彼女1ー3

目覚めた私

どれくらい眠っていたのかな?私は、ゆっくりと目を開けた。目覚めると千秋がいた。


「葵、葵」


暫くして、お医者さんと看護士さんがやってきた。


「磯部さん、わかりますか?」


「はい」 


「よかった!葵」


「もう、大丈夫ですよ」


「ありがとうございました」


千秋は、深々と頭を下げていた。


「本当によかったよ!葵」


「千秋、千秋」


千秋の頬に触れる。


「もう…」


私は、千秋のネクタイを直して耳たぶを撫でていた。


「ごめんね」


「別にいいんだけどね」


「もう、目が覚めないかと思っていた」


「どれぐらい寝てた?」


「3ヶ月だよ」


「そんなに?」


「酷く、頭をぶつけてたみたいでね!でも、よかったよ!目が覚めて」


「ありがとう、私も千秋にまた会えて嬉しい」


「俺もだよ!葵」


千秋は、ボロボロと泣き出してしまう。


「泣かないでよ」


「だって、嬉しくて」


「大丈夫だよ!千秋」


「もう、いなくならないでよ!葵」


「わかってる」


千秋は、私をギュッーと抱き締めてくれる。私も千秋をギュッーと抱き締める。腰のズボンの線をなぞる。


「その癖、かわらないよね」


「かわるわけないじゃん」


「そうだよね!」


千秋は、ニコニコ笑いながら頭を優しく撫でてくれる。


「後、1ヶ月は入院だって!早く葵と暮らしたいよ」


「歩く練習してから退院だって!筋肉落ちちゃったから」


「そうだよな!でも、俺はまた葵と暮らせると思ったら凄く嬉しいから…。だから、退院するまで待つから」


「千秋、そんな事言ってまた泣いてるから」


「ごめん、何か最近葵が違う所に行った気がして!悲しかったんだよ」


「行くわけないでしょ?変な夢見てたんじゃない?」


「そうだよな!そうかも知れないな」


千秋は、そう言いながらずっと泣いていた。確かに、私もそんな夢を見ていた気がするけど…。夢は、夢じゃない。


「俺、母さんに言ってくるよ!葵のお母さんも、心配だけどお父さんの介護でこれないって言ってたから連絡してくる」


「うん、お願いね」


「わかった」


千秋は、そう言っていなくなった。千秋がいなくなって、看護士さんがやってきた。


「磯部さん」


「はい」


「明日、朝一番に一般病棟にうつれますからね」


「本当ですか?」


「はい!ご主人から、人数が少ない方がいいと聞きました。ちょうど2人部屋が空きましたので、そちらにうつりますね」


「はい、わかりました」


「では、明日」


「はい」


看護士さんは、いなくなった。私は、手や顔を触っていた。不思議な感覚だった。別の誰かだったみたいな感覚だった。そんな事ないのに…。

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