第4話 気の合う二人

 「ベットが一台しかない訳だが、俺はソファで寝るから。冬はベットで寝てくれ」


 俺が冬に言う。

 まったく、母さんたちは何してくれてるんだなどと考える。

 そう、ベットが一台それもダブルベットであるのは母さんたちの粋な計らいだったのだ。

 いや、順序ってものがあるでしょ。まだちゃんと好きって伝えてないのに

 俺が悶々としていたところで冬が口を開く。


「なんで?一緒に寝ようよ。透は嫌なの?」

「だって、添い寝は流石に早すぎると思うんだ。その、まだちゃんと好きとすら言えてないのに」


 俺は理由を答える。

 しかし、この程度で食い下がる冬ではなかった。


「私は一緒に寝たいの!透に抱きしめられたいの」


 冬が声高らかに言う。


 なんや、こいつ。めちゃくちゃ可愛いじゃん

 だが、俺も折れることはない。


「正直、俺も冬と添い寝はしたいよ?でも、まだその、恥ずかしというのが本音でして。その、明日からでどうでしょうか?」


 いや、折れてしまった。


(透可愛い。好き。大好き。抱きしめたい)と冬華が思う。


「じゃあ、明日なら良いんだね?」


 冬が聞いてくる。


「う、うん。明日なら」


 どうやら俺たちの納得のいく結果になったようだ。


「でも、ぎゅーってするのはいい?透に抱きしめられたいから」


 冬が照れたのか次第に小さくなってゆく声で聞いてくる。


「それなら、いつでも。俺も抱きしめたいし」と俺は言う。

 俺は冬華のことが大大大好きなのだ。

 可愛くねだれたら、断ることが出来ない。

 添い寝は強い精神力でギリギリ、そうギリギリ断ったのだが。


「じゃあ、こっちにきてくれ」


 俺が冬にそばに来るように促す。


「う、うん」


(ああ。やっと透に抱きしめられる。これぞドア・イン・ザ・フェイス。添い寝は断られる前提でお願いしたけど、まさか明日ならしてもいいなんて。幸せすぎる)

  何を隠そう冬華は透大好きっ子なのだ。

 透に甘えたいという欲望を抑え続けていたのだ。

 数年間思い続けて、やっと同棲にまで漕ぎ着けたのだ。

 そのうえ、透も冬華が好きときた。

 もう、甘えない理由がない。


「じゃあ、失礼します」と俺は言う。


「うん」


(やっぱり、幸せだぁ。柔らかいし、あったかいし。冬の体温が、体温が伝わってくる。女の子ってこんなに柔らかあったかいのか?)

 と俺は表に出てしまわないよう考える。

 何を隠そう、俺は冬のことが大大大好きなのだ。


(あぁぁぁ。幸せぇ。私、今透に抱きしめられてる。感激)


「じゃあ。もういい?」


 俺は冬に聞く。


「やだ、足りない。もっと透に抱きしめられたいの。ずっと我慢してたんだもん」


 それにと冬が付け加える。


「透だってさっき一日一回は抱きしめて良いか?とか聞いてきたじゃん」


 冬が痛いところをついてくる。


「それはそうだけど、気持ち良すぎて、冬を抱きしめることしかできないダメ人間になっちゃうから」


 俺は思ったことを言う。


「いいよ」

「え?いいのか?」


 俺は驚き、聞く。


「私、さっき我慢してたって言ったじゃん。透にならずっと抱きしめられたいもん」


 冬が照れながら言う。


「もう。我慢しないもん」

「そうか。じゃあ冬のこと甘やかしまくるけどいい?」


 俺は抑えきれずに言う。


 冬の顔がみるみる真っ赤になっていく。


  冬華は透のことが大好きで抱きしめられたいと思っても、照れてしまうのだ。

 冬華は照れ屋だったのだ。


「うん。いいょ」


 と冬が今にも消え入りそうな声で答える。


「可愛いなぁ。大好きだよ冬」


 俺は冬の耳元で囁く。


「ひぇあ!?」


 ちなみにと俺は付け加える。


「今のが初告白なんだけど、返事はないの?」

「うぅ。私も大好きだよっ」


 と冬が言う。


「我慢しようと思ったけど無理だな。冬が可愛すぎる」

「あ、ありがとう」


 冬の顔がまたもや真っ赤に染まっていく。


「ははっ。そういう照れ屋ですぐに真っ赤になっちゃうところも大好きだよ」


 俺は笑いながら言った。


(私幸せすぎじゃん)と冬華は思う。


「じゃあ。もう寝よっか?今日は別々だけど」

「うん。おやすみ、透」

「おやすみ、冬」


 そういい床ににつき寝るのだった。


((眠れない))


  気の合う二人でした。




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 五話から更にあまあまになります。

 五話は同時投稿です。

















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