんを発見した。

 発見といっても、ただ横にいた事に気付いていなかっただけなんだけども。

 というか、関本さんとはバスの席がけっこう離れていたと思うんだけど、何故俺の隣にいるのだろうか。


「起きて、関本さん。起きて」


 俺は、もしかしたらこんな状況になった理由を知っているかもと思い、関本さんを揺らす。


「ムニャムニャ」


 全く、人がこんなに驚いている時に、こんな安らかな寝顔をして。

 周囲を確認してもクラスメートは一人も見当たらない。

 ちょっとこれは、本当に事故か疑わしくなってきた。

 もしかすると、俺を狙った誰かからの......


「ムニャ、ん、ここは?」

「あ、関本さん。ようやく起きた」

「って、春波くん!?」

「俺と全く同じ反応をありがとう」


 関本さんは、依然として混乱した様に周囲をキョロキョロと見回す。


「ね、ねえ春洋くん。ここってどこだか分かる?」

「それがさっぱりなんだ。」

「そ、そうなんだ。じゃあ、一体なんでこんな状況に、」


 そう、関本さんが考え出した時だ。


ドドォーーーン!


 と、バス前方に何かが落ちて来た。

 いや、何かじゃない。

 誰かだ。


「やっぱりというか、何というか。既に勇者候補の奴らは逃げちまってるじゃあねぇかよ!」


 どうやら落ちて来たのは、ゴリマッチョな一人の男だった。

 頭部には二本の角が生えており、背中には彼の身長程はある巨大な鉈を背負っていた。


「お、なんだ、弱そうなのが二人くらい残ってるじゃねぇか。まあ、どうせ無能力者だろうがな」


 男はこちらに気が付いたのか、ノシノシと壊れたバスをきしませながら歩いてくる。


「関本さん、少しこっちに寄って」


 顔を見るところ、どうやら現状が意味不明すぎて若干思考停止しているっぽい。

 力ずくでどうにか関本さんを俺の隣に寄せる。


「わっ」

「ちょっとだけ、俺から離れないでくれ」

「で、でも早く逃げないと」

「大丈夫、あいつくらいなら屁の河童だ」

「リアルで屁の河童とか言ってる人、初めて見たかも」


 こんな状況でも、なかなかどうして的確なツッコミをしてくれる。

 まあ、感心している余裕は無いけれど。


「ああ、俺様程度だと!? いい加減なことぬかしてんじゃねぇぞ、この野郎」

「どこがいい加減だよ、適正価格だ。」

「なわけあるかよ、俺様は魔王軍四天王の一人、カマセドーグ様だぞ!」


 どこからツッコめば良いものか。

 まず、こんな良い年齢になっても魔王軍四天王とかを叫ぶ大人にだけはなりたくないというのを第一に言っておきたい。

 あと、名前がそのままかませ犬じゃんか。


「ねえ、無能力者ってどういう事かな?」

「確かに、そういえばさっきそんな事言ってたっけ」


 無能力者があるって事は、俺みたいな何らかの能力者も居たりするのだろうか。

 あと、勇者候補というのも謎だし、他のクラスメートがどこに居るのかも謎だ。

 つまり、何一つ分からないって事なんだけどね。


「なんだお前、そんな事も知らずにここで放置されてやがったのかよ。どうやら、今回の勇者候補の奴らには優しさってやつ微塵も無いらしいな」

「その勇者候補ってのは、一体なんなんだ?」

「そうだな。お前らの境遇に免じて、ちっとばかし説明してやるか。」


 このカマセ野郎、ちょっとだけ好きだ。


「いいか、お前らは人間の聖女によってこの世界に召喚された勇者候補なんだよ。まあ、元だがな。他にも何十人か居ただろ。そいつらは勇者としての適性があったから、その聖女と共にどっかへ行ったらしいな。」


 そんな訳無いとは思うが、本当に異世界だったとしたら興味深い。

 できれば、この世界の技術とか文化とかを見てみたい。

 まあ、帰る手段が確立してからがベターだけど。


「じゃあ、俺達にはその適正とやらが無かったから、無能力者なのか?」

「ああ、物分かりが良いじゃねぇか。」

「で、でも、何でおいていかれたんですか?」


 そりゃ無能力者だからだろ、と言いかけたが、彼女も内心理解しているのか、その声は細く震えている。

 どうしても、置いていかれたというのが理解できない、いや理解したくないのだろう。


「まあ、お前らが無能力者ってのもある。が、何よりここは滅多に人間や魔族が立ち入らない境界の森だからだ。聖女が居れば勇者は召喚できるが、召喚する場所は選べないんだ。ここみたいな、魔力が濃い場所じゃねぇと、お前らは召喚できないんだよ。という事で、死ね」


キーーン


 一瞬の内に、男は俺達の目の前へと現れた。

 視認できないレベルの、超高速移動。

 もしかすると、ここが異世界なのではとも思えてくる。

 だって、常人がこんな動きを出来るはずが無いのだから。


「テメェ、無能力者じゃなかったのかよ」

「一度もそんな事言ってない」


 俺がそういうと男は結界を危険に感じたのか、勢い良く後方へと飛びのいた。


「硬いな、その結界は」


 男はとんでもなく好戦的な笑みで、そう言った。

 目は全然笑ってないが。


「ああ、俺の呪力を三重にして防御してるからな」

「呪力ぅ?」


 呪力という言葉を飲み込めていないのか、男はキョトンとした顔になった。

 時間があれば、その間抜け面をこいつ自身に見せてやりたい。

 「俺はこんなアホ面じゃあねぇ」とか言いそうだ。


「呪力ってなんだよ。何系統の魔法だよ?」

「魔法? ちょっと違うけど、もしここが異世界だっていうなら魔法と言われていてもおかしくはないな。」


 俺が昨日まで住んでいた日本では、呪術と魔法は全くの別物とされていたが、結果への過程が違うだけで効果は似た様なものだ。

 魔法と言って差し支えないだろう。


「そうだな、お前も親切にこの現状を教えてくれたし、説明するのもやぶさかじゃない。」

「おい、簡潔な一文でまとめろよな。俺は気が短いぜ」


 簡潔な一文とは、またまた難しいお題だ。

 呪術がどれだけ奥深いと思っていやがる。

 まあ良い。

 強いて言うなら、だ。


「強いて言うなら、魔法とは別の概念だよ。」

「分かりにくいわ! どういうものかって聞いてんだよ!」

「そうだね、じゃあこんなのはどうかな。これは誰にでもできるって訳じゃないけど、」

「訳じゃないけど?」


 その言葉と同時に俺の術式を構築する。

 手のひらサイズの小さな術式だが、これくらいでも問題ない。


「例えば、お前の肉体を自由に操れたりする」



~あとがき~


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