第八話 初めての敵US1

「きゃあ」

 太陽の西に大きく傾いた頃、人通りの少ない路地裏に、か弱い少女の悲鳴が響いた。

「へへ、標的ターゲット発見。お嬢さん、そろそろ暗くなるよ。夜は危ないから俺がお家まで送ってあげるね」

 男が強引に少女の手を掴む。

 少女は抵抗を試みるが男の力に勝てるはずもなく、ずるずると引っ張られてしまう。

 そして、男の手が少女のあらぬところへ伸びていく。

「やめてください!」

「なんでそんなに嫌がるんだよ。ほら、見ろ」

 そう言って、男が懐中ふところから取り出したのは、狩人免許ハンターライセンスだった。

狩人ハンターの俺が、君を安全にお家まで送ってあげるって言ってるんだ。何をそんなに嫌がることがあるんだよ?」

「……お父さん、お兄ちゃん、助けて……」

 抵抗ができない彼女にはもう、祈ることしかできなかった。


「まちなさい!」

 女性を無理やり連れ込もうとする男の前にヒイロお姉ちゃんが飛び出し、立ち塞がった。

 僕もそれに続く。

「嫌がってる女の子に、なんて酷いことするの。私、絶対許さないから」

「誘拐の現行犯で確保するよ」

 狩人免許を男に突きつける。

「はあ? 俺はこの子をお家まで送り届けようとしただけで……」

「ほんとにそうなの?」

 お姉ちゃんが少女に訊く。

 男の影で、少女はぶんぶんと、力一杯首を横に振った。

「……、大人しく女の子を放しなさい」

 それを聞いた男は、あーあ、とでも言いたげに後頭部をがりがりと掻き、

「ちっ、ほら」

 どん、と左手で少女を突き飛ばした。

「うっ——!」

 少女は建物で背中を強く打ち、その場に倒れ込んだ。

 酷い……。

「——っ!」

 ヒイロお姉ちゃんの目の色が変わる。

「なあ、俺も狩人なんだよ。見逃してくれないか?」

「そんなことするわけないでしょ。あなたみたいな狩人なんて、存在しちゃダメだよ」

「ちげぇよ」

 と、男が一歩前に出て、肩に手を掛ける。

「……」

「見逃した方がてめぇらのためだって言ったんだよ」

 そう言って、直剣を引き抜いた。


——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈?〉……?

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。

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