第15話 花祭りーどうする?ー
昼食はラフレーズを心配したクエールが呼んだクイーンのお陰で、ずっと泣き続けずに済んだ。今度から自身もラフレーズと昼を食べるとクイーンは言っていたが、有限実行の気があるクイーンのこと、本当に学院で昼を食べそうである。
「クイーン様らしいと言えばらしいわね」
教室に戻ると食堂での出来事を目撃されているからか、多数の視線がラフレーズに集中した。肝が据わってるとクイーンは言ってくれた。単に慣れただけ。
授業開始まで机に座ってぼんやりとした。顔色の消えたヒンメルと彼を心配するメーラが戻ってもラフレーズは動かなかった。
隣から突き刺すような視線を感じても、徹底的に無視を貫いた。
気のせいか「ラフィ…………」ととても小さな声を拾うも、学院にラフレーズを愛称を呼ぶ人はいない。ヒンメルはもっと有り得ない。
今日の授業が終わると同時に王宮からの使者がラフレーズを迎えに来た。聞けばクイーンに遣わされたとのこと。王族だからこそ可能な人使いの荒らさ。
荷物を詰めた鞄を片手に使者と共に行こうとしたのを阻止する人が。
ヒンメルだ。
「王太子殿下……」
使者が戸惑いの声を出す。
「彼女は僕の婚約者だ。何故おじ上が呼び出す」
「り、理由までは聞かされておりませんので」
ヒンメルの発言にギョッとしたのはラフレーズだけではないだろう。昼のやり取りを目撃している生徒の何人かは、呆然としている。
クイーンといるのが気に食わないヒンメルの妨害。精霊の異変について調査している側として、非常に迷惑な話。
「使者様、参りましょう。クイーン様がお待ちなのでしょう」
「……僕とおじ上、どちらが大事だ!」
2度目のギョッとしたくなった瞬間。
婚約者の前でも公の場でもメーラと仲睦まじくするヒンメルは、自分で何を言っているのか気付いているのか。彼の中で先に浮気をした自分より、クイーンと恋人になったラフレーズが悪なのだろう。
「クイーン様です。今の私の最優先はクイーン様以外ありません!」
「っ!!」
きっぱりとヒンメルを拒絶したら、美しい相貌が怒りに歪み、ラフレーズの腕を強引に取った。
その刹那──ラフレーズと使者の視界が反転。
一瞬にして教室から外に出された2人は、何度も瞬きを繰り返した。
お互い顔を見合わせれば「おっせえよ」と声が飛んで来た。2人同時に振り向いた先には、眉間に皺を寄せたクイーンが壁に凭れていた。
これまた同時にクイーンを呼んだ。
「た、助かりましたクイーン様」
「はあ。どうせ、ヒンメルの馬鹿がお前達を足止めしたんだろう。分かりやすくて助かる」
「私は戻りますねクイーン様」
「ご苦労だったな」
使者が去って行くとラフレーズはクイーンの許へ。
「あいつに何か言われたか?」
「いいえ」
話してしまうとクイーンはまた呆れ果てるだろう。ヒンメルの心の内が分からない。ラフレーズを、メーラを、どうしたいのか。
「呼んだのは大した理由じゃないんだ。もうすぐ秋の花祭りがあるだろう?」
年に4回開催される王都の名物祭り。四季によって咲く花が王都に集結され、3日間花に包まれる。恋人や家族で回る人が殆ど。
ラフレーズも毎回ヒンメルと行っているが空気が重く、4回の内1回はシトロンやメルローと行っている。ヒンメルには反対されるが、あんな空気でずっと綺麗な花を眺めたくない。
「ヒンメルと毎回行ってるだろう? 今回もあいつと行くか?」
メーラと恋人になっても婚約者としての義務は最低限果たしてきたヒンメル。この前のお茶をすっぽかされたのが初めて。
幾ばくか悩んだ後、回答を述べようとしたラフレーズは口を閉ざした。
「ラフレーズ……おじ上……」
暗い顔のヒンメルがやって来たから……。
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