庇えなければ即死亡!俺以外全員HP1の世界で、俺だけHP五兆あるので頑張って盾やります!

ここのえ九護

俺だけHP五兆ある

「ぐわああああああああああああ!?」


「た、タクトーーーー!?」


 骨が軋む音と焼け焦げる肉の匂い。

 真正面からドラゴンの炎と巨人のパンチを食らった俺は、地面にめり込んで〝人の形をした穴〟になった。


 けどまだだ。

 この程度で寝ているわけにはいかない。

 俺はすぐに穴から飛び出し、別のモンスターに狙われているヒーラーの前に飛び込む。


「ぐわああああああああああああ!?」


「た、タクトーーーー!?」


 鋭い衝撃と全身に走る痛み。

 猛獣型モンスターの爪に斬り裂かれた俺は、更に傷を増やして地面に叩き付けられる。


 けどまだだ。

 この程度で寝ているわけにはいかない。

 俺はすぐに地面から飛び起きると、また他のモンスターに狙われる仲間を庇い、盛大に吹っ飛ばされるのを繰り返す。


 俺の名はタクト・トリリオン。

 勇者パーティーの盾役として、今も必死に役目を果たしてる。


 そしてそんな俺に庇われたオレンジ色の髪のヒーラーが、吹っ飛ばされた俺の所に心配そうに駆け寄ってくる。


「もうやめてタクトっ! あなたのHPは、あと49999999999769しかないんだよっ!?」


「俺は平気だ! ピヨリは状態異常を喰らった奴の回復を頼む!」


「っ……。わかった……!」


「じー……」


 俺にそう言われて、急いで他の奴らのとこに向かうピヨリ。

 そんなピヨリの背中を見ながら、俺は念のためピヨリのステータスを確認してみた。


 ステータス

 名前:ピヨリ・ピヨピヨ

 職業:ヒーラー

 レベル:72

 HP:1

 MP:6555

 攻撃:136

 防御:220

 魔力:726


「止まるんじゃねぇ! タクトが俺達を庇ってくれてる間に、絶対にこいつらを倒すんだよ!」


「そうですよ! タクトさんの犠牲を無駄にするわけにはいきません! やりましょう、皆さん!」


「ああ、頼んだぞディライズ! ハルート!」


「任せとけ!」


「じー……」


 ついでに勇者のディライズと、魔法使いのハルートのステータスも見てみるか……。


 ステータス

 名前:ディライズ・カルナー

 職業:勇者

 レベル:99

 HP:1

 MP:3615

 攻撃:892

 防御:771

 魔力:447


 ステータス

 名前:ハルート・ヴィステック

 職業:魔法使い

 レベル:89

 HP:1

 MP:8999

 攻撃:37

 防御:61

 魔力:9999


 うん……。

 やっぱり、何度ステータスを見たって変わらないよな……。


 伝説の勇者ディライズも、世界最強の大魔法使いのハルートも。

 もちろん、人類救済の聖女なんて呼ばれてる究極ヒーラーのピヨリも。


 俺以外のみんなは全員が〝HP1〟だ。

 それが当然。それが当たり前。

 それがこの世界のルール。


 けど、俺は――!


「ぐわああああああああああああ!?」


「た、タクトーーーー!?」


「こ……こいつらには、1ダメージだってくらわせない! どんな攻撃だろうと、この俺が全部受けきってみせる!」


 HPが1ってことは、モンスターの攻撃をちょっとでも喰らえば死ぬってことだ。


 俺達の世界の命は軽い。

 生まれてから死ぬまで、誰だってHP1のまま必死に生きていく。


 どんなに強い奴も、えらい奴も、金持ちも。

 みんなちょっと運が悪いだけで死ぬかもしれない。

 それがこの世界だ。


 だから俺は、全身全霊でこいつらを守る!

 絶対に守ってみせる!

 

 なぜなら、俺だけはこの世界でただ一人。

 HP5000000000000だから――!


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