■menu14:「はい、集合してくださ~い!」

ここは京都の新幹線コンコース。

お土産屋さんが立ち並ぶホーム下の広場に、僕達は修学旅行で来ていた。


「はい、集合してくださ~い!」

大声を張り上げているのは、進藤先生。


今年、定年なのに油ぎって、うざい。

まあ、そういう僕達も見回すと高校生には見えない。


としよ・・・いや、大人っぽい奴ばかりだ。

赤シャツのヤクザみたいなのとか、農家で日焼けしている人もいる。

コロナ明けの彼女、体調は大丈夫なのだろうか。


「ちょっちゅね~学園のみなさーん!」

先生、メガホンも使わないのに、よく大声がだせるな。


「これから地下鉄に乗って、四条駅から八坂神社にいきま~す!」


ガヤガヤ、ゾロゾロと移動し、僕達は八坂神社に向かった。

四条駅からは結構な距離で、商店街のアーケードを通って、祇園の街を横目で見ながら大きな交差点を渡った。


「えっ・・・先生、本殿はこっちですよ」

副主任の先生の質問にニヤリとしたジジイ・・・いや、進藤先生の口元が赤く裂けて見えたのは錯覚だろうか。


「これから、料理の聖地「こがらす寺」に行くのです」

【こがらす寺~?】


生徒全員が声を揃えて叫んだ。


「知る人ぞ知る、イジリたく・・・いやいや、とてもためになる料理の殿堂です」

勝手に鼻息荒く話す、ジジイ。


「そこの義母観音に美味いと言わせれば、貴方も料理の達人」

貴方って・・・誰のこと言ってるの?


僕の突っ込みを無視して、ジジイはズンズンと森の奥に入っていく。

しかたなく、皆もゾロゾロと続いていった。


すると、一人では絶対に見つけられない森の奥に、ひっそりと寺があった。

先生は振り向くと、今度は声を潜めて言った。


「では、ここでお参りしたら自由行動とします、皆さん、★は持ってきましたか?」


僕達はバッグから★を取り出した。

東京駅で新幹線に乗る前に、先生から手渡されたものだった。


「★は三つまで、御賽銭箱に入れたら、私に続いて唱和してください」


訳が分からないが、皆はそれぞれ★を三つずつ、賽銭箱に投げ入れた。

箱の側面に「電動草刈り機用」と墨書きの紙が貼ってある。


「はい、みなさん、唱和して~!」

ジジイ先生が僕達に背をむけたまま、声を出す。


「★、ポチっとな~!」


【えっ・・・?】

みんな、意味が分からず唖然としている。


「唱和してくだいっ!」

振り向いたジジイの口が大きく裂け、赤い舌がニョロニョロ出て不気味なので、みんな仕方なく従った。


【ほ、★、ポチっとな~・・・】


「甘じょっぱ~い!」

【甘じょっぱ~い!】


もう、ヤケクソである。

赤シャツ等はおどりながら唱和している。


「ほうれん草はクタクタが、ええんやぁ!」

【ほうれん草はクタクタが、ええんやぁ!】


「★、ポチっとな~!まんまんちゃ~!エッウンッ!」

【★、ポチっとな~!まんまんちゃ~!エッウンッ!】


「はい、お疲れ様でした。これから、自由行動となります」

満足そうな笑みを浮かべる「腐れジジイ」先生。


「もし、先生と一緒に行きたい方は、次の「句読点大王」神社へ・・・・」


【もう、ええっちゅうの!】

全員の声が揃い、お後がよろしいようで・・・。


しっつれいしました~!m(_ _)m


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