第8話  奇妙な再会

「アラン・ドルシアです」


 二刻ほどして、執事のダッドリーがあたくしを迎えに来ましたわ。

 その時までには、あたくしも支度は整い、緑の織りに金糸で刺繍の入っている、勝負服を着て、髪は乙女の印であるというように、肩に流してドレス模様と同じ金のサークレットを付けて部屋を出ました。


 ダッドリーは一瞬、怯んでいましたが、執事らしく何事も無かったように、あたくしを居間まで案内したのですわ。


「カミーユ様。今日の主役はミレーユ様です。それをお忘れなく」


「当たり前のことでしょう。何を言ってるのです?」


 居間に入って、完璧な礼をしました。


 そして挨拶されたのです。

 はちみつ色の髪の青年に……

 そして、あたくしを見て笑っている?

 お腹を抱えて……?

 失礼な!!


「アラン、失礼よ。姉様はまだ良い人もいらっしゃらないのよ」


「いや、ミレーユ。妹が婚約者を連れてくる日にあんなに着飾るお姉さんて、普通いる?」


「普通じゃないから、まだ売れ残ってるのだわ」


 な、なんだか、酷い言われようですわね。


「姉様、聞きましたわよ。国王様の第四夫人の話を蹴ってから、グッと縁談が少なくなったと」


「当り前でしょう!!40代のオッサン王の第四夫人なんて、あたくしの美貌が許しませんわ。あたくしには、財力と若いイケメンが相応しいのです。

 さあ、アランとやら。あたくしの前で跪きなさい。そうして、こういうのです。

 あなたのような人を待っていました。結婚して下さい。と!」


 あたくしが言いましたら、アランという青年はまたゲラゲラと下品に笑ってきました。どこまで失礼なのでしょう。


「カミーユ、僕のことが分からないの?アランだよ。君と駆け落ちした。

 元子爵家のアラン・リンディフで今は、アラン・ドルシアだよ」


 思いがけない再会に、あたくしは固まってしまいましたわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る