幕間 手紙

 フランスのパリ――。

 中心部から程近いアパルトマン。

 真夜中、男は新聞を読んでいた手を止め、壁掛け時計に目をやった。


「終わったか」


 ぽつりと呟いてから、そばに置いてある手紙に目をやる。


Marquess of 侯爵 ――.”


 テーブルに置いたコーヒーカップを持ち上げ、口をつける。カップの底に残ったコーヒーをゆっくりと飲み干し、テーブルに置いた。


「何とも愚かな。未だにこんなものを寄越してくるとは」


 ペーパーナイフを手に取り、手際よく手紙の封を切った。


 親愛なる我が友へ

 フランスへ旅立って早三か月。

 今回も舞踏会には顔を出さないようだな。

 残念に思っているよ。

 帰国した暁には、土産話でも聞かせておくれ。

 元気で。


 中身をひととおり読み終えた彼は、口角を不気味に上げた。


「悪夢はまだ始まったばかりだ」

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