第8話 ネコになってみたいニャン大作戦!(3)

「赤鬼は大丈夫か?」


 岩山の頂上で一息付いたパープル将軍は、赤鬼の戦況を見つめる。


「人の心配より、自分の心配した方が良いニャ」

「誰だ?」


 将軍が振り返ると、そこにレッドが立っていた。


「おとニャしく掴まるニャン。もう逃げられニャいぞ」


 レッドは注意深く身構えながら将軍に近付く。


「お前一人なら、容易い相手だ」


 パープル将軍は両手を前に出す。


「『見えない女王の鎖(チェーンオブクイーン)』」

「うっ……」


 将軍が叫ぶと同時に、レッドは身動きが取れなくなる。


「ニャ、ニャにをしたんニャ……」

「レッド、お前は女王の鎖で縛られたのだ」


 懸命に体を動かそうともがくレッド。



 一方イエローと赤鬼執事の対決の決着が見えてきた。


「ニャワワー!!」


 イエローが赤鬼執事の股から腕を入れて肩に持ち上げる。


「伊達に毎日ニャントレしてニャいぜ!」

「グワッ!」


 イエローが赤鬼を地面に投げ飛ばし、馬乗りになる。


「とどめニャン!」

「ちょっと待ちな!」


 イエローが上からパンチを打ち下ろそうとした時、別の場所から声が掛かる。


「ハ、ハヤテ……」


 イエローが声の方を見上げると、ゴリラサークルの岩山の上に立つパープル将軍の横で、レッドが苦し気な表情で宙に浮いている。


「ハヤテさん!」


 他のメンバーもパープル将軍とレッドに気付く。


「サイコレンジャーはその場を離れろ! レッドがどうなっても良いのか」


 パープル将軍が叫ぶ。レッドは空中高くに金縛り状態で浮かされている。術が解かれた途端、墜落して地面に叩きつけられるだろう。


 サイコレンジャーのメンバーは目で頷き合い、その場からゆっくりと後ずさる。


「赤鬼! 今日のところは引き上げだ!」

「はい!」


 パープル将軍の指示で、赤鬼以下戦闘員達も去って行く。


「じゃあね、可愛い猫さん達……」


 パープル将軍はウインクしてレッドにそう呟くと、そのまま『見えない女王の鎖(チェーンオブクイーン)』を解除して去って行く。その途端レッドは十メートル下の地面へと墜落してしまった。



「パープル将軍は金縛りの能力を持っているんですね」


 死神執事はアジトの執務室で、デスクに座るホワイト将軍から、パープル対サイコレンジャーの戦いを実況して貰っていた。


「全然大した能力じゃニャイわ」

「どうして猫語なんですか」

「千里眼で見てたらうつったニャン。結構癖になるニャ」

「ホントにあなたって人は……」


 死神執事は少し呆れながらも、無邪気な彼女を優しい目で見ている。


「でも、これでやつらの能力も分かりましたし、大きな収穫です」

「味方の能力が分かったからって、何か役に立つの?」


 ホワイト将軍は不思議そうな顔で尋ねる。


「それは将軍が気に掛ける必要はございません。全て私にお任せを」

「死神がそう言うのなら、もう聞かない。私はお前を百パーセント信じているからな」

「ありがたき幸せです」


 死神執事は笑顔で頭を下げた。

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