第17話 妖邪王ダルキュリス


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 しばらく騒然と雑然とした状況が重なったので、落ち着くまでの事態を割愛する。


 まあ整理するとですねつまりだ。グループ分けのショックで受けた精神ダメージが現MPでは処理できず、HPダメージまでもうけました、とさ!


 何かを発表するはずであったようだが事態は意外な解説で幕を卸した。


 何者かが真空呪文で綾目夏恋を狙ったのを、俺が咄嗟の判断で防いだとするものだった。ロドムが傷口の様子と負傷した角度を計算し、夏恋を狙った攻撃を身をもって防いだカゲミツくんすごいということになってしまっている。


 優秀なヒーラーというのはただでさえ貴重なため、それで襲われたのだろうということに。



 いえ! この場に耐えきれず逃げ出そうとした時に、HPダメージが発動したというだけの……あああ恥ずかしい! まじで死んでればよかったんじゃね!



 この世界には便利な薬があるらしく、造血ポーションという薬を飲まされた俺はラナの付き添いで再びこじんまりとした部屋で再度説明を受けることになった。


 担当するのはロドムの部下で、ラナとも面識のある30代前半の騎士クリィーグさんだ。


 その年齢で前頭部の毛根たちが一糸乱れぬ撤退を決めたようで、50歳ほどに見えてしまう。


 でも気さくな話し方で俺を気遣ってくれるので、陰キャと傷ついたMPにやさしいおっさんは担当としては適任だったかもしれない。


「カゲミツくんのことだ、きっとこう考えてるんじゃないかな? なんで召喚者がいきなり増えて、しかもグループ分けって」

「はい」


 まさにその通り。


「実は慈愛と大地の女神ニル・リーサ神殿から女神の神託があってね、同じ時期に勇者神殿の方へ遅れて召喚されたのが彼らだったんだ」


「使徒様がいっぱい!」ラナは勇者騎士団でその存在を疑うことなく使徒に憧れているぽいから素直にうれしいのだろう……


「まあそれでね、女神の神託の内容なんだけど、妖邪王ようじゃおうダルキュリスが復活するという内容なんだ」


 出ました。ファンタジーぽい悪役きました。


 妖邪王か、魔王じゃないんだね。でもラナの表情が固まったことでただならぬ事態であることだけは伝わった。



 ”

 奴は我がリシュメア王国にとっては災禍の象徴、そこでニル・リーサ神殿や勇者神殿、王国が協力態勢をとるになったんだ。


 使徒の召喚が始まったことについては様々な議論があったのだけれど、妖邪王ダルキュリスへ対抗するためだということがはっきりしたからね。


 そこで使徒たちは既にダンジョンで実戦訓練へ入ってもらっている。それとね、言いにくいんだが既にパーティーが決定してしまっていね。


 鶴来君たちのパーティーは君のことを仲間を救ってもらったし、うちに来てくれって本心から言ってくれているんだけど上層部がいたく彼らをお気に入りなんで今回は無しになってしまった。


 えっと、君はしばらくの間はそこのラナと一緒に行動してくれると助かる。


 ”



 そう安請け合いすると思ったかと言いたくなったところで、クリィーグさんはニル・リーサ神殿の霊印付きの書簡を読み上げる。



 ”

 こほん……


 使徒様が暮らしていた前の世界ではスキルやレベルという概念が無いこをは確認しております。


 そこでダルキュリス討伐を成し遂げたならば、金銀財宝の他にあなた方がそれまでに獲得したレベル及びスキルを元世界へ持ち帰ることが了承されました。


 むろん世界に順応しないスキルもあるでしょう。それはスキルポイントの振りなおしによる恩恵が与えられるそうです。


 これは大地母神ニル・リーさの神託により確定事項であります。


 ”



 衝撃だった。下手に出所不明な金銀財宝を持ち帰えるよりも、スキルを再設定できるほうが数千倍の価値があるだろう。


 むろん陰キャなどというスキルを持ち帰ってもくその役にも立たないだろうから、振りなおし万々歳ってところだ。


 この報酬に心動かぬ者など果たしているのだろうか? やり直せるというより勝ち得た力を別方向へ活かせる道が出来たことで、俺は討伐へ参加することを決めた。



 

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