番外編◆蓮さんの親友達③◆

◆◆◆◆◆

颯太さんの言葉で急速に緊張が解けた私。

だけどそれは束の間の事だった。

蓮さんとケンさんと颯太さん。

3人のやり取りを笑いながら見ていた私。

その時、突然開いた襖。

私は何気なくそちらに視線を向けた。

「……」

そこに立っていたのは男の人が2人。

1人は、赤に近いオレンジの髪。

幼さの残る顔立ち。

その顔には可愛らしい笑顔を浮べている。

そして、もう1人は黒い髪にお洒落な眼鏡で知的で落ち着いた雰囲気を纏っていた。

……この人達って……。

「琥珀!!樹!!」

ケンさんの言葉で私の予想が当たった事が分かった。

「久しぶりだな!!」

今まで席に腰を降ろしていたケンさんと颯太さんが素早く立ち上がり琥珀さんと樹さんの元へ近付いた。

そんな2人の後姿を眺めていると

「美桜」

蓮さんが私の名前を呼んだ。

振り返ってみると蓮さんは立ち上がり私に手を差し出していた。

「……?」

「紹介してやる」

「うん!!」

私は差し出されているその手に自分の手を重ねた。

その瞬間、力強く引き寄せられた。

私の手を包み込んだまま、蓮さんはケンさんや颯太さんと楽しそうに話している琥珀さんと樹さんに近付いた。

「蓮!!」

「久しぶりだな」

「おう、元気だったか?」

「もちろん!!」

琥珀さんがニッコリと笑みを浮かべ、樹さんが穏やかな表情で頷いた。

そんな2人の視線が蓮さんから私へと向けられる。

一旦、私の顔で留まった視線が下へと落ちて行き手の辺りに向けられた。

……?

2人の視線の先にあるのは私の手とそれを包み込んでいる蓮さんの大きな手。

「……マジかよ……」

「……」

小さな声で呟いた琥珀さんと無言の樹さん。

そんな2人の共通点と言えば信じられないって感じの驚いた表情。

……なに?

なんで琥珀さんも樹さんもこんなに驚いた顔してんの?

急に不安になった私は慌てて辺りを見渡した。

ケンさんと颯太さんはなぜか意味ありげな笑みを浮べていた。

それが余計に不安を駆り立てる。

「琥珀、樹。美桜だ」

蓮さんがそう言うと、再び2人の視線が私の顔に戻ってきた。

「は……初めまして、美桜です」

多少声が震えてしまったけど、なんとか自己紹介ができた。

「どうも、樹です」

樹さんが口元に優しい笑みを称えて右手を差し出した。

……この手って握手って事かな?

そう思った私は蓮さんの手を離してその手を握った。

蓮さんの手とは違いヒンヤリとした手。

「……」

……この手は一体いつ放せばいいんだろう?

人と握手なんてしたことのない私はそんな疑問を抱いてしまった。

……出来れば先に放してくれないかな……。

そう思いつつ樹さんの顔を見上げてみると……。

……。

……微笑んでる……。

樹さんは相変わらず優しい笑みを浮べていた。

……どうしよう……。

このまま手を掴んでいないといけないの?

いい加減、引きつり気味の笑顔が限界なんですけど……。

そんな私を助けてくれたのは

「樹、いい加減にしねぇーと蓮が暴れだすぞ」

苦笑気味な琥珀さんだった。

……暴れだす!?

その言葉に恐る恐る隣にいる蓮さんを見上げてみると琥珀さんの言葉通り、蓮さんは不機嫌そうな表情を浮べていた。

……はっ!?

なんで!?

私には蓮さんが不機嫌な理由が分からなかった。

首を傾げながら見つめていると

「……手を放してんじゃねぇーよ……」

不機嫌そうに呟いた。

……はい!?

蓮さんが不機嫌なのは私の所為だったの!?

衝撃の事実に私は眩暈がした。

それから、蓮さんはまだ私の手をしっかりと握っている樹さんに視線移すと

「おい、樹」

低い声を出した。

「どうした?」

だけど樹さんは平然としていた。

「……てめぇ、いつまで美桜の手を握ってんだ?」

「手?あぁ、こんなに若い子に触れるのは久々だったからつい……」

樹さんはニッコリと微笑み

「ごめんね」

と言って私の手を放した。

ようやく解放された私の手。

私はホッと胸を撫で下ろした。

蓮さんの大きな手はあんなに私に安心感を与えてくれるのに……。どうやらそれは、蓮さん限定らしい。

そう気付いてしまった。

……っていうか、なんで蓮さんはこんなに不機嫌なんだろう?

そう思ったけど、私がその答えを知る事はできなかった。

それがなぜかと言うと……。

「それじゃあ、みんな揃った事だし早く肉を注文して食おうぜ!!」

ケンさんが瞳を輝かせてそう言い放ったからで……。

今まで不機嫌度全開だったはずの蓮さんまでもが

「仕方ねぇーな」

呟くように言って、次の瞬間にはそれぞれが自分の席へと戻り始めていた。

……この人達って一体……。

私は、微かに戸惑いを感じてしまった。

だけど、それはどうやら私だけのようで……。

それぞれの席に着いたみんなは何事もなかったかのようだった。

「琥珀と樹、飲みものは何にする?」

「俺は取り敢えず生ビール」

「あっ、俺も」

「それ注文する時に肉も注文しようぜ。もう、腹が減って我慢できねぇ」

「……お前どんだけ腹空かせてんだよ?」

「なに言ってんだよ?俺は思う存分肉を喰う為に昼飯を抜いたんだ」

「は?マジかよ?」

「あっ!!俺も昼飯、喰ってない」

「おっ!!仲間発見!!」

「おいおい、ちょっと待て。俺は別に焼肉のために昼飯を抜いた訳じゃねぇよ。ただ仕事が忙しくて喰えなかっただけだ」

「残念だったな」

次々に飛び交う言葉。

そして響く笑い声。

そのやりとりに参加すらできない私はひたすらみんなの顔を順番に眺めていた。

こうして、B-BLAND初代メンバ一様達の宴は幕を開けた。

◆◆◆◆◆

次々と追加注文されるアルコール。

続々と運ばれてくるお肉が載ったお皿。

途切れる事のない会話。

そして、溢れている楽しそうな笑顔。

そんな中、私はと言えばいつもとは比べものにならないくらいに、テーブルの上に並んだお肉の量に唖然としていた。

……これってオーダーミスとかじゃないよね?

どうみたって注文しすぎじゃない?

一体、誰がこんなに食べるの?

……って言うか、なんでみんな普通に笑ってられるの?

ここは、私がみんなに教えるべきなんだろうか?

大量のお肉を見ながら悩んでいると

「美桜、どうした?」

絶妙なタイミングで蓮さんが声を掛けてくれた。

どうやってこの状況をみんなに知らせようかと悩んでいた私は、心の中で“蓮さんナイスタイミング!!”と絶賛してしまった。

この時ばかりは、蓮さんの人の心が読めるという特殊な能力をすばらしいと思った。

「……あの……コレって間違いだよね?」

「間違い?」

「うん、誰もこんなに注文してないでしょ?」

この時、私は確信していた。

この大量すぎるお肉は絶対にオーダーミスだって……。

だけど、蓮さんの答えは耳を疑うようなものだった。

「いや、多分間違いじゃねぇと思うぞ」

「はっ?」

「この中に注文した奴がちゃんといる」

「……それって……誰?」

私の問い掛けに、その場にいた全員が一斉に指を差した。

「……ケンさん……」

みんなの指の先にいるケンさんが

「……ムフ……」

照れたように頭を掻いた。

そうだった。

この人がいたんだった。

「大丈夫だよ、美桜ちん。喰い盛りの男がこれだけいるんだからこのくらいすぐになくなるって」

……そうなんだ……。

うん、確かにそうかもしれない。

これだけ男の人がいるんだからこのくらいのお肉なんてペロリと食べちゃうのかもしれない。

……まぁ、私がたくさん食べろって言われてる訳じゃないし……。

それならいいか。

私はそう思っていた。

……だけど……。

そう思ってしまった私が甘かった。

「美桜、これを喰え」

「美桜ちん、これも食べなよ」

「美桜ちゃん、これも美味しいよ」

私のお皿に次々に載せられていくお肉。

……。

ちょっと待って。

さっきと話が違うくない!?

「……れない……」

「ん?」

「……こんなに食べれないってば!!」

とりあえず抗議してみたけど……。

「却下」

「美桜ちん、速攻で却下されてるじゃん」

「残念だったね」

「ほら、もう諦めて喰いなよ」

……どうやら、私の味方をしてくれる人は誰もいないらしい……。

諦めるしかないらしい私は大きな溜息を吐き、自分の目の前にあるお皿に箸を伸ばした。


◆◆◆◆◆

それからの時間、私にとって悪夢のような時間だった。

もうどれくらい食べたのか自分でも分からない。

ううん、違う。

食べたんじゃなくて食べさせられたんだ。

しかも、ほぼ強制的に……。

黙々と口にお肉を運び続け、ようやくお皿が空になりそうになると

「美桜ちゃん、これも食べな」

そう言ってどんどん追加されていく。

いつもは、蓮さんがそうやって私に食べさせようとするんだけど……。

今日は、違った。

無邪気な笑顔のケンさんも……

爽やかな笑みを浮べた颯太さんも……

人懐っこい笑顔の琥珀さんも……

穏やかな微笑を浮べた樹さんまでもが……

どんどん私のお皿にお肉を載せていく。

「……もう食べれない……」

もう何度この言葉を発したかも分からない。

だけど、私のこの言葉が聞き入れてもらえる事はなかった。

……ダメだ……。

このままだったらお腹が破裂するまで食べさせられてしまう。

身の危険を察知した私は必死で作戦を考えた。

このまま『……もう無理……』とか『……もう食べれない……』とか言い続けても絶対に誰も聞いてなんてくれない。

こうなったら、別の方法を考えないと……。

“おなかが痛い”って仮病を使ってみるとか?

果たして、この人達をだませるくらいの演技力が私にあるんだろうか?

……いや、多分ないな……。

じやあ、泣きマネでもしてみるとか?

……悲しくもないのに涙なんかでてこないし……。

……。

……。

あっ、走ってここから逃げてみようかな?

まず、トイレに行くって言って席を立つでしょ。

それから、さりげなくこの部屋を出て、トイレの前を素通りして、そのままお店を出ればなんとか逃げれるかもしれない。

問題はただ1つ。

それは、店員さんの声。

このお店の店員さんはいつも気持ちがいいくらいに大きな声で接客をしてくれる。

それは今日も例外じゃないはず。

私が個室のこの部屋を出てトイレの前を素通りして、お店を出ようとした瞬間に大きな声で言うはず。

『ありがとうございました!!』って……。

万が一、運悪くその声が蓮さん達に聞こえてしまったら……。

そして、逃げようとした事がバレてしまったら……。

軽く想像してみたら激しく後悔した。

……うん、逃げるのだけは止めておこう……。

密かに私は心に誓った。

他に何かいい作戦は……。

必死で考えていると

「美桜、腹一杯になったか?」

突然、蓮さんに尋ねられた。

「えっ?」

「まだ喰えるならデザートでも注文するか?」

「も……もうお腹いっぱいだからいい」

「そうか?」

「うん」

「分かった」

……はっ?

なにが分かったの?

まさか、油断させといてまたお皿にたくさんお肉を載せるつもりじやないでしょうね!?

もうその手にはのらないんだから!!

意気込んで警戒していたけど……

それから私のお皿にお肉を載せる人は誰もいなかった。

……あんなに真剣に悩んでたのに……。

私の苦労は水の泡となってしまった。

……でも、もう食べなくていいならいいか……。

私は胸を撫で下ろした。

◆◆◆◆◆

気が付くとあんなにたくさんあったお肉も殆ど無くなっていた。

・・って言うか、私もかなり貢献したんだけどね……。

そうは思ってみたけど、みんなが食べた量に比べると、私が食べた量なんて微々たる量だった。

食べ盛り男子の食欲はとてつもなくすごかった。

あれだけ食べたのになんで平気な顔をしていられるのかが不思議で仕方がなかった。

テーブルの上にあったお皿のお肉がきれいになくなり、お食事会も終盤に差し掛かった頃、急にケンさんがソワソワとし始めた。

そんなケンさんに私が気付くらいだから他の人達もすぐに気付いたらしく

「どうした?ケン、便所に行きてぇなら早く行ってこいよ」

颯太さんが苦笑気味に言った。

「別に便所に行きてぇ訳じゃねぇよ。」

「なら、なんでそんなにソワソワしてんだ?」

「はっ?ソワソワなんてしてねぇし」

「いや、すっげぇソワソワしてるじゃん。ねえ、美桜ちゃんもそう思うよね?」

「ソワソワなんてしてないよね?美桜ちん」

「……」

……だから私に話をふらないで下さい……。

……っていうか、なんでみんな私に注目してんの!?

お願いだから私をまき込まないで下さい。

心の中でそう祈ったけど、どうやら私の心の声は誰にも届かないらしい。

そして、みんなは私の言葉を待っているらしい。

もう、本当に勘弁してほしいんですけど……。

そうは思っても、小心者の私がこの空気に耐えられるはずもなく

「……微妙にソワソワしてるかな……」

強制的に意見を発表させられてしまった。

「……!!」

「だよね」

ショックが隠せないって感じのケンさんとご満悦な表情の颯太さん。2人に相反する目で見つめられた私は最高に居心地の悪さを感じていた。

ごめんなさい、ケンさん。

ケンさんの味方をしてあげたいのは山々なんだけど……。

ケンさんがソワソワしてるのは誰が見ても一目瞭然だったんだもん。もう、恥かしがる必要はないんだから早くトイレに行っておいでよ。その間に私が頑張ってこの空気をどうにかしておくから!!

裏切り者を見るような哀愁たっぷりな瞳で私を見ているケンさんに必死でテレパシーを送った。

「美桜ちんも俺が便所に行きたいんだって思ってるんだろ?」

私が必死でおくったテレパシーはごく一部しかケンさんには伝わらなかった。

しかも、重要なところは全く伝わらないというかなり残念な結果だった。

……ここはなんとかフォローしてあげなきゃ!!

私はまたしても必死で頭を働かせた。

なんで私がこんない必死にならないといけないんだろう?

そんな疑問も浮かんできたけど、それでも一生懸命考えた。

そして、私のロから出た言葉は

「ケンさん、あんまり我慢すると体に悪いよ」

ケンさんに対してなんとも失礼極わりない言葉だった。

……あっ、失敗してしまった。

そう気付いた時には手遅れで、その場にいた全員がお腹を抱えて笑っていた。

ただ1人、ケンさんだけが恨めしそうに

「……やっぱり……」

ふてくされていた。

「便所じゃなかったらなんなんだ?」

ケンさんの哀愁感たっぷりな視線に私が最高に居心地の悪さを感じた時、今まで琥珀さんや樹さんと一緒に笑っていた蓮さんがケンさんに尋ねた。

ケンさんの視線が私から蓮さんへと移る。

……良かった……。

ケンさんの視線が逸れた事に私はホッと胸を撫で下ろした。

「……葵……」

「葵?葵がどうした?」

「待ってるんだ」

「は?どこで?」

「クラブ」

……クラブってケンさん達の溜まり場のクラブだよね?

「なんで?」

「焼肉は無理だけど、颯太達には会いたいらしい」

「あぁ、なるほどな」

納得した様子の蓮さん。

「一体、どういう事だ?」

話の内容が理解できない様子の琥珀さんと樹さん。

それもそのはず、琥珀さんと樹さんはここに葵さんがいない理由を知らないんだから。

「実はな……」

ケンさんの代わりに颯太さんが“葵さんがここにいない理由”を話し始めた。

最初は真剣な顔で颯太さんの話を聞いていた琥珀さんと樹さん。

真剣だったその表情は、颯太さんの話を聞いていく内に段々緩んでいき……。

そして、話が終わった瞬間、2人は勢い良く吹き出した。

「……ケン、相変わらずだな……」

呆れ気味の琥珀さんと

「葵ちゃんが気の毒だ」

きっぱりと言い放った樹さん。

2人の反応にケンさんが再び、ガックリと肩を落とした事はいうまでもない。

「颯太」

「なんだ?蓮」

「今日の仕事はもう終わったんだろ?」

「あぁ」

「琥珀と樹は?」

「俺達も今日は終わりだ」

「なら、久々に会ったんだ。今日は朝まで騒ぐか」

蓮さんの言葉にみんなが嬉しそうに頷いた。

◆◆◆◆◆

蓮さんの朝まで騒ぐぞ宣言でなんとか復活したケンさんは、それから慌しくケイタイを手に部屋を出て行った。

……葵さんに連絡するのかな?

そう思っていると、颯太さんが口を開いた。

「俺達がクラブに行くなら、ケンは大忙しだな」

私にとってはちょっと意味不明なその言葉。

だけど、他の人達にはちゃんと伝わったらしく

「あぁ、でもお前達に会えるなら他の奴らも喜ぶだろ」

蓮さんが答えた。

その会話の意味を私が理解するのはもう少し後のことだった。

和やかな雰囲気の中、蓮さん達の会話を聞いていた私は

「おい!!」

突然、勢い良く開いた襖とケンさんの大きな声に驚いた。

「どうした?」

みんなの視線が個室の出入り口にいるケンさんに集まる。

「……樹、どういう事だ?」

みんなに注目されているケンさんの視線はまっすぐに樹さんに向けられていた。

「なんの話だ?」

樹さんは冷静な態度を崩す事無く、平然と答えた。

「今日の飯代の会計が1000円ってどういう事だ?」

……は?

……1000円……。

あれだけ食べたり飲んだりしたのに1000円!?

「……それってなにかの間違いなんじゃ……」

ついそう言ってしまった私。

それに、それを樹さんに言うのはおかしいと思う。

言うなら店員さんに言わないと……。

「あぁ、俺もそう思って店員に言ったんだ。そしたら、それはオーナーの指示だって」

オーナー?

「……まさか、このお店のオーナーって……」

「樹だ」

そう答えたのは蓮さんだった。

……やっぱり……。

それだったら、全ての辻褄【つじつま】が合う。

「おい、樹。変な気を遣ってんじゃねぇーよ」

小さな溜息を吐いた蓮さん。

「そうだ。別に俺達はお前に“お友達価格”で飯を食いてぇからこの店を選んだ訳じゃねぇーぞ」

珍しく真剣な表情のケンさん。

そんな2人に見つめられても樹さんは顔色ひとつ変えなかった。

「別に気をつかったわけじゃない。これは、ただのお礼だ」

「礼?」

「そうだ、いつもこの店を利用してくれている常連さんへのな」

……あぁ……。

そうか。

やっと分かった。

蓮さんやケンさんが焼肉と言えば絶対にこの店に来る理由も……。他の焼肉屋さんには行かない理由も……。

週に何回かはこのお店に来て、たくさんお金を使う理由も……。

それは、このお店が樹さんのお店だからなんだ。

「いつもご利用ありがとうございます」

ニッコリと微笑んだ樹さん。

蓮さんとケンさんはお互いに顔を見合わせた後、ふと表情を崩した。

「ここは、俺の厚意に素直に甘えてくれよ。でも……」

「……?」

「ここから先の事は頼んだぞ」

樹さんの言葉に

「おう、まかせとけ」

ケンさんが嬉しそうに答えた。


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