第45話 減った貢献回数

俺達が城門に到着すると大騒ぎだ。

それじゃ、俺達はこれで・・・・・・・・・・・・とは行かなかった。

俺達を家に帰らせてくれ。


『俺達は無実だ』


なんて叫びませんが、門番に止められて冒険ギルドの職員に連行された。

ギルドの奥で尋問が始まった。

重傷者は医務室に置かれたが、アマゾネスのような姐さんと細身の弓士のお姉さんが一緒だ。

尋問者の質問に弓士のお姉さんが答えた。

お姐さんらの冒険者パーティーはエフからアーに昇級したばかりの新鋭であり、今回は特殊な薬草の花を採取に上流に行った。

見つけるのに時間が掛かり、予定より遅くなったので迂回路をショートカットして断崖の崩れた所を降りて来たらしい。


「そこでゴブリンと遭遇しました」

「なるほど」

「もちろん、我々はゴブリン如きに遅れを取る訳もありません」


まず、6匹のゴブリンを倒し、森を突っ切ろうと進むとゴブリンの群れに見つかった。

ゴブリン如きに負けると思っていないお姐さんらの冒険者パーティーはそのゴブリンを殲滅したのだ。

だが、終わったと思った所でゴブリンの増援が加わり、徐々に劣勢になっていった。


「最初に20から30のゴブリンを退治したと思います」

アーなら当然だな」

「ですが、ゴブリンの血が剣にべったり付き、切れ味が悪くなりました。しかし、さらにゴブリンらが集まってきたのです」

「どれくらい倒しましたか?」

「判りません。20から30は倒したと思います。ですが、そこから疲労から少しずつ動きが悪くなりました。まず、私の矢は尽き、魔法使いのアンナの魔力も尽きました。私は剣で、アンナは杖で対抗しましたが、私から陣形が崩れ、それで、それで、そぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わぁあぁぁぁぁ」


お姉さんは泣き崩れた。

その後は盾役だったアマゾネスのような姐さんが答える。

最初に崩れたのは弓士のお姉さんだった。

ゴブリンに取り憑かれた弓士のお姉さんを魔法使いのお姉さんに助けたらしい。

だがしかし、そこに隙が生まれ、魔法使いのお姉さんが背後から殴られて気を失った。

魔法使いがゴブリンらに引き摺られて行く。

弓士のお姉さんは助けて貰ったのに助けられなかった。

そして、戦士が魔法使いを追って陣形が崩れた。


「敵の陣形が整い過ぎていました」

「進化種がいたのかね」

「ゴブリンリーダーがいました」

「なるほど。苦労する訳だ」

「そこで私らは覚悟しました。魔法使いのアンナを助けに行くのは自殺行為です。ですが、重戦士の兄は私らを逃がす為に突撃しました。そして、私らは逃げましたが・・・・・・・・・・・・無駄でした」


鎚矛メイス持ちが退路を作ろうと突撃をした。

だが、すでに後方にも配置されており、鎚矛メイスは勢いを失って取り囲まれてしまった。

アマゾネスのようなお姐さんが弓士のお姉さんを守っていたが、先に鎚矛メイスが潰され、もう駄目だと思ったそうだ。

ゴブリンが被害も恐れず襲い掛かって来たからだ。


「死兵化か。厄介だな」

「ゴブリン如きに負けるとは思っていませんでした」

「そうだろうな」


ゴブリンリーダーというのは厄介な存在らしく。

周辺のゴブリンを自在に操るらしい。

連携が取れる上に、死を恐れない死兵化したゴブリンが襲ってくる。

それは厄介そうだ。


因みに、この世界の魔法使いは肉弾戦が出来る。

杖を鎚矛メイスや槍のように使うか、体術を嗜むようだ。

魔力が少ないので苦肉の策だ。

一方、弓士は戦いが終わると矢を回収する。

矢が尽きる事を想定していない。

最も脆いのは弓士だ。

ゴブリンリーダーはパーティーの最弱な弓士から狙ってきた。

知恵も回るらしい。


魔法使いは戦士の恋人だったようだ。

追い掛けてきた戦士と重戦士は倒し、逃げた三人の再包囲を終えると、ゴブリンリーダーは食事の時間に移った。

魔法使いの悲鳴が響いた。

雑魚のゴブリンらは殺した戦士と重戦士の武具を外して食事となったのだろう。


「傷つきながらも抵抗していた鎚矛メイス持ちのジョンが倒れた時に、このお嬢ちゃんが現れました」

「ほぉ!? このお嬢ちゃんが・・・・・・・・・・・・」

「凄かった。あっという間に10匹以上のゴブリンを葬った。正に電光石火だった」


姉さんの登場でゴブリンリーダーは食事を止めて、戦力を再投入した。

残りが50を切っていて助かった。

しかし、俺が目視してから5匹を倒したが、姉さんは何匹のゴブリンを倒したんだ?


「後続のこの子が来ると、残りのゴブリンらを瞬殺しました。どうやって倒したのかも判りません」

「何をやったのかね?」

「ア~ルの魔法で倒したのよ」

「ま、まほう? あはははぁ、魔法はそれほど便利ではない」

「ア~ルなら100匹くらい一瞬よ」


100匹は無理だ。

朝から魔力を温存すれば出来なくはないが、それでも一度の戦闘で魔力枯渇を起こす。

現実的でない。

姉さんがゴブリンリーダーを倒した主張も、アマゾネスのようなお姐さんの返答も尋問者らは信じていない。

戦士と重戦士が相打ちでゴブリンリーダーを倒し、すでに統制が取れていなかたのではないかとか議論していた。


「混乱していたに違いない?」

「後でもう一度聞きましょう」

「一先ず、ゴブリンが増えた原因の調査ですな」

「すでに倒されたかもしれん」

「それを調べるのだ」


本当にゴブリンリーダーが倒されたかが重要なようだ。

加えて、ちびっ子冒険者パーティーが城外に出ていた事が問題だと議論がすり替わった。

姉さんは猛反発だ。


「ウチのア~ルは凄いのよ!」


姉さんが声を上げるほど尋問者が冷めていった。

俺達の事は保留となった。

調査隊を送ると決まって、俺達はお役御免だ。

ゴブリンリーダーの魔石がない以上はこんなモノだろう。


実際、魔石など取る暇など無かった。

俺の索敵では周辺にゴブリンがまだ居た。

後続が来れば、俺達も全滅だ。

死んだ冒険者も遺物を1つずつしか回収してさせていない。

まだ、姉さんが「ウチのア~ルは凄いのよ!」と叫んでいたが、俺が手を引いて連れ出した。

長居は無用だ。


「はい、薬草二籠分の報酬です」


わぁ、涙が出てくる。

換金のお姉さんが「余程、嬉しかったのね」とか言っているが逆だ。

貢献二回分が一回に減った。

全然、嬉しくない。

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