第8話 ネコになってみたいニャン大作戦!(2)

「今日の閃きは……」


 現場に向かうヘリコプターの中で、ブルーは第六感の閃きをみんなに告げようとして言葉に詰まる。


「どうしたんニャ?」

「いや、ニャンでもニャい」

「だったら言いニャさいよ」


 ブラックに責められ、ブルーは仕方なく口を開く。


「猫派が勝つニャ」

「ニャーニャニャニャ! 大地の第六感も猫派が勝つって認めてるニャ!」


 ブラックはブルーの第六感を聞き、お腹を抱えて笑う。


「黙るニャン! 猫派ニャンて世間に迎合してるだけニャン!」

「ニャによ! ニャるって言うニャ! フー!」


 二人は毛を逆立て、背中を突きあげて威嚇しあう。


(絶対に犬派を見つけてやるニャン)


 ブルーは心の中で誓った。



 今回、怪人は動物園に現れたようだ。メンバー達はその入り口に降り立った。


「若葉君、怪人の居場所は分かるか?」

「ハヤテニャン!」

「あっ、ゴメンですニャン」


 ピンクに叱られたレッドが、手を招き猫のようにして謝る。


「スキャンニャイ!」


 ブラックが動物園の園内を透視して、怪人を探す。


「居た! 怪人一人と戦闘員が多数ニャ。あと……」

「あと?」

「露出狂の紫色の女がいるニャン」

「露出狂?!」


 みんな声を上げて驚く。


「あっ、ヤバいニャン! やつらがトラの檻に近付いているニャン! 檻を開けようとしているかもニャン」

「ニャンだと! 急ごうニャン!」


 レッドを先頭に、みんなは猛獣ゾーンに向かった。



 戦闘スーツに身を包んだ赤鬼執事が、戦闘員を引きつれてトラの檻に近付いていた。その後ろには、露出多めの戦闘服を着たパープル将軍が居る。


「動物園の猛獣を解き放ってパニックを起こすのよ。ワルダ―ポイントザックザクだわ」


 パープル将軍は楽しそうに赤鬼執事に話しながら、トラの檻に近付く。


「待つニャン! 世間を騒がすワルダ―一味! 貴様らの好きにはさせニャい!」

「だ、誰だ!」


 赤鬼執事が声の主を探してキョロキョロする。


「この世に悪がのさばる限り、俺の赤い肉球がうずきだすニャン。俺が居る限り、お前らの好きにはさせニャい! 光速の赤い猫、ニャイコレンジャーレッド!」


 まずはレッドがライオンの檻の上で、招き猫のポーズで叫ぶ。


「汚ニャい心の悪だくみ。ニャンコの前では隠せニャい。あなた達の計画は全て私が叩き潰しますニャン! さとりのピンクキャット、ニャイコレンジャーピンク!」


 ピンクはヒョウの檻の上で、挑発する雌猫のポーズで叫んだ。


「固い意思と硬い肉体と可愛い猫耳。遮る悪は引っ搔いて進むニャン。誰にもニャンコの邪魔はさせニャい。戦う黄色の硬い猫、ニャイコレンジャーイエロー!」


 イエローがゴリラのサークルの前で、両腕を持ち上げたポーズで叫ぶ。


「純粋ニャ黒は正義の証。ニャンコの漆黒の瞳には全てが見える。お前らの濁った黒は目障りニャ! スキャンニャイの可憐な子猫、ニャイコレンジャーブラック!」


 ブラックはジャッカルの檻の上で、両手の肉球を上に掲げて叫ぶ。


 ブルーだけお約束で、また上る檻が見つからずに、オロオロする。


(こうなりゃ自棄だ)


 ブルーは敵の真ん前に立ち塞がった。


「犬好きニャのに猫の格好をさせられる気持ちがお前ニャには分かるニャい! それでもニャンは第六感で戦うニャン! 勘が良いだけの猫、ニャイコレンジャーブルー!」


 ブルーは敵の目の前で、両手を広げて叫んだ。


「とう!」


 メンバー全員が猫のような身軽さで、ひらりと敵の前に着地する。


「おのれサイコレンジャー! そんな着ぐるみみたいなふざけた戦闘服で来やがって! 恥ずかしいとは思わないの……」

「それを言うニャー!」


 みんな素に戻ることを恐れて、赤鬼執事の言葉を遮るように叫ぶ。


「戦闘員のみなさん! サイコレンジャーをやっつけてください!」


 赤鬼執事が腕を振り、戦闘員たちがサイコレンジャーに襲い掛かる。


「みんニャ! 迎え撃つニャン!」

「ニャン!」


 レッドの号令で、メンバー達が赤鬼執事と戦闘員を迎え撃つ。ワルダ―一味と猫のコスプレしたサイコレンジャー達の熱い戦いが始まる。


 ブルーは一人、戦闘員達をスルーして、ワルダ―の大将格と思われるパープル将軍の前に進み出た。


「ニャアニャア、露出狂の変態お姉さん」

「誰が露出狂で、変態だ! どうみてもお前らの方が変態に近いだろ!」


 パープル将軍はブルーの言葉に激怒する。


「う……まあそれは置いといて、お姉さんは猫派か犬派かどちらニャんですか?」

「えっ?……そ、そりゃあ当然猫派でしょ。だってさあ、撫でると喉をゴロゴロ鳴らして気持ち良さそうに目を細めるなんて、最高に可愛いじゃない。あと家に帰ったら足元にすり寄って来たりしてさ、疲れも一瞬で吹っ飛んで癒されるわ」


 パープル将軍は敵からの意外な質問に一瞬戸惑うが、すぐに目尻を下げて猫愛を語りだす。


「ニャ? 言った通りニャン。もう世間は猫派が掌握してるニャン。大地も諦めて猫派に改宗するニャン」


 ブラックが後ろにやって来て、嬉しそうにブルーの肩に肉球の手を置く。


「じゃあさ、じゃあ、キノコの山とタケノコの里だったらどっちが好きニャの?」


 犬派が逆転不可能なので、せめてもとブルーはパープル将軍に質問する。


「それはタケノコの里。比べるまでも無いじゃない」


 パープル将軍はさも当然のように、アッサリ答えた


「ニャンでだよー」

「ニャニャニャニャニャー! 大地はいつも負けてばっかりだニャン!」


 悔しそうなブルーを見て、ブラックが嬉しそうにお腹を抱えて転げまわる。


「うーニャニャニャニャニャー!」


 ブルーとブラックは、また肉球で猫パンチの応酬を始めた。


「将軍! 大丈夫ですか?」


 赤鬼執事がパープル将軍を心配して駆け寄って来る。


「お前の相手は俺ニャン!」


 その時、イエローが赤鬼執事の前に立ち塞がり、がっぷり四つに組み合った。大柄の二人はプロレスラーの戦いのような大迫力があった。


「赤鬼! 戦闘員達がどんどんやられてるよ!」


 パープル将軍が戦況を見て慌てる。さぼっていたブルーとブラックを尻目に、レッドとピンクが戦闘員を相手に大活躍していた。


「将軍、こいつらは私が引き止めます! 一旦引いてださい!」


 イエローと組み合っている赤鬼執事が叫ぶ。


「任せたよ!」

「あっ!」


 仲間割れしているブルーとブラックが気付いた時には、パープル将軍は素早い動きで逃げ出し、飛び跳ねるようにして、アッと言う間にゴリラが飼育されているサークルの岩山の頂上に移動した。

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