第7話 膝枕

 その時、俺は背後から何者かに飛びつかれた。

結論から言うと、それは冬だった。

まあ知ってたけどね!


「冬どしたー?甘えたくなっちゃったかー?可愛いやつめー」


俺は揶揄うつもりで言った。

その後冬が思ってもみなかったことを言った。


「そうだよ。私も偶には透に甘えたいもん」


こいつやけに素直だな。

ていうか、「もん」ってなんだよ。

めちゃくちゃ可愛いやん。


「そうかー。甘えたくなっちゃたのかー」


  透はデレッデレになった。


「しょうがないなー。特別だぞ?」

「ほら、前においで。撫でてやるから」


  透は冬華を甘やかそうとする。

  しかし、それを冬華は断る。


「やだ。膝枕がいい」

  

  いや、更に注文をした。


「え?俺に膝枕されてうれしいか?」

「ふとももは別に柔らかくないぞ?」

「いいのー。膝枕しながら頭撫でてほしいの!」

「おねがい」


たくぅしょうがないな。

冬が頼んでいるんだもんな。


「よっし。じゃあソファに移動しよっか。膝枕するから」

「うん、ありがと」


「はやくはやくっ」と冬が急かしてくる。

「はいはい」


俺がソファに座るとすぐに冬が俺の太ももに頭を乗せてきた。

俺はその頭を撫でた。


冬は「んふぅ」と言っている。

可愛いなぁおい!

こんな可愛い冬を前にしたら俺の手は止まらなくなってしまう。


「幸せー」と冬が言う。


抱きしめたいと思いながらも、俺はその思いを胸にしまい込み冬を撫で続ける。

しかし、我慢できるはずがなかった。


「冬、抱きしめていい?お願い」


と俺は冬に言ってしまった。


「ひぇっ⁉︎」と冬は驚く。


「と、透がしたいならい⋯⋯いよ」


と俺は冬から許可を得た。


「じゃあ、遠慮なく」


と言うと、俺は冬を起き上がらせると座りながら俺の上に乗ってもらいハグをした。


「ちょっと。透力強い」

「え?あ、ごめん。抱きしめたい欲が強かった」


「ぃぃょ」


と冬は消え入りそうな声で言った。

おそらくというか、恥ずかしいんだろう。


「可愛すぎだろ」

「ひゃっ」


と冬から声があがる。

心の中で言ったつもりが、どうやら口に出てしまっていたらしい。

決して冬の可愛い反応が見たかった訳ではない。

うっかり、ついうっかり口に出てしまったのだ。


  無論、嘘である。

  気の男はわざと言ったのだ。


「うぅ」と冬が言う。

可愛すぎだろ。


「ふふ、ははははは」と俺が言ってみると冬が「どうしたの?大丈夫?」と聞いてくる。


「冬が愛おしすぎておかしくなった。責任をとってくれ」


と俺は内心笑いながら言った。


「ど、どうやって?」

「そりゃもう、膝枕でしょ」

「分かった。いいよ。こっち⋯⋯来て」


本当かよ。


「本当にいいの?」


俺は聞いた。


「うん。透がしてほしいなら」

「して欲しいです!」


俺は即答した。

普通して欲しいよね。

普通の反応だと思う。

皆さん僕はこれから幸せになってきます!


「お、お願いします」

「ん、どうぞ」


俺は寝転がり冬のふとももに頭を乗せた。


むにゅぅ、もちもち


ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


俺の右側頭部が悲鳴を上げた。

めちゃくちゃ柔らかい。

あったかくて、気持ちいい。

幸せすぎるわ。


「透、可愛い」

「へっ⁈」


俺は吃驚した。

しかし、疑問に思ったのですぐさま質問した。


「どこが?」

「だって、ニコニコしてて嬉しそうにしてたから。可愛かった」

「そうか」


やべぇぇぇぇ

俺はどうやら感激のあまり、ニコニコしてしっまていたらしい。

変態じゃん!

どうしよう⋯⋯嫌われた?


「別に嫌いじゃないよ」


と冬がまるで俺の心を読んだかのように言った。


「本当に?」

「本当だよ。こうやって透を甘やかすのもいいかも⋯⋯。いつも私ばっかり揶揄われるから」


と言い冬は俺の頭を撫でてきた。


「仕返し」と冬がニヤけながら言った。


「ふふっ、可愛いなぁ透は」

「もうやめてくれ」


と俺は言った。

降参だ。


「やだ、やめない。いつもの仕返しだって言ってるでしょ?」

「ごめんなさい」


俺は素直に謝った。

まさか自分がやられるとこんなに

小っ恥ずかしいものだとは。

まあ冬に甘やかされるのも悪くないかもと俺は思った。


「冬、また膝枕してくれる?」

「もぉー。しょうがないなぁ。いいよ」

「やった」


よーし。

俺のターンだ!

俺は起き上がり冬を抱きしめた。


「冬、大好きだよ」

「太ももは柔らかくて気持ちよかった」

「でもやっぱりこれだよな」

「ハグに勝るものなし」


俺は一気に言った。


「ひぇ⁉︎」


と冬が声をあげる。

だがもう遅い。

全てが俺の手中にある。

冬の体もだ。


「可愛いなぁ冬は」

「うぅ。なんでいつもこうなるの」

「し・か・え・し」



そう言うと俺はほくそ笑んだ。





————————————————————

もう一話ありますよ!


 


  


  

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