第三章・剃毛怪人VS脱毛怪人
第6話・「再改造? 強化改造? なに人の体勝手にいじくっているんですか!」
休校日の朝──阪名 華奈は自分の部屋のベットの上で、奇妙な開放の違和感と人の気配で目覚めた。
華奈のベットの傍らに、頭に波の飾りがついたヒーローマスクをかぶり。
青いヒーロースーツを着た男が、白衣コートを着て立っていた。
「チ・バマン? あたしの部屋で何をしているんですか? どうやって、あたしの部屋に? そもそも家の玄関ドアには鍵が掛けられていたはずなのに?」
「チッ、思っていたより早く麻酔から覚めたな……スペアキーを作って家に入った」
「犯罪者! 勝手に人の家に……ん?」
華奈は薄い布団の中で自分の体を触って、違和感の正体に気づく。
華奈は布団の中で服を脱がされて全裸で寝ていた。
「あ、あたしの体に、何をしたんですか!」
上体を起こして裸体を、布団で包み隠す華奈。
チ・バマンは華奈の家の冷蔵庫から、勝手に持ち出した落花生サイダーを飲みながら言った。
「ちょっとした、強化再改造をな……気にするな」
プルプルと体を震わす阪名 華奈。
「再改造って……また、あたしの体を
「人聞きの悪いことを言うな、フォームチェンジだよ──この世界と繋がっているキャラの力の他にモノとか生物の力も融合して使えるようにした……本当はバッタと機関車の力を融合したかったのだが、上手くいかなくてな……『変態』と言ってみろ」
「変態?」
華奈の体が、その言葉に反応して変身する。
その姿にベットの上に立った華奈は、赤面する。
「な、なんですか! この姿、前より恥ずかしい姿になっているじゃないですか!」
「強化フォームだよ、これからはその姿で、変態怪人と闘うんだ……ほら、これは生れ変ったサカナカナへのプレゼントの丈が長い黒い革のロングコートだ、これを着て自転車で怪人の出現した場所に……ん?」
チ・バマンの頭の波トサカが動いて、怪人の出現を知らせる。
「グッドタイミング、華奈新しい力を試す時だ! 裸体等身ヒロイン『サカナカナ』ライダー出動……」
チ・バマンの言葉が終わる前に華奈が出動を全面拒否する。
「イヤです、誰がこんな恥ずかしい姿を人前に晒して……」
今度は華奈の言葉が終わる前に、チ・バマンが小さな器具のボタンを押す。
華奈の脳内に埋め込まれた、一時的な催眠音波発生装置が作動して華奈の瞳が、強制出動モード色に変わる。
変身ポーズをしながら、チ・バマンに操られている華奈が、アホ毛を揺らして言った。
「ハダカじゃないんです……こういう模様なんです、トウゥゥゥ!」
部屋の窓を突き破って玄関へ飛び降りた華奈は、チ・バマンが改造したイケメンアニメキャラの痛自転車『オオアラシ号』を足こぎして変態怪人出現現場に向かった。
黒い革のロングコートの裾を風になびかせて。
◇◇◇◇◇◇
三区の堺にある廃工場──そこに、全身黒タイツに赤いグルグル渦巻き模様が入った黒い覆面をかぶり……胸に『ザコ男子』と白地で書かれたヴィラン・ヴィラン学園の男子生徒戦闘員を従えた。
変態女子高校生怪人二名が、向かい合って睨み合っていた。
一人は、肘から手首までの前腕にカマキリのカマと大型のT字カミソリが付いた高校生怪人『
もう一人は、背中に短いトゲを生やして股間に前張りを貼った『
剃毛カマキリが言った。
「この区は、うちらのテリトリーだカマァ……だから入り込んできた獲物は、うちらの獲物だカマァ」
「ヒューイ、ヒューイ」
脱毛ハリネズミも、負けじと言い返す。
「廃工場に忍び込んできたバカップルが最初にイチャイチャをはじめたのは、あたしのテリトリーだ。獲物は渡さないハリィ」
「ヒューイ、ヒューイ」
一歩も譲らないカマキリとハリネズミ。
三区の区境が交差する廃工場の、怪人が不在の空白区域に後ろ手に縛られた男女の高校生カップルがいて。
変態怪人たちのやり取りに恐怖の表情を浮かべていた。
剃毛カマキリと脱毛ハリネズミが、廃工場でイチャイチャしていたバカップルに近づいて言った。
「やっぱり、剃毛よねぇ……下の毛と脇の毛をカミソリでジョリジョリと……あなたちも、それを望んで廃工場に来たカマァ」
「違うわよねぇ……脱毛されるために、ここに来たハリィ。脱毛テープを貼られて、一気にバリッと剥がされる快感……そうだろうハリィ」
「剃毛カマァ」
「脱毛ハリィ」
「剃毛」
「脱毛」
変態怪人が同時に言った。
「どっちを選ぶんだぁ」
カップルが涙声で言った。
「どっちもイヤです」
ブチッッ! バカップルの言葉にキレる二体の怪人。
「それなら、男の方を剃毛カマァ」
「女の方を脱毛ハリィ」
悲鳴を発するバカップル。
「ヒ──ッ! 誰か助けてください!」
「こんな廃工場に都合よくヒーローが現れるはずが……ん? あの自転車のベル音はなんだカマァ?」
廃工場内に華奈が乗った、痛自転車が土煙を上げて侵入してきた。
オオアラシ号から、降りた華奈は、しゃがみこんで股間を押さえる。
「サドルからの振動が、大切な部分を直撃して……うっ、変態が出現するたびに、毎回この振動に耐えるの? あたし?」
オオアラシ号の走行時に華奈が被っていたサイクリングヘルメットは、小さく変型して華奈の髪飾りに変わった。
脱毛怪人が、華奈の姿を見て呟く。
「変態女だハリィ」
華奈が怪人に向かって言った。
「あたしのどこが、変態なのよ! 変態怪人に言われたくない」
「その姿は、どこからどう見ても変態カマァ」
現在の華奈の姿は、体に密着した肌色のスキン強化スーツ。
胸部と腹部のクリアーパーツのプロテクターからは、スキンスーツを通して乳首とヘソらしきモノが薄っすらと見える。
股間は極細金属片の▽型の保護パーツで守られていて、金属パーツからお尻の谷間に続く細いパーツは、尾骨の辺りで短いY型になっていて前面股間保護パーツが、気休め程度に外れない構造になっている。
風で少しコートの裾がめくれた、背後から見えた華奈のヒップの山は完全に丸出しで。
腰には変身ベルト、手足には手袋とブーツ、赤いマフラーを首に巻いて革のロングコートを着た。
華奈の姿は、ほぼ変態だった。
「ハダカじゃないんです! こういう模様なんです」
「ウソつけぇ、おまえが学園の掲示版に貼ってあった、変態露出のサカナカナかカマァ」
「サカナカナは、ヴィラン・ヴィラン学園の敵ハリィ! 戦闘員バトルモードだハリィ」
「ヒューイ、ヒューイ」
華奈を取り囲む、ザコ戦闘員。おなじみのシーンがはじまる。
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