三角以上

@batuziru-3

【1,うざいアイツ】

《その1》



「まじ、お前ら仲良いよなあ。」

「喧嘩するほど仲がいいって言うし。」

「いつか付き合っちゃったりして~~。」



また、この話題だ。

こいつとそんなことになるなんて絶対ありえないのに。


「もう、んなわけないじゃん!やめてってば~。」


男女の友情は成立しないのだろうか。


なんでこんなにも私の周りにはなんでかんでも恋愛に結びつける人ばかりなの?



「そうだよ。橘となんてありえねーよ。」


「え、それはそれで失礼じゃない?!」


「夫婦漫才かよー。やっぱお前らいじるのおもろいわ。」


ただの友達。

話が合うし。

面白いし。

なんだかんだ一緒にいる。

いつ、どうやって仲良くなったんだっけ。


今、私の隣にいるこの男。

細川大地。



「橘!次体育だぞ。」

「えっ?嘘!女子みんないないじゃん!!」


「何、俺の着替えてるとこ見たいの~??橘って変態だな。」


「ち、ちがっ!!」


急いで更衣室に駆け込む。


「やばい、更衣室にも誰もいないじゃん~。急がなきゃあああ。」


中学一年生、橘香織。


中学って、小学校と全然違うもので。


カルチャーショックレベルに周りについて行けず、私には女友達がいない。


コミュ障の自覚はないんだけど……。



だから、細川大地の存在に陰ながら救われている。



彼とは、帰りの方向が同じでいつの日からかしつこく話しかけてくるようになっていた。


最初は、なんなのこいつ。って思ってたけどね。


私のことちんちくりんとかいじってくるし。

優しさとか微塵も感じなかった。


けど、なんだかんだ今一番仲良くしてるのは紛れもなく細川で。

細川がいなかったら、学校もそんなに楽しくないのかもしれない。


着替えを終えて廊下に出る。


「ま、いなかったらいなかったらでうざいやつがいなくてせいせいするわ!」


「なに、橘俺のこと待ってたの?!」


うそ、心の声漏れてた?!


「いや、ちがっ!!ってか、自分のことうざいやつって自覚あったんだ~??」


いつかこいつをギャフンと言わせてやりたい。


いつも細川にからかわれて、いじられてばっかで。

私は、振り回されっぱなしだ。

そんなのなんかムカつく。



だから、絶対形勢逆転して、言い返せなくなってるところが見たい!


「俺のこと煽ってる余裕と時間なんてないと思うけどね~。」


細川はそうやって走っていってしまう。


「え、ちょっちょと待ってよ!どういうこと~?」



「やっば、あと5秒でチャイムなる!!」


「もうそんな時間?!次誰先生??」


「林だよ!!遅れたらめっちゃ怒られんじゃん!!」


「ひぇえ。グラウンドまで距離あるじゃんか、無理だよ~。」


「とにかく、走れ!ってか、橘遅すぎ。さすが運動音痴だな。」


「走るの無理。絶対怒られる~!」



キーンコーンカーンコーン


「う、ウェストミンスターの鐘……。」


「鳴っちまったな。」


「はあ。細川と話してたせいだ。」


「お前が鈍くさいからだろ。」


「ごめん。ってか、先行けば良かったじゃん。私なんか置いて。」


「赤信号、みんなで渡れば怖くない。だろ?」


「細川!!」


やっぱこいつ良いやつかも!!


「赤信号みんなで渡れば怖くない、か……。みんなはとっくにチャイムが鳴る前に集合してるぞ??」


「げっ…林、先生。」


あ、終わった……。

よりにもよって、こんなところ聞かれるなんて。


「お前ら、内周二周してこい!」


「は、はい!!」


二人の声が重なる。

ま、でも細川がいたから、案外楽しかった。


「赤信号二人で渡れば怖くないって言って遅刻したお二人さんじゃん!!」

「お前ら、度胸ありすぎ。」



授業後、やっぱり噂になっていた。

しかも、みんなが二人になっている。

まあ、私が悪いからなんも言えない……。


ってか、なんか恥ずかしくなってきた。




「おい、橘。帰るぞ。」


「あっ、うん。」


同じ方向のバスということで、いつの間にか一緒に帰るようになっていた。


くだらない話をいつものほうにしながらバス停へ向かう。


「あれ、香織じゃん!」


「おー徹!やっほー。」


「誰?」


「あー。小学校一緒で、影山徹って言うの。」


「俺、影山。よろしく。君は?」


「えっと、細川大地、です…。」


「私と同じクラスの!!」


「あー香織がよく話してるおもろいやつか!」



私は、細川と変えるようになる前この影山徹と登下校を一緒にしていた。

その際、クラスでの話をし、細川のこともよく話していた。



「あ、そういえば。俺、明日ユニフォームとか持ってくから朝送り。」


「了解。明日木曜だもんね、一人で行くわ~。」


今でも徹とは、朝一緒に登校しているのだが、律儀に一緒に行けない日はLINEやら直接やら伝えてくれる。


「じゃ。」

「おー。」



バス待ちの列の最後尾に並ぶ。


「ね、朝あいつと登校してんの?」


「うん。そうだよー。」


「へー……。」


「ん?どうかした?」


「いや、別になんでも。」


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