第15話  ロマンティック・モードの令嬢、絵師の嘘

 深夜の霧の中をひたすら、馬車で走りましたわ。

 何処に行くのでしょう……

 ああ……駆落ちなんてロマンティック……


 ♦️


 あら、嫌ですわ。少し、眠っていたみたい……

 気が付いたら馬車が森の中の一軒家の前に泊まっていましたわ。


「気が付かれましたか?お嬢様」


「ここは何処?」



「知り合いの別宅です。僕はこれから、お嬢様が国外に出る準備をしてきます。

 ここでお待ちください」


「まあ!!待つだなんて、あたくし、空腹には耐えられませんわよ!!」


「はいはい。この館には沢山の果実もお菓子も用意してありますよ。それで我慢して下さい」


 あたくしは、ひとまずエドワゥの言う通りに、馬車を降りましたわ。

 小屋のような家でしたけど、先ほどのエドワゥの話では、ここが最終目的地ではなさそうなので、少し安堵しました。


 扉を開けると、少し前まで誰かがいたように暖炉には火がくべてあり、部屋も暖まっていました。


「では、エドワゥ。あたくしをお姫様抱っこして、この家に入るのです」


「は……はあ!?」


 エドワゥは目をパチクリさせましたわ。


「さあ、さあ!!」


 あたくしが促すと、エドワゥはやれやれと大きな溜息をついて、こともあろうにあたくしの事を大荷物を持つように、肩の所で担ぎましたの。


「ちょ……エドワゥ!?」


「はいはい、お嬢様にはこれで十分ですよ」


 エドワゥは乱暴にあたくしを家の中に運びましたけど、暖炉の前のソファに下すときには、とても優しくて丁寧でしたわ。


「ここで待っていて下さい。お嬢様」


「エドワゥ……あたくし達たちは夫婦になるのですから、お嬢様はないですわ。

 カミーユと呼んで」

「ええ・・・では帰ってから、そうします。」


 エドワゥはあたくしのオデコにキスをしてくれました。

 そうしてエドワゥは、去って行きましたわ。


 あたくしは、少しお腹がすいたので、辺りを見回しましたの。

 すぐに、テーブルの上にあるお菓子と果物を見つけましたわ。


 流石にエドワゥ、抜かりはありませんわ。


 あたくしは、クッキーを1つ食べて、ソファに寝転びましたわ。

 そして、そのまま深い眠りについてしまいました。


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