第二話 陽暮・ヒイロ登場1

USユニークスキル〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉


 狩人免許ハンターライセンスを眺めながら、ギルド内をとぼとぼと歩いていく。

 AGLに振れば、そこまで使えないUSでもないけれど、微妙かな。

 何にせよこのUSではまずは仲間集めから始めないといけない。


 パーティーメンバー募集掲示板。

 ここに貼り付ければいいのかな。

「ん?」

 と、用紙を貼ろうとした時、隣で背伸びをしていた女の人が僕を見て声を発した。

 黒色の袴に、紅色の小袖姿。

 滑り落ちるような黒い長髪は、後ろでひとつにまとめられている。

 そして、右腰には巨大な太刀が吊るされていた。

「君もパーティーメンバーを探してるの?」

「え、そうです……」

「ほんとー! ちょうど私も探してたところなの! ねね、一度、私とパーティー組んでみない?」

 まさに和服のヤマトナデシコのような姿をしていたから、もっと凛々しい感じかと思っていたけど、ずいぶんと気さくな話し方だった。

 ぱん、と胸の前で両手を合わせて訊いてくる。

 こんなに簡単にパーティーの誘いが来るなんて……。

 しかも、綺麗なお姉さんから。

 ここを逃せばこんなチャンスは二度とないかも。

「僕なんかでよければ……」

「わーい! ありがとう。私、ヒイロ。よろしくね」

「僕、ランっていいます」

 と、袴姿のお姉さんは、む、と眉根を寄せ、

「こら。敬語はダメだぞ。これからいっしょに依頼に行くんだから敬語は禁止ね、わかった?」

 腰に手を置いて、そう言ってきた。

 はい。

 じゃなくて……。

「うん……」

「あはは。よくできました」

 なでなで。

 僕、子ども扱いされてる……?


「とりあえず、簡単な依頼をやってみよっか。どれがいい?」

 ヒイロお姉さんは依頼ボードの紙をぱらぱらとめくる。

「一番簡単な討伐依頼がいい、な……?」

「そっかー。ランくん、今日が初めてなんだよね」

「うん。ヒイロさんは、もう長いの?」

「まだ数ヶ月だけど、私は何度かひとりで達成してるよ」

 すごいなぁ。

 こんな大きな太刀で、魔物とか悪い人をばっさばっさと倒してるんだろうな。

「あ、そういえば、ランくん、対人狩人希望じゃない? 勝手にメジャーな対魔物狩人かと思ってたけど」

 対人狩人とは、指名手配されている賞金首や現行犯、不法狩人など人間を相手にする狩人のことで、反対に対魔物狩人は、依頼されている魔物を討伐する人たちのことをいう。

「僕は人の役に立ちたくて狩人になったから、どっちでもいいんだけど……。ヒイロさんは?」

「どっちかといえば、対魔物の方が多いかなー。あ」

 急に手を止めて、僕の方を見る。

「ど、どうしたの?」

「そのヒイロさんっていうのも禁止。私のことはお姉ちゃんか、ヒイロお姉ちゃんって呼んで!」

 ぐいっと僕の肩を掴んだ。

 鼻息が荒い……。

「なんで……?」

「私、お姉ちゃんってものに憧れてたの。ずっと弟が欲しいと思ってたんだよね。ね、いいでしょ?」

 僕を弟にしたいってこと……?

 あ、まさか僕を誘ったのって。

「……お姉ちゃん、今いくつ?」

「二十三」

「……もし、部屋に連れ込んだらすぐ捕まえるからね」

 ここに標的ターゲットをひとり確保、と。


「ランくん、行ける?」

「あ、待って。最後に確認。えと、薬草と地図と……」

「そんなの私が全部持ってるよ。よし、レッツゴー!」

 というわけで、初討伐依頼はこのちょっと変なお姉さんと行くことになりました。


【ヒイロがパーティーに加わった】


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ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉


ヒイロ  US〈?〉

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