優しいあなた

「葵」


裸で寝転がる私の家のドアが開いた。パタンと扉を閉めて千秋は私に近づいた。


「やめて、汚い」


「大丈夫だから、葵」


千秋は、裸の私を起こして抱き締めてくれる。


「抱いて」


「ここで?」


「鍵閉めて、チェーンしたらバレない」


「駄目だよ!葵」


「お願い、千秋」


浅はかな私の考え方。


千秋は、鍵とチェーンをしてくれる。


「千秋」


「葵、警察に相談するべきだよ」


「駄目よ、子供達がいるの」


「でも、こんなに傷ついて」


千秋は、私を引き寄せて抱き締めてくれる。


「千秋、キスして」


私は、千秋に優しいキスをしてもらった。


「やっぱり帰って!あいつが、帰ってきたら困るから」


千秋は、そんな言葉を聞かずに私を引き寄せる。


「葵の為に、見つかって殺されるなら本望だから」


そう言って、さらに優しいキスをしてきた。そして、あいつに抱かれた上書きをした。


「汚かったのに」


「大丈夫」


「千秋、愛してる」


「俺もだよ、葵」


千秋は、私を力強く抱き締めてくれた。


「もう、帰って!千秋には、生きてて欲しいから」


私は、服を着る。

千秋は、私の手に四万を握りしめさせる。


「何?」


「離婚できるかもしれないだろ?協力するから!隠しときな」


そう言って千秋は、泣いてくれてる。


「ありがとう、千秋」


「じゃあ、帰るね」


千秋は、項垂れながら出て行った。私は、財布に小さく折り畳んで四万をいれた。千秋がいなくなって、15分後にあいつは帰宅してきた。


「ママ、おかえり」


「ただいま」


「ママ、焼き肉食べに行こうか」


「うん」


恭介を渡される。


「じゃあ、行くぞ」


100万が入って機嫌がいいらしい!家から、出ていく。

私は、千秋との事がバレないならそれでいい。

それだけで、充分だった。


「焼き肉、焼き肉」


5歳児らしく、はしゃぐ雪那を見つめていた。よかった!こんな風になれて…。

近所にある焼き肉食べ放題にやってきた。


恭介君の為に椅子を借りた。今日は、よく眠っている。私は焼き肉を食べながら、千秋の事を考える。千秋は、今頃、私の肉体からだの所に行ったのだろうか?

千秋との日々に、戻れるなら戻りたい。千秋と過ごした家に帰りたい。


赤ちゃんより大事なのは、千秋と生きてく事だって…。そんな簡単な問題さえ私は解けなかったのだ。でも、子供達を置いてなどいけない。


「葵、食べないのか?」


「食べてるよ」


「美味しいか?」


「うん、凄く」


美味しいのは、子供を売ったお金で食べてるわけじゃないから…。これは、私が独身時代に貯めた貯金の残りだから…。だから、美味しい。


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