第44話 冒険者を助けろ

うりゃ、姉さんがゴブリンを一刀両断するともう一匹を倒して中央突破する。

突破と当時に反転してもう一匹を倒す。

あっという間に三匹を仕留めた。

だぁ、だぁ、だぁ、だぁ、ウオォォォォ!

下の兄が棍棒を持つゴブリンに連続攻撃で追い詰めてやっと倒した。

残る一匹も姉さんが倒した。

返り血も浴びていない姉さんに対して、下の兄は青い血が頭から足までベタベタになっている。

下の兄の方が沢山のゴブリンを倒したように思える。


「はい、清浄クリーン


返り血を流すと、薬草の入った籠を背負い直した。

今日で薬草摘みは5回目だ。

出会うのはゴブリンばかりだ。

一角兎ホーンラビットにも遭わない。

嫌な気する。


薬草の採取場所がドンドンと滝に近づいていた。

今日は籠2つが薬草で満タンになったが、後5回も採取できるだろうか?

ちょっと心配だ。

籠の1つは地下の冷蔵庫に入れて明日にでも持って行こう。

俺は狡い事を考えていた。

そういう訳で撤収だ。

来た道を戻り、広場まで戻って来た。

そこで聞こえた。

微かに『いゃあぁぁぁあぁぁぁ!』と言う声が小さく聞こえた。


「ア~ル。ここに居なさい」


姉さんがそう言って声の方に走って行く。

姉さんにそう言われて待つほど薄情ではない。

姉さんが心配だ。

下の兄には待って欲しいが、一人するほうが危険なので声を掛けた。


「シュタ兄ぃ」

「アル。追い掛けるぞ」

「へぇ・・・・・・・・・・・・はい」


下の兄も思った事は同じらしい。

ちょっと男らしく見えた。

だが、自分の実力を勘違いしていないかが心配だ。


早過ぎる。

あっという間に姉さんの後ろ姿が消え、追う事が出来ない。

しかも索敵外に出てしまう。

完全に見失った。


魔弾バレット


追い掛けなから探索で見つけたゴブリンを6匹ほど葬るほうむった。

姉さんがいない。

索敵、索敵、索敵、姉さんはどこだ。


魔弾バレット


どこだぁ?

居たぁ。

姉さんは俺達より大きく右側に逸れていた。


「シュタ兄ぃ。この右です。ゴブリンが40匹以上で囲んでいます」

「40匹も!?」

「シュタ兄ぃは俺の後ろを守って下さい」

「判った」


姉さんの方へ進路を変えた。

森の中は本当に走り難い。

ヤァ、トォ、エイと姉さんの掛け声と共にゴブリンの首が飛んだ。

しかし、多勢に無勢だ。

傷ついた冒険者を庇いながら戦うのは無理があった。

返り血など浴びない姉さんの服が8匹を葬って青い血でべったりだ。

これは俺も出し惜しみ出来そうもない。


魔弾バレット×10」


冒険者達の後方のゴブリンを一掃する。

均等に囲んでいる事が仇となったな。

俺は見える範囲のゴブリンを撲滅すると姉さんの後ろに立った。


「ア~ル。あそこに居なさいと言ったでしょう」

「判りましたと言っていません」

「そうだったわね」

「シュタ兄ぃ。怪我人を見て下さい。一気に片付けます」


もう一度索敵。

残り、28匹。

俺は左右をチラリと見た。


「姉さん。正面をお願いします」

「任せなさい」

魔弾バレット×10。続いて「魔弾バレット」×10」


レールガンと一緒だ。

同じ魔法陣を指定の座標に10個再入力させて魔弾バレットを撃ち出した。

20個の魔法陣を一度に処理はできないが10個ならば余裕だ。

左手を翳して10発を撃ち出すと、今度は右手を翳して10発を撃ち出す。

ゴブリン如きに避けられるような俺の魔弾バレットではない。

この数なら瞬殺だ。


「シュタ兄ぃ。どうですか?」

「この人の血が止まらん」

「代わります」


破傷風はしょうふう菌とか言っていられないな。

消毒している間に大量出血で死亡する。

俺は一気に回復ヒールを重ね掛けして止血した。

回復魔法の力技だ。

俺の指輪では中級魔術の大回復ハイヒールは使えないんだよ。

残る二人の女性冒険者にも回復ヒールを掛けた。


「ア~ル。こっちも終わったわ」

「撤退しましょう。俺ももう魔力が残っていません」

「アン、アンナはどこ?」

「見ない方がいいわよ」


姉さんが止めたが女の冒険者が仲間の最後を見ると言って聞かない。

早く去りたいのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌なモノを見た。

二人の男冒険者だったらしい物の残骸ざんがいが残り、女の冒険者は犯されながら食われている途中だった。

冒険者だったと言うのは二人の原型を止めておらず、防具の存在で二人と判った。

女性は腕や足やはらはたを食われながら犯されていたようだ。

惨いというレベルではいない。

俺の魔力探知に引っかからなかったのはすでに死んでいたからだ。

多くのゴブリンが食う事に集中していたから三人は助かったようだ。

否、食後のデザートとくらいに思われていたのだろう。


うげぇっと下の兄が吐き出していた。

姉さんは怒りに震えている。

俺はどこかで冷めていた。


戦争が無くともこう言う事はあるのだなと思えた。

俺が平気なのは前世の俺が中東でこれより悲惨な惨状を見た経験があったからだ。

あの時も第三者、今回も第三者と思えば、溜飲は下がった。


「遺品を持っても良いですが、防具などは放置します」

「判ったわ」

「急いで下さい。これだけ居たという事はまだいます」

「そ、そうか。急ごう」


俺と姉さんで殿しんがりだ。

血を出し過ぎて歩けない冒険者をガタいの良い女冒険者が背負い。

もう一人の泣き崩れる女冒険者を下の兄が肩を貸した。

少しでも歩き易いようにと強化パブを掛けたが足の歩みは遅い。

これ以上は重ね掛けする魔力の余裕もなかった。


「ア~ル。ゴブリンはまだいると思う」

「索敵魔法の範囲にはいませんが、絶対にいます」

「私もそう思うわ」


ゴブリンは一匹いれば、100匹はいると思えと言われる魔物だ。

50匹いたら、5,000匹か?

そんなに居ないだろうが・・・・・・・・・・・・、これは上位種が誕生して巣を作っていると思えた。


「ア~ル。ヤルわよ」

「何かをですか?」

「ゴブリン退治に決まっているじゃない」


何を聞き返しているの?

そんな言葉が返ってきた。

澄み切った青い目はどこまでも真っ直ぐに女性の冒険者二人の背中を見てブレておらあず、その恨み晴らして上げるわと言っている様だった。

それほど目に力が籠もっていた。

はぁっと俺は息を吐き出した。

困った。

でも、姉さんはもう決めて仕舞っている。

どうしようか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る