第5話 じゃれ合う二人

 ピピッピピッ バァン


  透が鳴り響く目覚ましを止める。


「う〜ん」と透がうなる。


「全く眠れなかった」


俺はあれからというもの寝ようとしてもどうしても冬の事を考えてしまったんだ。

だってしょうがなくない?

可愛すぎじゃん。あんなに可愛いこと言われたらさぁ?

意識しちゃうよねぇ?


「冬を起こしに行くかぁ」


俺はムクっと起き上がる。


ガララッ


「冬ー起きてー」


俺は冬が寝ているところ見て歩みを止める。


「可愛い寝顔だなぁ」


そう言いつつ透俺ベットの横ある椅子に腰をかける。


「これは起こせないなぁ。可愛すぎでしょ」


うん。しばらく眺めておこう。と俺は一人で納得する。

本当に信じられないなぁ。大好きな冬と同棲だなんて。


「んんー」と冬がモゾモゾと動く。


可愛い。ほっぺぷにぷにしてるなぁ。触ってみよう 。

もう冬は彼女だし?妻だし?いいよね。

と考えながら俺は冬の頬に手を伸ばす。


むにっ、むにむに


うわっ、柔らかい。めっちゃもちもちだ。

すごい。

やっぱり女の子って柔らかいんだな。


  

  などと透が思っているうちに冬華の目が開いてくる。


しかし、透はそのことに気がつかない。


むにむにと、透の手は止まらず冬華の頬を触り続ける。




ぱちっ


  冬華の目が開き透と目が合ってしまう。



「あっ」と俺は声をあげる。


「起きちゃったか。おはよう、冬」


と俺は言う。


「おはよう」

「あの、透はほっぺた触るの好きなの?」


と冬が俺に聞いてくる。


「好きだけど、嫌だった?」


と心配になった俺は冬に聞く。


「いや。気になったから。むしろ私はもっとされたい」


と冬が言ってくる。

可愛いなぁ。おい。

抱きしめたくなっちゃうだろ。

と思ったので俺はすぐさま行動に移した。


「ひゃうっ!?」と冬が素っ頓狂な声を上げるが俺は気にせずに続ける。


「大好きだよ、冬」と俺は言った。


「ああ。そっか、夢か」と冬が納得しているので俺は言う。


「夢じゃないよ。寝ぼけてるの?」


と俺が言うと


「幸せ」と冬が呟いた。


会話になってないなぁと俺は思いつつ冬の首元に顔をうめた。

いい匂いするなぁ。

などと考えながらも俺は冬を抱きしめ続ける。

冬は大人しく抱きしめられている。


「もう。そんなに私のことが好きなのかなぁ?」と冬が顔を真っ赤にしながら言ってくる。


顔が真っ赤なあたり精一杯の照れ隠しなのだろう。

本当に可愛い。

と思いながら、俺は冬の頭に手を伸ばす。


撫で、なでなで


「ひゃぁっ⁉︎」


と冬が声を上げる。


何気に初めて頭撫でるなぁと俺は思った。

にしても、髪の毛サラサラだな。

いい匂いもするし。

手入れ大変そうだなぁ。

などと考えながらも俺は冬の頭を撫で続ける。

冬はこれもまた、受け入れている。

 ここで俺はあることを切り出すことにした。 


「冬、二の腕触ってもいい?」


俺は内心ドキドキしながらも冬に聞いた。


「え?二の腕?なんで?」


冬が驚き、聞いてくる。

それもそうだ。

突然二の腕触ってもいい?などと聞かれたのだ。

当たり前かと俺は思った。


「俺、実は冬の二の腕とふとももとほっぺが好きなんだ。フェチなんだ。それで触りたくて⋯⋯いいかな?」


俺は恐る恐る理由を話した。

でも俺は冬の柔らかそうな二の腕をどうしても触りたいのだ。

食べてしまいたいくらいだ。


「ん⋯⋯いいよ。特別だよ」


冬が顔を赤らめながら言う。


 じゃあ失礼しますか。

俺は冬に二の腕に手を伸ばし、そっと触れた。


むにっ、もに


やばい、柔らかすぎる。

気持ち良すぎだろこれ。

すべすべだし、揉めば揉むほど柔らかさが伝わってくる。

ずっと触っていたい。そう俺は思った。


もに、もにゅ


そして意地悪をしてみようと考えた。


「冬、知ってた?一説によると二の腕っておっぱいと同じ柔らかさらしいよ」


俺はそう冬に言ってみた。

すると冬の顔は真紅に染まった。


「うぅ。なんで触ってからいうの?いじわる⋯⋯」


「え?」


思っていた反応とは違い俺は驚いた。

てっきり「もぉーじゃあ触らせない」などと返ってくると思っていたので、意外だった。


「ご、ごめん」


俺は素直に謝った。


「その⋯⋯嫌だった?」


俺は聞いた。


「その⋯⋯。恥ずかしくて⋯⋯」


と冬が言ったので


「ごめん」


俺はそう告げて冬の二の腕を揉み続けた。


むにゅ、もち


「別にいいよ。急に言われてびっくりしただけで。誰にも⋯⋯触られせたことがなかったから」


照れながら言う冬に俺は言う。


「照れ屋なところ大好きだよ」

「また、すぐにそういう⋯⋯。照れちゃうって分かってるくせに」

「ほら。そういう所とか」


俺は更に揶揄う。

「むぅ」と冬がほっぺを小さく膨らませる。 

 

「なんだこの可愛い生き物は⋯⋯。俺をベタ惚れにさせる気かぁー」

 

そう言い俺は冬の髪の毛をわっしゃわしゃする。


「もぉー。やめてよぉ」


冬が可愛く怒る。

俺は更に髪をわしゃわしゃした。


「もう。やめっててば。あとで髪とかしてよね」

「分かった分かった」


 相変わらず冬は可愛いな。

などと思っていた矢先に「そりゃー」と言いながら俺は冬に押し倒された。

幸いベットの上だったので痛くはない。

倒された俺に冬が覆いかぶさるように抱きついてきた。


「どうしたんだ?」

「散々好きにしてくてた仕返しだー。まいったか」

「いや。むしろ嬉しい。冬に押し倒されるなんて。積極的だなぁ」


俺はにやにやしながら言った。


「えっ、ちがっ⋯⋯そういうんじゃないもん」

「そういうのって何かなぁ?どうしたのかなぁ?」

「もう知らない。透嫌い」


冬が冷たく放った言葉が俺にクリティカルヒットした。

『嫌い』という言葉が俺の中で反芻された。


「すいませんでした。調子に乗ってしまいました」

「ふふん。いいよ。あと、その⋯⋯本当は嫌いじゃないからね。⋯⋯大好きだよ」


そう冬に言われ俺は有頂天になった。


「可愛い⋯⋯好き」

「ふぇっ⁉︎」


 そんなことをしつつじゃれ合っている間に一時間が過ぎていた。

うん。しょうがないよね。

二の腕揉んでたりしていたら時間が過ぎていたんだ。

しょうがない。


「じゃあ。ご飯作ろっか。手伝うから」

「うん。ありがと、透」


  (俺は幸せ者だなぁ)と思う透であった。



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第六話は8/25 20:00分に投稿です。

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