第19話 奴隷商の息子の相違
奴隷法が完全に実施される前日。
お父さんとアデンさんが見守る中、僕の前にシュルト奴隷商会で今まで頑張ってくれた奴隷達を全員集めた。
「みんな。今日は集まってくれてありがとう」
僕の言葉に奴隷達が頷いて応えてくれる。
実は集めた理由については誰にも話していないのだ。
「今日はみんなに渡したいモノがあって集まって貰ったよ」
「渡したいモノですか?」
「うん。ヴァレオ達初期メンバーが頑張ってくれたおかげで、シュルト奴隷商会は大きくなれたよ。今では元の数倍にも及ぶ奴隷達がいてくれるからね」
「は、はい……」
「さらに今回奴隷法の発案者として、そして奴隷達を重点的に買収した奴隷商会として国から奨励金を貰う事になったんだ」
「お、おめでとうございます」
奴隷法が発表されれば、最大派閥が撤退して多くの奴隷商があぶれる形になると、アデンさんは予想していたそうだ。
それがものの見事に的中して、アデンさんが宰相を降りて真っ先に僕に会いに来たのもその件があっての事でもある。
まぁ、本人曰く、純粋に僕に会いたかったのもあるみたい。
と、王国としても、これからの奴隷達には活躍して欲しい願いを込めて、あぶれた奴隷商からの瀕死状態の奴隷達を購入した際、奨励金を頂く流れになった。
僕が購入した多くの瀕死状態の奴隷達は、シュルト奴隷商会が払ったのではなく、王国が払ってる事になる。
まぁ、問題は購入よりもその先なので、王国としては痛くもかゆくもないみたい。
ある意味腫れ物を押し付けてるんだから、アデンさんを通して謝罪までされた。
「それで奨励金の使い方をお父さんと色々相談したの」
「…………」
「そこで、ここまで頑張ってくれた初期メンバーに分配する事を決めました~!」
…………。
あれ?
なんで誰も喜ばないんだ?
「え、えっと~。みんな! 借金を返し終えたから、もう奴隷じゃなくなったよ!」
要は、これが言いたかった。
奨励金をちょうどみんなに分配すると、みんなの借金を払える形になる。
というか、既に何人かは自分で自分の借金を返せるくらい貯まってるはずなんだけど、未だ払いに来ないのよね。
「あ、アベル様!」
「うん?」
「お、俺達に何か不備でもございましたでしょうか!?」
「え!? そんな事あるわけないでしょう!」
「アベル様! どうか許してください!」
「ええええ!? 何を許すの!?」
「俺達はシュルト奴隷商会に借金があります! 奴隷です!」
「知ってるよ! だから奨励金をみんなに分配すると、みんなの借金はなくなるから、これから奴隷じゃなくな――――」
「許してください! 借金します!」
「ええええ!? もう奴隷じゃないってば!」
「お、お願いします! 借金します! お金ありません! ですからこのまま奴隷でいさせてください!」
「ヴァレオ!? 待って待って! みんなも! 土下座しないで! なんでみんな泣いてるの! エリンちゃんまで!?」
何故かヴァレオ始め、全ての奴隷達がその場で土下座して涙を流している。
それが嬉し涙だったら良かったんだけど、どうやらそんな感じには見えない。
「そ、そうだ! アベル様!」
「う、うん!」
「我々には元々借金がありますよね!」
「そ、そうだね」
「では、借金には
利息!?
ま、まぁ借金だから利息くらい付くか。
「それはそうだね。ごめんね。利息取り過――――」
「利息の分を払います! もう何年も返してないのでとんでもない額になっていると思います! 2倍……いや10倍くらいにはなるはずです!」
「そんな訳あるかああああ!」
「あります!」
「「「「そうだ! そうだ! あります! あります!」」」」
「ええええ!? み、みんな! 落ち着いて? 奴隷から
「いいえ! アベル様の奴隷から
一体ヴァレオ達は何を言っているんだ!?
その時、奥から一人の女性が前に一歩でてきた。
「みなさん」
「お母さん!?」
「「「「!?」」」」
「初めまして。私はアベルの母。レオナと申します」
母さんの急な登場により、僕と奴隷達だけでなく、父さんまでもがものすごく驚いて、驚きすぎてソファから転げ落ちた。
そもそも母さんが
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