転生者転生者転生者!転生者ばかりのこの世界!【ノーマル】な俺には無理ゲーすぎんだろw

@dasaiyo

第1話 死

「大山和人。趣味はゲームとアニメです。リリア中学校からきました。【転生者】です。皆さんよろしくお願いします。」


はいはい。また【転生者】。

俺の住むこの世界は、馬鹿な神のせいで【転生者】で溢れかえった。

正確に言うと【転生者】とその子孫だ。


今から1000年前、この世界を滅ぼそうとする魔王がいたそうだ。その魔王ってのが強いのなんの。

神が転生者を送り込んでも、全く歯が立たなかったらしい。

意地になった神は、この世界に転生者を送り込みまくった。

流石の魔王も、転生者の軍勢、転生者の中から選ばれた勇者には、流石に勝てなかったようで

転生者陣営の勝利におわったらしい。

めでたしめでたし...


じゃねぇんだよ。


そんなこんなで平和になったこの世界には、転生者が溢れかえった。

馬鹿な神のせいでな。

そこから転生者は繁殖を繰り返し、転生者の子孫で溢れかえった。


いやぁ、分かるよ?そりゃ転生者はモテるだろうさ。

より優秀な遺伝子を残そうとする、人間の本能を考えるとこうなっちまう訳だ。



転生者の子孫はしっかりと親の遺伝子を受け継ぎ、普通の人間では対抗出来ない。

身体能力や特殊能力、さらには魔法まで使える者も居る。


なんだよコレ、無理ゲーだろ。


そう、俺は絶滅危惧種の【ノーマル】な人間なのだ。



「えっと...シリア中学からきました...

リーエルです。【召喚者】です。」


はいはい、お次は【召喚者】様ですね。


【召喚者】とは、馬鹿な転生者が、能力を使って召喚した者の事である。

今は法律で禁止されているが、1000年前に、そんな法律など存在しない。


ばんばん【召喚者】が誕生した。

こいつらも転生者と似たようなもんだ。

少し違うのは、【召喚者】は【転生者】より魔法技能に優れている事だ。

その分、身体能力は転生者と比べて低い。


だからなんだ?俺は【ノーマル】だぞ。


そんな事を考え、イラつく俺を他所に

自己紹介は進んでいく。


転生者転生者転生者、召喚者転生者召喚者召喚者。

そう、この世界は、石を投げれば転生者か召喚者に当たる。


次は俺の番だ...勘弁してくれよ…


「山田中学校から来ました。天山 カルトっていいます… 【ノーマル】です。ボソッ」


クラス中が湧いた。

珍しがる者、笑う者、馬鹿にする者。

可哀想な目で俺を見る者。



いいさ、好きに言ってろ。

お前らのリアクションで、大体どんなヤツらか分かった。

笑った奴と馬鹿にした奴は絶対許さない。


「お前ら静かにー。何がそんなにおかしいんだ?天山、気にするな。座っていいぞー。そんじゃ次。」


そりゃおかしいだろうよ。【ノーマル】なんて、この世界に100人もいない。


俺はいてもたってもいられず、教室からとびだした。

しかし、帰ろうとする所を担任に見つかり、保健室で待機するよう命じられた。


こいつ教室にいたんじゃねぇのかよ。なんで俺の前に現れてんだ。


チート野郎が…


保健室に行くと誰もおらず、俺はベットへダイブした。

そして泣いた。枕に顔を押し付け

声が漏れないよう、ワンワン泣いた。


「どうしたの?」


そんな声と共に、その子は俺の背中を優しく摩った。


「どこか痛いの?」


しまった...横のベットか。

注意力の無くなっていた俺は、横のベットの存在に気がつけなかったのだ。



「いや、グズッ… なんでもない… でずっ…」


「なんでもなくないよね。」


そう言って何も聞かず、俺の背中を摩ってくれた。

俺が泣き止むまで、ずっとだ。


5分くらい経っただろうか。

流石にこのままじゃこの人に悪いと思い、体を起こした。


顔を上げると、そこには悲しい顔をした天使がいた。

訂正しよう。悲しい顔をした女の子がいた。


「泣き止んだの?よかった。」


天使はそう言うと、俺の頭を優しく撫でた。

幸せだった。

さっきの出来事を、全てチャラにしてもお釣りがくるくらいに。


「ごごご、ごめん。俺、俺っ。ごめん。」


「なんで謝るの?」


「いや、えっと。ずっと撫でて…くれてたから…」


「謝る事してないでしょ?」


「そうだけど…えっ、とあの。ありがとう…」


「どういたしまして。落ち着いた?みたいだね。」


「私は葵。君は?」


「カルト…です。」


「1年生?だよね。何かあったの?」


「えっと、あの…その…」


「嫌なら言わなくてもいいんだよ。」


そう言うと、また俺の頭を撫でてくれた。

俺の涙腺は崩壊し、今日あったことを全て話してしまった。



話終わると葵は「辛かったね」と言いまた頭を撫でてくれた。


「俺【ノーマル】なんです。葵さんは笑ったり、可哀想な目で見たりしないんですか?」


「なんで?今まで沢山辛い思いをしてきたのは分かるよ。でもそんな事思わないよ。」


「だってそれは君の個性じゃん。」


個性?個性だって???ふざけるな。こんなものは個性でもなんでもない。ただの欠陥だ。


「個性なんかじゃねぇよ!!!!!!俺はっ俺はっ」


それ以上言葉が出ず、俺は保健室を飛び出していた。


「ごめんね…」



また逃げてしまった。

逃げただけじゃない。

俺を気遣って、優しくしてくれた人にごめんねを言わせてしまった。

最低だ。最悪だ。もう嫌だこんな人生。

死にたい…。

こんな無理ゲー、さっさと終わってしまいたい。


「ついてこい。」


気がつくと、俺は担任に手を引かれ

職員室に連れて行かれていた。


なんなんだよコイツ。


職員室の奥にある小さな部屋で、担任から色々質問される事になった。

俺の頭はさっきの出来事でいっぱいで、担任の質問は頭に入ってこず、ずっと俯き泣いていた。



1時間以上は経っただろうか。

途中から担任は喋る事をやめ、ずっと俺を見ていた。


「今日はもう帰っていいぞ。他の生徒も帰った頃だろう。気をつけて帰るんだぞ。」


そう言うと担任は部屋を出ていった。


それから何時間経っただろう。

ようやく俺は立ち上がり、学校を後にした。


辺りは暗い。夜か…



もう嫌だ。死にたい。生きててもなんもいい事ない。

無理ゲーなんだよそもそも。

こんな状況を作った神。

恨んでやる。

死ぬ前に殴らせろ。

クソがっ。


そんな事を考えながら、俺の足は家とは別の方向へと向かっていた。

人のいない所にいきたい。


暫く歩いていると、廃工場が見えてきた。

学校近くにある森の、廃工場だ。


ここでいい。

もう、ここで終わろう…

廃工場に入ろうとすると誰かに話しかけられた。


「おい坊主、ここは使用中だ。よそ行けや。」


なんだ人がいたのか。

じゃあ違うところを探すか。


「分かったよ…」


そう言って顔をあげると

そこには複数の男に囲まれた女の子がいた。

制服は破かれ、あられも無い姿になっている。


あぁ…レイプってやつか。

可哀想に。

死ぬ前に1回くらいヤりてぇな…



「俺も混ぜろよ」


「はぁ??お前ぶっ飛んでんなw この状況みてそんな事言う奴初めてだw

普通、逃げるか、キモイ正義感振りかざして殴りかかってくるかだろw

なんなのお前wちょー気に入った!1発やってけよw」



意外だった。殴られると思ったのだが

俺に殴られることを恐れた神なりの、最後のプレゼントだろうか。


「おーい!野郎追加だ!!こいつ、ここ通ったガキなんだけどよぉw

逃げるでもなくキレるでもなく、なんて言ったと思う?」


「俺も混ぜろだってよwwwウケんだろwww」


「何それチョーウケるw俺らよりクズじゃんw」


「だろwだからよぉ、参加させてやる事にしたんだわw

ほら入ってこい坊主!丁度今から始まる所だ!」


「おもれぇw ほらこいよガキ!1発目はお前にくれてやるw お前らもいーだろ?」


「何それおもろそうw」


「はぁ?ふざけんな!俺がジャンケンで1番て決まっただろうが!どうすんだよ?この猛った息子はよぉ??」


「坊主のプレイでもみてセンズリこいとけやw」


「はぁ?何それ。お前天才じゃん… おいガキ!とっとと始めろや!」


俺は腕を捕まれ、女の子の前に連れてこられていた。

何発も殴られたのだろう。髪はグチャグチャになり

顔も何ヶ所も腫れ上がっている。

なんて奴らだ…女の子相手に複数人で寄ってたかっ....





「葵...さ...ん...?」


「ゴホッ...ゴボッ...」


血を吐きながら彼女は言った。


「逃げて...」





あぁ神よ。恨むぞ。殺す殺す殺す殺す殺す。

絶対殺す。

何もかもお前のせいだ。

何が転生者だ。何が召喚者だ。

お前だけは絶対に許さねぇ。

絶対に殺す。



俺はここで死ぬ。こいつらに殺される事にした。

でもな、この人だけは絶対に助ける…


俺にはある装置が渡されている。

その装置ボタンを押すと、すぐさま警察が駆けつける仕組みになっている。

何故こんなものをもっているかって?


俺が絶滅危惧種の【ノーマル】だからだよおおおぉ!!!


生まれて初めて【ノーマル】に感謝する。

この日、この時のタメだったんだろう。


こんな山奥でも、警察は5分もすりゃ駆けつけるだろうぜ。

それまで暴れて、俺はこいつらに殺される事にした。

【ノーマル】が【転生者】であろう奴ら5人相手に、勝てるわけもねぇ。


でもなぁ、時間稼ぎくらいはできんだよ!

俺を殺せば、お前らの猛った息子も大人しくなるだろう。

その間に警察がここに来るんだよ。




最低の人生だったぜ!!!



「ありがとう。ごめんなさい。あなたに救われました。最後に恩を返します。」


「何言ってんだ坊主w本当に頭おかしいのか?さっさと始めろや」



「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!!!」


俺はポケットのボタンを押し

近くにいた男をぶん殴った。ボコッ!!



不意打ちで顔面にフルスイング!!決まったぜ

でもなぁ、効かねぇんだろ???おめぇらにはよぉ!!



「逃げてぇぇぇっっ!!ゴホッ...」


力を振り絞り、葵さんは叫ぶが

俺は止まらない



そのまま男の顔を殴りまくる。


「なにこいつw殺されたいの?w」


正解だよ馬鹿野郎。

こっちは殺されてぇんだ。

次の瞬間、俺はボロ雑巾のようになり地面に転がっていた。


「なっなっなっ!面白かっただろ?しかも何こいつw

めちゃくちゃ弱ぇじゃん?w」


当たり前だ。こちとら【ノーマル】なんだ。


ダメだ、立てない。こんなんじゃ死ぬことすら出来ない。

薄れゆく意識の中で、渾身の力を振り絞り

やっとの思いで立ち上がった。


「ア゛ア゛ッ...」


ヘロヘロのパンチで近くにいた男に殴りかかる。


「フレイム」


「あぁぁああぁぁぁ」


男は俺に火の玉を飛ばしてきた。

火の最弱魔法フレイム。

普通ならこんなんじゃ死にはしない

普通ならな…


「アァヅァァイアッ!!」


熱い熱い熱い。死ぬほど熱い。

焼かれて死ぬのはこんなにも辛いのか。



「やめて!!やめてぐだざい!!何でもしますから!ゴボッ...ごめんなざい、私が悪かったゴボッゴホッ...悪かったです。

だからこの子を助けてぐださい!!ゴホッゴホッ...」


「ギャハハwwちょーおもしれぇwこんなんで死ぬ訳ねぇだろww」


「ジネェヤァァアァヅァ」


俺は焼かれながらも男に殴りかかった。


「何こいつwあっちぃw ファイヤーパンチめっちゃくらうわwww」


「フレイムス」


男の詠唱とともに、複数の火の玉が俺に飛んでくる。



終わった。死ねる。

これでこんな世界とはおさらばだ。

あばよ無理ゲー。ほんとつまんなかったわ…



「クソガッ」


俺の最後の言葉はそれだった。









気がつくと俺は、何も無い真っ白な部屋にいた。

そこに少女がポツンと体育座りしている。


そうか、お前が神か。

流石に俺に罪悪感があったのだろう。

死んだ後に会ってくれる気になったか。


んじゃ遠慮なく。

俺はそう思い、少女を思いっきり蹴り飛ばした。

しかし少女は微動だにしない。

そして顔をあげ、話しかけてきた。


「いいの?」


「いい訳ねぇだろうが!!!お前のせいで、俺は俺はっ。」


少女の顔を思い切りぶん殴ってやった。

しかし少女は微動だにしない。


「ほんとに死んじゃうよ?」


「ふざけるな、元からそのつもりだ」


「あなたが死んでもあの子は助からないよ。そのまま犯される。その後に警察がくる事になる。」


「は?だって俺あいつらと戦って...」


「あなたが稼いだ時間は28秒…」


「は…は…はっ。28秒だと?3分は経ってるだろ」


「28秒。それにまだ死んでない。1分後に死ぬ。」


「なんだよそれ...犬死にじゃねぇか。」


「そう...」


「なんだよ...なんなんだよ...あんまりじゃねぇかよ...」


「あんまり...」


「なぁ神様、殴って悪かった。だからあの子を助けてくれ。俺は死んだっていい。だから、だから。」


「無理...」


「なんでだよ、お願いだよ。助けてくれよ。」


「無理。それに私は神じゃない。」


「じゃあなんなんだよ!!なんで死ぬはずの俺の前にいる!神じゃないなら誰なんだ?」


「魔王...」


「魔王だって?マジかよ。1000年前に殺された、あの魔王か?」


「死んでない。封印されただけ」


「いや魔王は死んだって...んじゃ何か?お前はこんなとこで1000年も...」


「ここじゃない。ここはアナタの精神世界…私は違うとこにいる。」


「その魔王が俺になんの用だよ」


「私の力をあげる…」


「は?そんな事できるのか?」


「できる。あなたは私の子孫。」


「子孫?子孫だって?は?だって俺には何の能力も…」


「時間がない。決めて。」


「えっ何を?」


「助けるか、助けないか。このまま死ぬか、生きて助けるか。」


「えっ、いや俺は…」



「助けたい。だから力をくれ。あいつらをぶっ飛ばして、葵さんを助けるだけの力を。」


「契約…力をあげる変わりに助けて。」


「え?あぁ。分かってるよ。助ける。」



次の瞬間、現実世界に戻っていた。


「アチッアチアチ!」


ってアレ?熱くない。なんともない。

みるみるうちに傷が治っていく。


「なんだテメェ、ヒーラーか?」


そう言うと男は俺に殴りかかってきた。



え?アレ?おっそ。

めちゃくちゃ遅い。なんだコイツ。


俺はそのまま男を殴った。

男はすごい勢いで吹き飛び、そのまま起きてくる事はなかった。


「なんだてめぇ。ぶっ殺されてぇのか!」


遅い。めちゃくちゃスローモーションで俺に殴りかかってくる。

軽く蹴りを入れると、男は吹き飛び

ピクピクして動かなくなった。


「えっと…あれ?」


「ヘルフレイムッ!!」


特大の火の玉が、俺めがけて飛んでくる。

これはやばい、確実に殺す気だ。


「受けて」


頭の中にさっきの魔王の声が響いた。

俺は言われた通りに、火の玉をうける。



あれ?なんともない??


「化け物だっ。こいつ化け物だ。」


そう言うと、残りの男たちは逃げ出した。

勝ったのか?転生者や召喚者やらを5人も相手に

俺は勝ったのか?


それになんなんだ、この力は。



「もうすぐ警察がくる。逃げて。」


え?あ、そうか。俺が緊急用のボタンを押したんだった。

でも葵さんが...


「連れて逃げて。」


俺は言われた通りに葵さんを担いで逃げる事にした。

とりあえず、緊急用のボタンはここに捨てていこう…

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