血の海

先輩の肌は透明感があって、触れるのも怖いくらいだ。


「まずはシャワーで流しますね」

「う、うん」


萎縮して緊張する先輩。

俺も随分と意識をギリギリに保っている。少しでも気を抜けば鼻血で血の海だ。


お湯で丁寧に洗い流していく。


「さて、次は……触れますよ」


先輩はもう返事をする余裕もないらしい。頷くだけ。俺もどんどん緊張感が高まってきて、今にも気絶しそうだった。


しかし、今倒れるわけにはいかない。


俺はゆっくりと先輩の背中に触れていく。



「……ん」



先輩は声を漏らす。

なんかエロいぞ……。


だが、いちいち止まっていては前へ進めない。先輩の背中に触れ、ボディーソープをまんべんなく塗っていく。


優しく、丁寧に。



「加減はこんなものでいいですか」

「……ん、ぁ」


「ちょ、先輩。さっきから変な声出し過ぎです!!」

「だ、だってぇ……くすぐったいんだもん」

「我慢してください……」

「自然と声が漏れちゃうから」

「し、仕方ないですね」



継続決定。俺はそのまま先輩の背中を擦っていく。その度に先輩はビクッと反応していた。……それにしても、ツヤツヤのスベスベ。きめ細かい肌だ。


――なんとか背中は終わった。


だが、ここからが本番だ。



「つ、次はどこを洗ってくれるの?」

「次は先輩の肩と腕へいきます」

「そこならいっか……お願いね」


そのまま肩や腕に触れていく。

細くてスラッとして……魅力満載だ。



「先輩って、どうしてこんなに肌が綺麗なんですか……」

「そ、そうかな? 自分ではよく分からない」

「なにかケアとか」

「あんまりしてないかなー…」



ほぼ天然の肌なのか。すげぇな。興奮しながらも俺は先輩を洗い続けた。



「……次、胸いきますよ」

「だ、だよね。やっぱり、洗うよね……」

「当然です。というか、洗う前なのに興奮してきました……」



俺はついに先輩の胸に手を伸ばしていく。禁断の場所へ侵入して――いくのだが。……鼻に違和感を覚えた。


――あれ、


なんか興奮しすぎて、赤いものが……?



「どうしたの、愁くん?」

「そ、その……」


「え?」


先輩が振り向いた瞬間、俺は――




『ブシュウウウウウウウウウウウウウゥゥゥ!!!!!!』




と、盛大に鼻血を噴きだしてしまった。失血多量だ。


死ぬ、死んでしまう……。


けれど、幸せでもあった。


もうこのまま死んでもいいかもしれない。



* * *



俺は意識を保ち、辛うじて生きていた。

タオルで鼻を押さえて止血。


結局俺は半端のまま風呂を出た。

自室で療養していると、体がほかほかになった先輩が戻ってきた。



「おかえりなさい、先輩」

「だ、大丈夫?」

「ええ、なんとか死は回避しました」


「凄い鼻血だったけど……」

「先輩がエロすぎたせいです! あの破壊力ある胸には負けました……」

「あはは……愁くんって胸に弱いんだ」


「先輩のおっぱいは最凶であり、最狂であり、最強なんです」



触れようとした俺が愚かだった。あれはもう大量殺戮兵器だ……勝てるわけがなかったんだ。



「もう四時だね」

「少し寝れますよ」

「うん、そうしよっか。寝不足でだるかったら、学校サボろ」

「それもありですね。俺、先輩となら人生なんとかなりそうです」

「なにがあっても支えてあげるからね」

「俺もです。先輩をもっと好きになって……本当の恋人になりたいです」



 ドキドキしながら手を握り合う。

 そのままベッドに寝そべって、先輩が俺の上に覆いかぶさった。……このまま眠ろう。

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